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リオのわがまま①

 ハナとタロはビャッコのところへ、リオは異動の準備でウォルター街へ出掛けているため、屋敷にはヤヨイとマーサ、アサヒの三人が残っていた。


 マーサが焼き立てのお菓子と紅茶を用意してくれたので、いつものように庭にあるテーブルに運んでもらい、ヤヨイとお茶をすることにした。


 そして、他人事ではないモーソン家のことについてヤヨイに聞いてみることにしたのだ。


「モーソン家のことを教えてほしい?アサヒさん、私の実家をよくご存知ね」


 どうやらヤヨイは養子の話を聞いていないようであった。


(そんなことある?)


「そうね、モーソン家もハウエル家も、古くからある侯爵家ではあるけれども、昔からモーソン家では知力を生かした宰相などに就く人が多いかしら。武力を誇るハウエル家とは真逆の立場ね」

「ヤヨイ様のお兄様は、宰相だったんですか。どんな方なのでしょうか?」

「ロン兄様?そうね…」


 怒られたり、口うるさく注意された記憶しかないが、そんなことをアサヒに言うわけにもいかない。


「真面目ね」

「真面目ですか…」


 アサヒはその次に続く言葉を待った。


「勢いのある人だわ。悪い人ではないわね」


(この場にロン兄様がいたら、なんだそれは、そんなことしか言えないのかと睨まれそうね)


 ヤヨイはう〜ん…とうなりながら次の言葉を探した。


「ふふっ…。仲良しのご兄妹だったんですね」

「えぇ!?なんでそう思ったのかしら。ふつうよ?確かに何でも言い合える仲ではあるかもしれないけれど…。お互いに侯爵家、今でも交流はたえないのよ」

「そうなんですね。現モーソン侯爵はどのような方なのでしょうか?」


 養子に迎えてくれると言う義父になる方だ。


「そうね、ロン兄様にとてもよく似て腹黒…(やだ、いけないわ)優秀な方よ。今は宰相を務めているわ。アサヒさんと同じくらいの息子がいるわね」

「えっ…」


 もしかしなくても、義兄になるかもしれない子だ。


「ねぇアサヒさん、そろそろ教えてくださらない?どうして突然、モーソン家のことが知りたいなんて思ったのかしら?」

「実は、モーソン家が、私を養子に迎えてくれるそうなんです」

「なんですって?」


 やはり、ヤヨイは何も知らなかったようだ。


「リオがすでに話を通してくれていたようで、私も昨日聞きました」


 昨日の夜のことを思い出し、しょぼんとなった。

 ヤヨイは信じられないといった表情で目を見開き、肩を尖らせた。


「リオはそんな大事なことを一人で決めたっていうの?それにロン兄様!私に一言もないなんて、どういうことかしら!?」

「ヤ、ヤヨイ様…?」


 ヤヨイはどうにも気持ちが収まらないといった様子で、ついには椅子から立ち上がった。


「大体どうしてハウエル家ではなくモーソン家なのかしら。二人のずる賢い頭が働いた結果としか思えないわ。それに、当事者であるアサヒさんに事前に一言あるべきでしょう!?どうしてこんな非常識がまかり通ると思うの!アサヒさんは私の大事な友人なのよ!?こんなこと許されないわ!!」


 それはもう爆発寸前、いや、すでに大爆発である。


「ヤ、ヤヨイ様、おおお…落ち着いてください…!!!」


 この世界では、会ったこともない他人も家族になるのが当たり前なのだと、前世の記憶を持つ自分の考えがおかしいのだと自分に言い聞かせていたが、ヤヨイが自分の気持ちを代弁してくれたので、やはりこれはおかしな事であったらしい。


 アサヒの慌てる姿に我を取り戻したヤヨイは、

「そ、そうね、やだわ。取り乱してごめんなさいね。ロン兄様には至急手紙を出すとして…」

 と言って、椅子に腰を下ろした。


 すかさずマーサが淹れたての紅茶を差し出し、ヤヨイはそれを口に含むと、「ふぅ…」と一息ついて心を落ち着かせたようだった。

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