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  作者: 種子島 蒼海
第一章入学編
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第5話 神樹 紅葉 2

 放課後になり、楓はクラスメイト達からの質問攻めから開放され、部活のために総合武術部の武道場に来ていた。


「はっはっは!それは災難だったな」


 楓から今朝の事を聞いた新藤は笑う。


「笑い事じゃないですよ、最終的には他のクラスの奴らまで来て、……本当に大変だったんですから」


 笑う新藤に楓が文句を言うと、二人の話を横で聞いていた紅葉が話に加わる。


「大変だったのは私だよ!楓が途中で皆から逃げたせいでその後の対応全部私がしたんだから」


「それはごめん}


 楓から他生徒への対応を丸投げされた紅葉が恨めしそうに愚痴をこぼし、楓は気まずそうに紅葉に謝った。

 

「まあ、別にもういいけどね……、さあ部活開始!開始!」


 楓が紅葉に対して珍しく謝罪したことにより、気まずい空気になりかけたところで、その空気を払拭しようと紅葉が部活動の開始を宣言した。


「部活開始の前に一ついいか?」


 部活動開始への流れを断ち切るような形になり、申し訳なさそうに新藤が2人に質問する。


「「どうぞ」」


「俺は部活の時はこのとおり道着を着ているんだが……、お前達はその恰好でいいのか?」


 武道の訓練を行う際には、その競技ごとの道着を着用するのが常であるが、神樹姉弟はそれぞれ私物のスポーツウェアを着用しており、新藤はそのことが気にかかったようだった。

 新藤の質問の意図を察した紅葉が答える。


「ダイジョーブですよ!神木流は実践を想定した流派なので訓練中は特に衣類の指定はないです。一応道着もありますけど……、着替えましょうか?」


「いや、総合武術部(うち)も特に衣類の指定はないからそのままでいいぞ、俺の道着は習慣みたいなものだしな。それじゃあ準備運動から開始しようか!」


「「はい!」」


~~準備運動終了後~~


「さて、次の訓練と行きたいところだが……、何分俺一人で活動していた時期が長くてな、なにか良い訓練メニューとかはないか?」

 

 新藤が楓達に訓練メニューについて相談する。

 楓は「う~ん。」と考えた後に、新藤に提案する。


「一応新藤先輩にも合いそうなメニューは考えてありますけど……、新藤先輩の正確な実力が知りたいので一つ手合わせしませんか?」


 通常、後輩から先輩へこのような物言いをすれば折檻ものではあるのだが、新藤は、そのお人好しの性格と、昨日の一件で楓が自身より強者であることを認めていたため、楓の提案に「別にいいぞ」と素直に応じた。

 

「ルールは目突き、金的、武器の使用はなしで、終了は俺が止めるまで、それでは……、開始!」

 

 開始の合図と共に二人は構える。

 先に動いたのは新藤で、楓に次々と鋭い連撃を放ち、楓はその攻撃を回避や防御を駆使しながら受け続け、新藤の攻撃の品定めをする。


 (攻撃は……よし、次は……)


 楓は防御の手を緩め、新藤の攻撃が自身の脇腹に来るようにあえて隙を作る。

 狙い通り新藤は、隙が出来た脇腹めがけて渾身の拳撃を放った。

 ゴっ!、と鈍い音がするが、攻撃したはずの新藤が動揺した様子で大きな隙を作ってしまう。

 その隙を突くように楓はわざと、しかし、新藤の防御が間に合わないように拳撃を放った。


 (間に合わない……、しかし!)


 新藤は防御が間に合わないことを悟り、攻撃を受ける覚悟を決めて攻撃の当たる個所を見定め、そこに力を込める。

 ゴっ!再度鈍い音が響き渡ると同時に、新藤は顔を歪め、楓との距離を取る。

 

 (やっぱりだ、この人……。)


 楓は予想外の収穫に笑みがこぼれそうになるも、それをグっと堪えて構を解いた。


「もういいでしょう。」


 楓の手合わせ終了の宣言を受け、新藤も構を解く。

 

「もう終わりでいいのか?俺はまだ続けられるぞ。」


「はい、新藤先輩の実力は分かりました。……ところで新藤先輩、「氣」って知ってますか?」


「「氣」ってあの中国拳法とかのやつか?」


「はい、厳密に言えば少し違うのかもしれませんが、体の中を巡っている見えない力のことです。さっき先輩は俺の脇腹殴りましたよね?」


「ああ、綺麗に入ったと思ったら、鉄の壁を殴ったような感触がしたから驚いたぞ」


「普通、鉄の壁を思いっきり殴ったら驚いたでは済まないんですけどね。」

 

 呆れたように楓が言うと、新藤はきょとんとした様子で「そうなのか?」と言いながら自分の拳を見つめる。


(この人、妙なとこズレてるなぁ……、まぁ……だからこそか)


 新藤の常人とはズレた発言に納得しつつ楓は続ける。


「俺が先輩に殴られた時に使った技……神木流では「鉄身(てっしん)」っていうんですけど、その時に使ったのが「氣」です。ちなみにですけど先輩も無意識ではありますが「氣」を使用しています。」

 自身が無意識ではあるが氣を使っていると聞き、新藤は驚く、新藤にとって氣というのはファンタジーの中だけでの存在で、憧れはあったものの自分が使用できるとは思ってもいなかったからだ。


「本当か!?」


「はい、そういませんよ先輩みたいに独力で「氣」を発現できる人……、で、これからの訓練についてなんですけど先輩には「氣」ついて学んでもらいます。「氣」のことを理解し、感じ取り、実践できれば今よりも確実に強くなります。」


 楓の「確実に強くなる」という言葉に新藤は嬉しく思ったが、一つ気になることができた。


「わかった。しかし俺に合わせた訓練で本当に良いのか?それでお前達の訓練になるのか?」


 新藤のいつものお人好し発言、これに楓は呆れつつも好感を覚える。


(まったく、本当にお人好しだな)


「大丈夫ですよ、今からする訓練は俺たちが普段している訓練と全く同じものですから、ですから先輩は気兼ねなく訓練に集中してください」


「わかった、それじゃあ訓練開始と……」


 新藤が本格的な訓練の開始を宣言しようしたところで、武道場の入り口が開かれる。

 偶然、武道場の入り口が見える方向にいた新藤が、入り口にいる人物を見て驚きの声を上げる。

 

「ジン・テラヴァルカ……」

  

 そこには金髪で長身の男子生徒がいた。

 


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