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【閑話】精霊の森のダンジョン〜ハナとタロ編〜③

 …トスンッ


「やっと追いついたニャ」


 タロに続いてハナも、その場所へ降り立った。

 後ろを見上げると、コウモリがこの空間へ入ることができずバサバサと飛び回っている。明かりが苦手なのか、それ以上は進めないようだ。

 ドーム状の空間の壁面には所々穴が空いており、ハナとタロが出てきたところも、その一つであった。かろうじて一番奥の穴まで確認できたので、おそらく直径100メートル程の空間であろう。


「タロ、怪我はないかニャ?」

「はい、ぼくは…うぅ!?ハナさん、血が出てます」

「ニャ…?大丈夫ニャ。コウモリの群れが噛み付いてきただけニャ」


 タロはハナの痛々しい背中を見て、悲しい気持ちになった。


(ぼくが逃げたから…)


「…草しかないにゃ」

「うぅ…?」

「中央が丘になってるニャ。行ってみるニャ」

「はい!」


 トテトテ…

 トテトテトテ…


 自分の背丈ほどの草に道を遮られながらも、タロはハナの後を必死についていった。

 丘の上まで上がると、そこには木製の宝箱が置いてあった。


「ハナさん、宝箱です!」


 タロは目を輝かせた。


「開けないですか?」

「怪しいニャ…あまりにも怪しいニャ」

「うぅ…?宝箱は怪しいですか?宝箱にはアサちゃんの好きなもの、ないですか?」

「ニャ…」


 ハナは悩んでいた。


「開けないですか?」

「分かったニャ。開けたら中は見ないで一度離れるニャ。分かったニャ?」

「はい!」


 ハナは宝箱の蓋をさっと開けると、すぐに後ろへ下がった。

 しばらく宝箱の様子を見ていたが、何か起きそうな気配はない。


 後ろへ下がったときに、タロが丘を転げ落ちることは想定内だったため、ハナはタロが戻ってくるのをしばらく待った。


 トテトテトテ…

「うぅ、ハナさん、宝箱はどうですか?」

「何ともないニャ、中を見に行くニャ」

「はい!」


 ふたりで宝箱を覗くと、中は空であった。


「何もないです」


 すると、地面が小刻みに揺れだした。


(地震かニャ…?)


 ゴゴゴゴゴゴ…

 しだいに揺れは大きくなり、壁面の穴は突如現れた鉄格子で次々と閉じられていく。


「閉じ込められたニャ…!!」


 状況把握に気を取られているハナのすきを狙い、茂みから何物かが突進してきた。


「ハナさん、危ないです!!」


 タロはハナを突き飛ばした。

 

「なんだニャ…」


 自我を失ったホーンラビットが一匹、フシューッ、フシューッ、と荒い鼻息を立て、こちらを威嚇していた。


「ハナさん、大丈夫ですか?」


 どうやらタロのおかげでホーンラビットの角から逃れられたようだ。


「助かったニャ」


 ハナは草原に隠れる魔物の気配を探った。

 ホーンラビットが一匹、二匹…ざっと数えても20匹ほどがその身を潜めている。


「ハナが妖術をかけるニャ。一気にかけるのに魔物をできるだけ集めるニャ」


 タロからの返事がない。


「タロ、聞いてるニャ?」


 タロを見ると、体をブルブルと震わせ、足は生まれたての子鹿のようにガクガクになっていた。


「だ…大丈夫かニャ?」

「うぅ…うぅ…ぼくは、強いです!」


 タロは、以前ホーンラビットの角に突き刺さった記憶が脳裏をよぎり、恐怖で体を震わせていた。


 フシューッ、フシューッ!!

 興奮しているホーンラビットが足を踏み込み、タロに飛びかかった。

 すかさずハナがホーンラビットを突き飛ばし、フラついたホーンラビットの両眼をその爪で切り付けた。


「ハナさん…ぼく、ぼくは…」


 タロは不安げにハナを見た。


「タロ、大丈夫ニャ。今はひとりじゃないニャ…!!」

「うぅ…」


 タロのすぐ横にはハナが倒したホーンラビットが横たわっていた。


(しっかりするです…!ぼくはママの子。ぼくは強いです!!)


「ぼくも、戦うです…!!」


 タロが力強く答えると、ドスンッ!!と衝撃音が響き、目の前にハナの体が宙を舞った。


(ハ…ハナさん!?)


 ハナは、茂みに隠れていた別のホーンラビットに突撃された。

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