は?落単?
ノリで書いちゃった系小説ですが、ゆる~くお付き合い頂ければ幸いでござんす。
大学生活が始まって3度目の夏。長期休暇に差し掛かり、アルバイトに遊びに飲み会に精を出し、近代的かつ模範的な大学生像を余すことなく体現していた。追試や集中講義、実習などとは無縁な俺にとって、天国のような期間だが、そんな中にも忘れてはいけない大事なイベントがいくつかある。その1つが、成績開示である。だらけきった者には地獄であり、その真逆の者にすれば、己の努力の証左を確認できる貴重な機会となりうるのが、この開示である。現在では概ねの大学において、ネット上での通達が普通になっており、わざわざ大学などに赴かなくても、自宅で確認ができる。かくいう俺も、自分の成績を確認するために、ベッドに横たわりながらノートパソコンを開いている。自慢ではないが、俺はどんなことも卒なくこなすタイプで、これまで落とした単位も1つしかないほど、優秀な学生なのだ。だからこれから見る成績について、特にこれといった感慨もなければ絶望もない。ただただ作業のように、大学のサイトにアクセスし、自分の成績を確認するページを開く。大学の成績は、評価の高い順に、秀、優、良、可と続く。そして単位が認められない場合、つまり落第の場合は”不可“とされる。俺の成績は、秀、良、秀、秀、優、良、優…ふむ、今期はいつもより良いかもしれない。と思った次の瞬間、最下段の列に見慣れない二文字があった。
「なんで俺が落単なんですか!」
俺は勢いあまって強い語気で言い放ってしまった。すると教授は
「はぁ…なんでって君、成績が良くないからに決まっとるじゃないか。」
と、面倒くさそうに淡々と答えた。
「でも僕はレポートをきちんと提出していますし、テストも入念に準備をして臨みました。これで単位すらもらえないというのは、おかしいのではないでしょうか。」
簡単に食い下がる気はなかった。そんな俺を見て教授は、書類の束の中をごそごそと探り出し、やがて1枚の再生紙を取り出した。
「君、名前は?」
「梶村です。」
「梶村、梶村…」
教授は手元の紙を上から眺め始めた。少しして、教授は咳払いを入れてから言った。
「あー、梶村君、大事な中間レポートの提出がないみたいだね。私の授業じゃこのレポートがないことには単位はあげられないよ。」
「僕は確かにすべてのレポートを提出したはずです。何かの間違いではないですか?」
「そうは言ってもねぇ、私も素人じゃないから、レポートのチェックに余念はないよ。ゼミの子たちにも協力してもらって、何重にも確認するもの。もし確認漏れがあったら、大ごとだからね。一応、もう一度確認してみるけど、期待はしないほうがいいと思うよ。」
「そうですか…」
力なく答えた。提出したはずのレポートがないという事実が頭の中をぐるぐると巡っている。教授をやりこめるまで帰らないつもりだったが、予想外の事態になり、すっかり意気消沈してしまった。教授に挨拶をしてから大学を後にし、真上からの強い日差しと、セミたちの熱いシャウトを浴びながら、とぼとぼと帰路についた。