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聖獣②

 私は駆け足で湖をめざした。

 途中途中にリオが木の幹に印を彫っていたため、中間地点まで何事もなく来れた。


 不気味な静けさだ。


 狩りに行くときはいつも早朝から昼までには出発していたので、鳥のさえずりや小動物の活動する音が聞こえてきたが、今は物音一つ聞こえない。


 ガサガサ…

 茂みから音がした。


「何かいるニャ」


 私とハナは足を止めた。

 緊張が走る。


 ガサガサ…

 ひょこっ


 現れたのは、額に一本の角があるうさぎ。

 リオが以前『ホーンラビット』という魔物だと教えてくれた。


 私とハナは身構えたが、ホーンラビットはこちらには見向きもせず、逃げるように目の前を横切って行った。


 ホッとしたのも束の間、ガサガサガサ…と茂みが大きく揺れてすぐに、何者かが影を落とした。


「グウオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

 ゴ、ゴリラ!?ふつうのゴリラじゃない、下の歯が口の外まで突き出している。


「アサちゃん、危ニャイ!」

 ゴリラに似た黒く大きな魔物の腕が、私めがけて降りかかる。


 私は転げるように必死によけた。

 すかさずハナが私と魔物の間に入り、両目をギンッと光らせた。

 すると、魔物は視線を泳がせ、平衡感覚を失ったかのようにふらつきだした。


「アサちゃん、ハナの妖術で魔物は幻覚を見てるニャ。今のうちに逃げるニャ!」

「わ、分かった!」

 足はガクガクと震えているが、とにかく必死に走った。

 途中で道を見失いかけたが、ラタトスクが湖はこっちだと言わんばかりに、木の枝から枝へとつたい先導した。


(もうすぐ湖だ!魔物は…追ってきてない!)


「つ…着いた…

 はぁ…はぁ…」

 呼吸がなかなか整わない。


(よかった。なんとか魔物を撒けた…)


 と思った束の間、

「グウオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

 と、追いついた魔物が再び襲い掛かってきた。


「アサちゃん!」

 すぐに間に入ったハナが、魔物の大きな手に勢いよく吹き飛ばされた。


「ハナ!!!!!」

 ハナは数メートル離れた地面に打ち付けられ、気を失った。


「ハナ、ハナ…!」

 四つん這いになりながらも急いでハナのもとへ駆け寄り、座り込んだままハナを抱き上げた。


(魔物を倒して、ハナを助けなきゃ…!

 何か魔法を…魔法…攻撃魔法なんて、練習してない…!!)


 魔物はドスドスドスッと勢いよく向かってきている。


(もうダメだ…!)

 私はハナをギュッと抱きしめ、目をつむった。


「グオ、グオオオ!!!」


 ドスン、ドスンドスンッ………


(…………………?)


 私は恐る恐る目を開けた。

 目の前には魔物がひっくり返っている。


「何が起こったの…」


 視界を広げると私の真横に何かがいる気配がした。

 私はゆっくりと視線を上げた。


 全長4メートルはあるであろうホワイトタイガーが、唸り声をあげて立っていた。

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