表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 種子島 蒼海
第一章入学編
4/17

第4話 神樹 紅葉 1

 神樹姉弟の総合武術部入部が決まった翌日、神樹姉弟が登校すると校内の掲示板に人だかりができていた。

 この校内掲示版には、通常学校新聞や、学校から生徒への連絡事項や行事予定等が貼られているが、通常このよう様に人だかりができるほど人が集まることはない。

 ではなぜこのように多くの生徒が集まっているのか、その理由はこの掲示板のもう一つの役割にある。

 その役割というのは、校内順位の変動があった際にその結果を掲示するというものだ。

 校内順位は、学園内における発言力にそのまま適用される。

 そのため、どの生徒も校内順位については常に注目しているのだ。

 しかし、入学したばかりの神樹姉弟はあまり校内順位には頓着しておらず、自分達には関係ないと思いっている。


「おーい!!楓!紅葉ちゃん!」


 神樹姉弟が掲示板の前を素通りしようとしたところで、聞き覚えのある声で呼び止められる。

 二人が声のする方を見ると、クラスメイトである種子島弾が興奮した様子で手を振り、二人を呼び止めていた。


「なんだよ。」


 朝の弱い楓は、未だに眠そうな顔をし、面倒くさそうに答える。


「いいから掲示板!!見てみろよ!!」


「俺らには関係ないだろ・・・」


 興奮して迫るように掲示板を見るよう促してくる級友に、楓は辟易としながらも、掲示板を見る。

 しかし、掲示板に掲示されている内容を診て楓は目を見開く。

 掲示板にはこう記されていた。「以下の者の学園順位に変動があったため報告する。1年A組 神樹楓 90位、2年B組 最武良己 350位、これ以下の順位の者達については、順位を1位ずつ繰り下げるものとする。以上、すべての生徒が天賦の器たらんことを」

 掲示板に記されていることが信じられず楓は呟く 


「なんだよこれ・・・」


「すげえなお前、入学から1週間で学園順位入り、しかも全校生徒855人中の90位!ランカーじゃねえか、一体何したんだ」


「いったい何したもなにも、心当たりすらねぇ……。」


楓は入学してからのことを振り返る。 


(いや……、あった。) 


 昨日の不良達による総合武術部襲撃、その際に楓が一撃で倒した男、不良達のリーダー格の男が自分は学園順位90位などと言っていたことを思い出したのだ。


「あれ・・本当だったんだ」


 楓の言葉に、弾は興味深々といった様子で反応する。


「心当たりあるんじゃねえか、なぁ~なにがあったんだよ~、教えろよ~」


(昨日あったことを一から説明するのは面倒くさい)


 そう思った楓はごまかすことにする。


「だけどおかしくないか、新入生は入学から1か月経つまで順位は出されないはずだし、それに相手の順位も230位って、俺は元々順位なしだぞ」


楓の疑問を聞き、弾は「確かに」と考え込む、


「それもそうだな」


 楓はどうやらごまかせたようだ。楓がホッと胸を撫で下ろしていると、後ろから


「それについては、私が説明しましょう」


 と女性の声が聞こえる。楓達が声のする方を向くと、そこには一人の女子生徒が立っていた。


「あっ!(うつし)ちゃんだ!おはよー」


 女子生徒に気づいた紅葉が、手を挙げて元気に挨拶をする。


「おはようございます。」 


 紅葉と挨拶を交わした女子生徒は、楓達のクラスメイトで自称情報通の大亀おおがめ うつし、情報通を自称するだけあり、入学して間もないというのに全校生徒や教員、校則等様々な情報に精通している。


「コホン、で、楓君の疑問についてなんですけど、確かに新入生は入学から1か月経つまで学園順位は原則発表されません。しかし、順位が100位以上のランカーとなれば話は別で、たとえ入学から1か月経っていない新入生であっても、100位以内に入ると認められれば校内順位の対象になるそうです。ちなみに過去にも数回同様の事例があるそうですよ。」


「へ~そうなんだ、それじゃあ楓のもう一つの疑問は?」


 弾が写に更に問う


「これも過去の事例からなんですけど、ランカーがまだ学内順位のない新入生に負けた場合は、一つ前の順位に戻るみたいです。なのでこの最武先輩は90位に入る前は350位だったみたいですね。」


「元が350位って・・・350位の人間が急に90位に入れるものなのか?」


「学園順位は、基本風紀委員会が管理していて、そう簡単に順位が変動することはないんですけど、特例で卒業時に卒業生から在校生に順位を引き継ぐことができるみたいなんです。なので最武先輩も卒業生から順位を引き継いだんだと思います。」


「……受け継いだ順位なのにあんなにイキってたのか」


 楓が呆れのあまりぼそりと呟き、自らの失言にしまったと気付く、

 楓の失言は弾と写にはしっかり聞こえており、二人はここぞとばかり楓に詰め寄った


「「やっぱりなにかあったんですね(だな)、その辺詳しく教えてください(くれよ)」」


「あーそれはだなー」


 どうやってこの面倒くさい状況を回避しようか、楓は考えを巡らせた結果……、


「じゃ」


と言い残し全力で走り出す。どうやら物理的に逃げ出せばこの状況を回避できると思ったようだ。


「「あっ逃げた!」」


 すぐに弾と写も楓を追うが、本気で逃げ出した楓に追いつくことはできず、見失ってしまう。

 弾と写を撒いた後、楓は教室で一息つこうとした……が、教室に入ったとたんに


「楓君!掲示板みたよ」


「話を聞かせてよ!」


と他のクラスメイトからの質問攻めに遭い、結局昨日のことを説明する羽目になってしまった。




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ