侍女マーサ①
リオが玄関へ行くと、すでにヤヨイとランディが侍女を迎え入れていた。
「マーサ、よく来てくれたわ!長旅ご苦労さま」
「ヤヨイ様、お久しぶりでございます」
落ち着いた口調で話す侍女は深く頭を下げた。
ヤヨイと同い年くらいであろうマーサは、いかにもベテラン侍女のような風貌であった。
服装は黒のロング丈のワンピースに白のエプロンを掛け、髪は後ろで一つにお団子にして纏めあげており、体型は痩せ型で姿勢がよくスラっとしている。
再会を喜ぶヤヨイとは対象的に、マーサの表情はキリッと力強く、すでに仕事モードのようだ。
リオは、マーサに声をかけた。
「マーサ。せっかく本宅での勤務に慣れてきた頃だっただろうに、お祖母様のために戻ってくれてありがとう。疲れただろう、少し休憩するかい?」
「レナード様、休憩は結構でございますので、さっそくですが、お部屋の準備に入らせていただきます。屋敷内の配置は十分覚えておりますので、お任せください」
「そうか、分かった。ランディがお昼頃には帰ってしまうから、先に重いものから指示してもらえるか。何か分からないこと…は、ないと思うが、いつでも声をかけてくれ」
「かしこまりました」
「ランディ、マーサとともにお祖母様の部屋の準備を頼んだぞ」
「おう、任せろ!!」
「では、お祖母様。僕たちは荷物か運び終わるまで応接室へ参りましょうか」
「そうね。では、マーサ、ランディ、頼んだわね」
アサヒが部屋の窓を開けると、心地良い風が入ってきた。
「ハナ、タロ、そろそろ起きて聖獣様のところへ行かなくていいの?」
「うニャーー〜〜。アサちゃん、おはようニャ」
ハナはあくびをしながら思いっきり体を伸ばした。
アサヒは丸見えのハナのお腹を優しく撫でた。
「ニャ〜」
「うぅ…アサちゃん、おはようです」
タロは自分の身体をよっこいしょと起こした。
「ぼくは、今日はおでかけしないです」
「そうなの?おうちにいるの?」
アサヒはタロの脇の下を抱えて床に降ろした。
そういえば、昨日はよっぽど疲れることでもあったのか、ふたりがこの時間までぐっすり寝ているのも珍しい。ましてや、訪問者もいてチャイムも鳴ったというのに。
「昨日もふたりとも擦り傷だらけで、心配したんだよ。最近ケガばっかりして帰ってくるし…。何か危ないことしてないよね?」
ハナはリラックスした姿から一転、素早くジャンプし、タロの横へ降り立った。
「し、してないニャ」
「ぼ、ぼくは強いです!」
(あやしい…)
「まぁ、聖獣様がいるなら大丈夫なんだろうけど」
「ママはもっともっと強いです!」
「ふふ、そうだね。よし、それじゃあマーサさんに挨拶しに行こうか」
「誰だニャ?」
「ヤヨイ様の侍女、マーサさん。今日からここで暮らすから、よろしくお願いしますって言いにいこうね」
「ニャ」
「はい!」




