【閑話】アサヒとの出会い〜リオ編〜
王立騎士学校を飛び級で卒業したレナードが希望した任地は、保護区域の『精霊の森』であった。
この森にはかつての祖母の屋敷もあり、幼いころよく遊びに来ていた。
祖母の友人である聖獣ビャッコの安住の地でもあり、この地を守るのは自分が適任だと思ったからだ。
精霊の森に駐在して半年ほどたったある日の深夜、ドアを叩く音が鳴り響いた。
ドン ドン ドン ドン
「すみません、誰かいますか!」
眠りに入りかけていたリオは、警戒を強めた。
盗賊にしては声が幼い。この時間、この山奥に一体誰が。
護身用の短刀を隠し持ち、そっとドアを開けた。
「何者だ…!!」
ドアを叩く勢いで前のめりになったその者の喉に、ナイフを突きつけた。
(………!?)
リオは視線を奪われた。
少女だ。
この国では珍しい、黒目、黒髪の少女。
その瞳は何か強い意志を宿しているように感じた。
それにこの魔力。10歳にも満たないであろう彼女を、緑がかったモヤのような淡い光が覆っている。一体どれほどの魔力があれば、このような状態になるというのだろう。
「はぁ…はぁ…」
呼吸が乱れている。どこからか逃げてきたのだろうか。
よく見ると、布に包まれた何かを大事そうに抱えている。
「お願いします、この子を助けてください!」
布の中には、息も絶え絶えの見たこともない魔獣がいた。
ゴクン…。
リオは生唾を飲んだ。
柄にもなく、緊張している。
どう考えたって、ふつうでない状況だ。
(助けてもいいのか…魔獣だぞ?!
しかし……)
「きみ、回復魔法は使えるか」
祖母とビャッコ様の地に突如現れた、得体の知れない少女と魔獣。
(結界を破ったということは、この子は精霊に迎えられたのかもしれない。そうでなかったとしても…)
リオは、内心戸惑いながらも、この子たちの助けになると決めた。




