【閑話】ウォルター街からの帰路〜リオ編〜
リオはランディの待つ店先に着くと、ランディの抱えている荷物の量に驚いた。ヤヨイが言っていたアサヒの服とは別に、ヤヨイがこれから屋敷で生活するための物資が、大袋やトランクに入れられていた。
「ランディ…いくらなんでも、その荷物は抱えきれないだろう」
「リオ、まだまだだな。ヤヨイ様が屋敷にいらっしゃると聞いてすぐに、荷馬車は手配したさ」
ランディはヤヨイからの無茶振りに慣れているようで、街で荷物の運搬を頼まれることは、想定の範囲内だったようだ。
「裏通りにパン屋があっただろう?ヤヨイ様は朝食にスコーンを召し上がられるから、いくつか買っていこう。あそこのスコーンはシンプルだし、最近アサヒが作ったグーズベリーのジャムにも合いそうだ」
「ジャムのことなんて、よく知っているな」
「アサヒとは文通仲間だからな」
「なんだって?」
「そうだ、紅茶も買っていこう。ヤヨイ様には新鮮な茶葉を用意しなくてはな」
「おい、なんでランディがアサヒと文通してるんだ?」
ランディはふう。と息をついた。
「アサヒが、ウィンス語の練習に手紙を書いていいかと聞いてきたんだ。そんな可愛いお願いをされたら、断れないだろう?」
リオは不満げにランディを見た。
「手紙だったら、僕でもいいだろう?」
「リオはいっしょに住んでるんだから、手紙を送るには気恥ずかしいんだろう」
(まったく、なんで俺がこんなフォローを…)
「あとでアサヒに聞いてみるさ」
ランディはわざわざ聞く内容か?とは口に出さないことにした。
(アサヒ…すまん…)
「それにしても、スコーンや紅茶…すっかりお祖母様に手懐けられていないか?」
「俺がか?はっはっはっ!そんなわけないだろう!」
(いや、あるだろう…)
その実績や実力から、ヤヨイのことを恐れながらも尊敬の念を抱いている団員は多い。リオの幼馴染であり、幼い頃からヤヨイと接してきたランディであるが、やはりヤヨイは憧れのような、どこか特別な存在らしい。
「お祖母様のペースに巻き込まれないようにしろよ。どうしたって敵わないんだからな。さっきだって、アサヒが冒険者になったというから事情を聞きたかったのに…」
「冒険者…?冒険者と言ったか…?」
「お祖母様は何をお考えなのか…」
「幼い頃から魔術師として活躍されたヤヨイ様のことだ。冒険者とは予想外だが、アサヒのことも、何か考えがあってのことだろう」
「とにかく、屋敷で話を聞こう」
「そうだな。今からだと、屋敷につく頃には日も暮れるだろうから、いつもの客室を借りてもいいか?」
「客室は今お祖母様が使っているから、ランディは僕の部屋を使ってくれ」
「そうか。悪いな」
ランディは「リオはどこで寝るんだ?」と言いかけたが、なんとなくそれも口に出さないでおいた。
(アサヒ…すまん…)




