第四話 砦
いつもお読みいただき、ありがとうございます。今後は一回ごとの投稿の文量を増やしていくつもりです。
「ジュリオ❗️どうだ?」
すっかり日が沈んだ森の中で、僕と第一連隊は問題の地点に到着した。ジュリオは森の切れ目から、木製の砦のような村を睨んでいた。
村は2メートルほどの土塁の上に2メートルほどの木でできた塀が建てられ、要所要所には櫓が立っているもので、見た目はあまり大きくなかった。
村の周り140メートルほどは木が切られて、草むらになっている。木の影から覗くと、砦には赤々と松明がかざされていて、女の集団がいったりきたりをしている。
もしあそこで何年も暮らすのであれば100人が限度であるだろう。それぐらいの広さだ。
「つ、危ないであります」
森の切れ目から顔を出した僕をアミルカレが慌てて引き戻した。すると一拍遅れて僕の頭のあった部分にクロスボウの矢が飛んできた。
「あぶなっ」
クロスボウの矢は目の前を横切って、木の幹に深々と突き刺さる。矢は全長30センチほどの長さがあったが、そのうち20センチほどがめり込んでいた。
「正直、村に近づけませんぜ、あの威力じゃあ重装騎兵の鎧も簡単に射抜くしよ?それにしてもなんで弓じゃなくてクロスボウなんだろうな?狩には弓のほうが向いてるし、防衛には弓だけでも十分事足りるしよ。わっかんないなあ。」
「クロスボウは軽い力で矢を装填できるが、時間がかかる。もし防衛に使いたいのであれば、3人1組での運用を志すべきだ。」
「しかしあの砦はどう見ても100人ほどしか暮らせないであります。子供や老人にクロスボウを引かせても60人確保が限度であります」
「うーん。じゃあもし仮にあそこが村じゃないとしたら?」
「村じゃねえだと?すると兵が駐屯する砦ってだけか?」
ジュリオが唸った
「でもよ、住んでもいねえところにこんな立派なモン作るかなあ?1日二日でできるモンじゃねえぞこれ」
「考えられる可能性は二つだ、一つはここに住んでいて、狩りをして生計を建てている。農業はやってないな。村らしきものの周辺は耕した痕跡がない。だがそれならばなぜ弓ではなくクロスボウを使うかわからない。
狩にクロスボウはあまり向いていない。連射が難しいからね。威力も大きすぎて獲物がすぐダメになってしまう。どちらかと言えば戦争用に使われるものだ。狩では弓、防衛はクロスボウではあまりにも効率が悪い
もう一つの可能性はどこかの村か街から兵士が派遣され、この砦に籠っているという可能性だ。だったら弓ではなくクロスボウを使う理由もわかる。周りを耕しいていないのも。
僕は後者だと考えている。」
「するとタンクレディ様はこの砦の他にも敵は沢山いると考えられているのでありますか」
「そうだね、この村を砦だと考えてみよう。外から食料を運びこむとするとこの砦には何人ぐらいが入れるかな?」
「どんなに詰めても300が限度だろうなあ。でもそうすると食料を置く場所がなくなるからせいぜい200かな?まあ200人全員がクロスボウを構えてくるのはゾッとするがな。」
「よし、アミルカレ、これから風と木魔法の中隊、そして工兵連隊を連れてくる。それからあの砦を落とすぞ。」
僕が記憶を取り戻す前に作り上げた軍団兵は一個連隊ごとに3個歩兵中隊に一個弓兵中隊、一個魔法中隊で構成されており、たいていの魔法中隊は得意な属性ごとにまとめられている。つまり火属性魔法中隊には火属性、水属性魔法中隊には水属性の魔法師が集められている。
全種類をバラバラにしたほうが、今回のような局地戦には強いが、属性別にまとめたほうが、一斉に同じ魔法を放つことで、瞬間火力を高めることができる。
「お言葉ではありますが、砦の攻略は諦めたほうが得策であります。タンクレディ様の予想が正しければ、あの砦に兵力を送り込んだ集団がいるはずであります。砦の異変に気がついて、後詰めを送ってくる可能性もあります。」
「うん、だから今夜中に落とすよ。援軍が来ないうちに。土魔法で穴を掘って中に直接侵入する」
すると近くの草むらから、まって、という声がした。
■
「誰だっ」
ジュリオが慌てて剣を抜いた。ジュリオはこう見えてランクAの冒険者である。
「違います、敵じゃありません」
近くの草むらからから、全身草で覆われたような格好をした少女が立ち上がった。まるでスナイパーギリーを着ているみたいだ。
「気づかんかった…」
ジュリオがショックを受けたような顔をした。ジュリオはこう見えてランクAの冒険者である。ランクAのプライドもあるのだろう
少女は困っていることがあるから助けてほしいといって話しかけてきた。
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