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白いエプロンと
霧がうっすらと広がる舗道、ずっと遠くは見えない。霧に混ざるような真っ白い蒸気が、舗道の脇、使用人たちが働く『階段の下』から吐き出されてくる。
馬車を降りた私は、足を止める。立派な玄関に気おされ、ためらいを覚えていた。私がこの家を訪問するのは迷惑ではないのか、場違いではないのか。あの方から迷惑に、思われるのではないか。
少し迷って、私は家の周りを、歩き始める。
地下へ通じる階段のひとつに、私がふと目をやると、地下のドアを開けて、ひとりの若いメイドが姿を見せた。彼女はドアを閉めるとすぐに、エプロンで顔を覆って、泣き始めた。
その声は車道を通り過ぎる馬車の音にかき消されて。
すぐに彼女は気持ちを落ち着け、屋敷の中へ戻っていった。
それはほんの短い、出来事。
玄関のベルを鳴らすと、さっきの彼女が姿を見せる。
少し赤い瞳で、彼女は完璧な礼儀を保ち、まるで別の生き物であるかのように、私にとっての門番としての役割を果たした。




