第821話 チームシア④究極兵器バスク戦(2)
ドゴラとシアは一連の攻撃で、バスクへ攻撃した様子から、神界で戦った時との強さの違いを知る。
ドゴラは斧神から神技などを貰っているし、シアは獣神ギランからも新たに加護を貰った。
ロザリナからのスキルレベルの上がったバフスキルも掛けて貰った上に、2人は斧神術や拳神術を獲得し、明らかにステータス以上に威力が増している。
バスクへのダメージの通りが神界で戦った時よりも悪いようで、明らかに見た目のグロテスク以上に強化されているようだ。
10人以上に囲まれている状況で余裕なのも頷ける。
『おいおい、戦意喪失かよ。もう攻撃してこないのか? こっちから行くぜ!! 真紅蓮斬!!』
距離を取ったドゴラたちの硬直状態を何秒もなかったのだが、バスクは許さなかった。
「な!? 避けろ!!」
バスクの左腕ごと大剣が炎に包まれるとおもむろに投擲した。
『嵐獣化!! ぬぐ!?』
『わ!? わわわ!!』
ぎりぎり覚醒スキル「嵐獣化」が間に合ったルバンカが投擲された大剣に狙う先に向かい、狙われた者の盾になろうとする。
実態のない嵐状態になったルバンカの体に深々と突き刺さるが、体を貫通させている間に威力を減退させ、背後にいる聖獣帝フイが転がるようにその場から逃げることができた。
十英獣の皆が獣神化したシアの影響で獣帝化状態になっているため、後衛であっても機動力が向上している。
回復役の聖獣帝フイのいた場所に深々と炎に包まれたバスクの大剣が突き刺さる。
「くそ、俺らを狙うと思って、回復役を優先するとか相変わらずだぜ」
ドゴラが毒づく。
自らがかつて邪神教の教祖グシャラたちとの戦いで、キールを狙われ庇うために殺されたバスクのスキル「真紅蓮斬」は相変わらずの威力のようだ。
『プルップー!!』
ペクタンの特技「回復茸」とフイの回復魔法で一気に削られたルバンカの体力を回復させる。
『そんなに簡単に終わらせられないか。ほれ、戻ってこい』
『ギイイイ!!』
大剣を飛ばした際、ただただバスクの左腕が100メートルを超え、異常に伸びていた。
肩から左腕にかけて張り付いたギイと一体になっている、自在に伸縮できるようだ。
ヘルミオスの倍ほど生きているバスクは、魔王軍に入り魔神になる前からの激しい戦いに身を置いてきた。
多数との戦いでは回復役を倒したり、司令塔を狙ったりなどの基本は抑えている。
シアの試練の最後に嵐獣化したルバンカと戦ったことのある十英獣が、大ダメージを受ける様を見て、一瞬絶句して硬直してしまった。
『けっ! 何呆けてやがんだよ!! 天武双覇!!』
「ぐは!!」
『ドゴ……!? 躱せぬ!! ぐあああ!!』
バスクが今度は魔剣オヌバを床石に深々と突き立てた。
魔力を魔剣に注ぎ込み、ドゴラやシアたちに向かって大きく振り上げた。
地面の床石は一瞬で溶解し、前方の広範囲に津波のように襲い掛かる。
最前列にいたドゴラは一瞬で飲み込まれ、素早さを活かして上空へと跳躍したシアのいる位置まで攻撃範囲が達する。
前方中央にいた槌が武器のホバは大ダメージを受けて、剣だけでなく神聖オルハルコンの大盾を持つハチは爆撃を防ぎつつ、ホバと一緒に後方へと吹き飛ばされる。
両サイドに展開していたパズとセヌはさらに左右に逃げたが間に合わず、超高熱の爆風と衝撃波に飲み込まれる。
ゲンたち中衛やフイたち後衛は、ルバンカが自らの体の中に入れて一気に後退したが、あまりの速度と範囲のため、ダメージは免れられない。
『うほ、これでも誰もやられていないじゃねえか。楽しめそうだな! いひひ!!』
なんとか致命傷を避けたシアたちは、フイやペクタンの回復してもらい、吹き飛ばされた先で立ち上がる。
「なに好き勝手やってんだ! 滅却烈斬!!」
ドゴラがバスクに対して、正面から突っ込んでいく。
『け、そんなスキル!!』
迎え撃たんと両手の斧を構える一瞬の意識から外れる様子を捉えたシアは、一気に加速してバスクの背後へと回り込む。
「おらぁ!!」
『軽いぜ!!』
2人の刃がぶつかり合い衝撃波が発生する中、シアは抜群のタイミングで飛び上がり、バスクの背中から心臓目掛けて拳を振るう。
『ぐる!! 獅子連撃!!』
両手のナックルが空気を切り裂き、炎をまとうが、そのまま無数の連撃を肩に浴びせる。
だが、今回は先ほどの攻撃と違い、甲高い音が背中から響く。
キンキンキン
『おいおい、俺だけに守備を任せるなよ! 岩山硬壁!!』
右腕と一体になった魔剣オヌバが魔力を生成すると、15メートルにもなる巨躯のバスクの背後の広い範囲を一瞬で強固な岩盤で覆って、シアの攻撃を防ぐ。
数発の拳が岩盤を破壊できたが、そこまででバスク本体を攻撃するには至らない。
『あん、お前は守備専門だろうが。攻撃は俺に任せろよ。って、おいおい』
『な!? オリハルコンの矢先だぞ!!』
ザシュ
キン
攻撃を仕掛けたのはドゴラとシアだけではなかった。
2人に意識を向ける中、ゲンが弓を引き、バスクの両目を目掛けて矢を放った。
神聖オリハルコンの矢じりでの攻撃であったのだが、固い目玉に突き立てることは出来ず、勢いを失って、当たったその場に2本の矢は落下する。
『今度は私が攻撃しよう。凍てつくがよい!!』
魔獣帝ラトは足元に魔法陣を生じさせ、練られた魔力を使い、氷の刃を飛ばす。
『我らも加勢するぞ!!』
ホバが号令を上げ、他の十英獣たちも獲物を狙う獣のような表情でバスクに向かって来ようとした。
『ったく、うざい連中だぜ。いつまでもまとわりついてやがる!! 爆滅破界剣!!』
『ぐは!?』
両手の剣を左右に水平に向けたバスクは一気に回転し始める。
上空に巻き上がる巨大な竜巻となり、近くにあるものは何であれ、無数の刃で粉みじんにする。
最も近くにいたドゴラとシアが攻撃に巻き込まれ、全身に切りつけられながら吹き飛ばされていく。
バスクは1体で多数との戦いに有利なスキルを多く持っており、気を抜くと全滅しかねない。
『シア様!?』
『大事ない! 体勢を速やかに立て直せ!!』
シアは吹き飛ばされた先で体勢を立て直し、神技「神獣化」のよる超回復の効果で体力がメキメキと回復させ、全身を血まみれに引き裂かれたが体を癒す。
ドゴラはフイたちのおかげで体力を回復してもらい、前衛の陣形に戻った。
「や、やろう」
『おうおう、やるじゃねえか。いひひ。ギイよ、体を癒せ!!』
『ギイイイイ!!』
『よしよし、体力管理は大事だよな』
「か、回復までできんのかよ……」
『ああ、そのようだな』
「それで、まともに食らったみたいだが無事か? シア」
『問題ない。一度に広範囲の高威力の攻撃、全身を瞬時に防御し、自らを回復、防御も自動ときたもんだ。それぞれ別人格とあれば、限りなく全てが同時に出来ると思って良かろう』
獣神化したシアが陣形の最前列にいるドゴラの下へ回り込む。
「……じゃあ、あまり前衛は広がらねえほうがいいな。ってことは」
『まずは敵の防壁を破壊せねばならん。長期戦になるぞ』
「まじかよ。こいつ相手に長期戦だと……」
『いひひ、何、いちゃついてやがる! そろそろ本気出していくぜ! 狂化!!』
メキメキ
「おいおい、もうこれを使うのか」
バスクのスキル「狂化」を見るのもこれで4度目だ。
全ステータスが3割近く増大するバフスキルで、体つきも表情もさらに凶悪になってしまった。
『そういうことだ! くるぞ!!』
天高く飛び上がったバスクが前衛から後衛まで100メートル以上広がった陣形の中央に落ちてくるように飛び上がり、魔力を両手の大剣を込め始める。
ついさっき使った技の姿勢にドゴラは驚愕する。
『爆滅破界剣! 砕け散りやがれ!!』
全身を回転させ、先ほどの大技を再度繰り出そうとした。
「くっ!! 間に合え!! 奥義無骨!!」
ドゴラの体が立っていた位置から残像を残し、バスクに一瞬で距離を詰めた。
胸から肩に抜けるよう大斧がバスクの肉体を切り裂いていく。
斧神バッカライからこの10日間の間に獲得した奥義で発動時間の速さの耐久力無効の攻撃が特徴だ。
英雄を夢みたドゴラは果てしない修行の成果、人間界にいる誰よりも優れた斧使いとなった。
【ドゴラのスキル・神技・奥義・秘奥義の簡易説明一覧】
・爆炎撃:単体攻撃。1回攻撃。火属性。火傷状態異常追加。大振りの一撃。クールタイム1日
・極神斬滅激:斧神から伝授。単体攻撃。2回攻撃。対象の体力回復速度を遅らせる。次の攻撃スキルの発動が早くなる。クールタイム1時間
・奥義無鉄:斧神から伝授。単体攻撃。1回攻撃。下から振り上げる一撃。相手耐久力、耐性を無効。次の攻撃スキルの発動が早くなる。クールタイム1時間
・秘奥義魔壊:斧神から伝授。単体攻撃。32回攻撃。対象の体力、霊力、魔力を破壊する無数の斬撃。奥義からの連携でしか発動しない。クールタイム1日
・真渾身:単体攻撃。1回攻撃。大振りの一撃
・真爆炎破:複数攻撃。1回攻撃。火属性。前方へ向けた火属性の大振りの一振り
・真火山憤激:複数攻撃。1回攻撃。火と土属性。叩きつけた場所を中心に大爆発
・真砲煙弾双:単体攻撃。2回攻撃。攻撃と同時に対象に煙による目くらまし
・全身全霊:単体攻撃。火属性。全魔力を込めた大振りの一撃
・戦破陣:
仲間のスキルをスキルレベル割合分減少
使い手のクリティカルをスキルレベル割合上昇
・修羅双連撃:
単体4回攻撃。物理攻撃ダメージが発動ごとに1パーセント上昇
・滅却烈斬:単体攻撃。4回攻撃。氷属性。対象の体を凍らせる
・破衝連斧:複数攻撃。8回攻撃。無数の斬撃を浴びせ、対象を吹き飛ばす
・真獄炎:自らのステータスを増加
・斧術:斧の扱いが向上
・斧神術:斧の扱いが飛躍的に向上
・瞑想:スキル、神技、奥義、秘奥義の効果が向上
・神技発動:神技発動可能にする。効果は1時間。クールタイム1日
『がは!? くそが! やるじゃねえか!!』
発動しようとするスキルをキャンセルされた怒りで今度は大剣を振り上げた。
今度も大技を使おうとしているようだ。
『はあ! させるか! 破衝連斧!!』
他の攻撃スキルへの連携が各段に早いドゴラのスキルの2連激目がバスクよりも早く発動する。
『ぐほは!?』
ドゴラのスキルによる衝撃波によって背後へと後退するバスクであった。
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