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【アニメ化】ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~【2026年1月放送】  作者: ハム男
第13章 魔王城の攻略と攫われた天使

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第794話 攻略準備10日目:変わらない朝

 今日は第一天使ルプトを忘れ去られた大陸にある魔王城から救出する日だ。

 そして、今日は10月1日、アレンは17歳になった。

 朝の7時前、鳥Hの召喚獣がロダン村の客室で時計の魔導具を見つめている。


 カチッ


『コケッ! コケコッコオオオオオオ!!』


 朝7時と同時に雄鶏の姿をした鳥Hの召喚獣が翼を大きくはためかせ、天に向けて嘴を掲げ、大きな声で鳴いた。


「あば!?」


 自らの部屋がないため客室で眠っていたアレンが簀の子の敷かれた布団から飛び起きた。


『コケコケ』


「おお、コッコ。ありがとう。そして17歳の俺、初めまして」


(雄鶏だから鳴く。だけど、なぜか卵を産むけど。この辺りは俺の抽出した記憶を正確に抽出できなかったのだろうか)


 召喚獣のデザインにアレンの前世の記憶を参考にしているとメルスから聞いたことがある。

 布団の端で翼を掲げたまま、自慢げによってくる鳥Hの召喚獣の頭をワシワシした後、廊下に出ると、ロダンと目が合った。


「な、なんかすごい音がしたな」


「おはよう。父さん、寝ぐせがすごいよ」


「お? そうか」


 寝ぐせを弄りながらロダンは返事した。


(一緒に起きたのかな。村長になって起きる時間遅くなったね)


 村長宅のアレンのいる客室から周囲1キロメートル以内の眠っている者を全員起こす。

 なお、既に起きている者が必要以上に驚いたりすることはない。

 半径1キロメートルだと耕作地域までは届かないが、居住地区の寝ている人を目覚めさせることができる。

 8歳までクレナ村に住んでいたから知っているが村の朝は早いため、ロダン村長とアレン以外はほとんど起きていただろう。


 家長で村長のロダンは、クレナ村にいたころはお寝坊のアレンが起きる1時間以上早く、6時過ぎには朝食を済ませ仕度して、畑作業を始めていた。


 アレンは顔を洗って食堂に向かうと、テレシアは既に起きており、朝食の準備を進めていた。

 朝から、3人の兄妹のために、夕食かと思うほどの豪華な朝食が並ぶ。


「あら、おはよう。ささ、皆で朝食にしましょう」


 テレシアの表情は笑顔なのだが、無駄に高い知力ためか、気丈に振舞おうとする声質の変化を捉えてしまう。


(当たり前に接してくれて助かる。昨日何かセシルの件で衝撃的なことが起きたが、今日の戦いに集中しよう)


 昨日はセシルの婚姻の件をあれこれ聞かれたが、俺もさっき聞いたばかりでまだ分からない一点集中ではぐらかした。

 明日以降考えればいいし、昨日のセシルの件は、自らの勘違いで何もなかったかもしれない。

 これから大事な魔王軍との戦い前にグランヴェル家と実家が総出にフラグを立てないでほしい。

 セシルが修行で今回の話を耳にしなかったことがせめてもの救いだと思う。


 農奴であった幼少期に何度も飲んだテレシアのスープは、野菜やお肉などの食材が豊富になったが、それでも相変わらず美味しさを感じる。


 アレンが朝から魔王軍との戦いに向けて出発すると家族も聞いており、祖父母も交えて皆で食事をとる。


「……」


「どうした? マッシュ」


(おいおい、そんな顔をするんじゃないぞ。縁起でもない)


 アレンは朝食を取ったら魔王軍との戦う準備を開始する。

 食事が喉を通らないのか、スープが注がれた木の器を片手で持ったまま、固まったままになることに気付く。


「マッシュお兄ちゃん」


 アレンの言葉にミュラが答え、そのやり取りを家族全員がマッシュに視線が注がれる。


「俺、もうBランクのダンジョンも攻略できてるし、Aランクのダンジョンももうちょいなんだ。一緒に……」


「それは駄目だ。昨日も話しただろう。とてもじゃないが、まだまだ力不足だ」


 アレンにとって大事な弟だから連れていけない面もあるのだが、ここは事実を口にする。


「でも……」


「マッシュ。お前がこれから冒険する世界は魔王のいない世界だ。少し退屈かもしれないが我慢してくれ」


(ラスボスは絶対にリポップさせない。完膚なきまでに叩き潰す。まあ、今回の作戦はルプト救出が最優先事項だけど)


 魔王軍が今回の戦いだけで滅ぼせるとは限らないが言い切ることにする。


「そっか。かっこいいね。兄貴……」


 表情を変え、交渉の余地がないほど断言するアレンに対して、マッシュは納得してくれたようだ。

 マッシュも魔王と戦いそうな空気にヒヤリとしたが話の流れにホッとしたのか、ロダンがアレンに話しかけてくる。


「アレン、ここはお前の家だ。戦いが終わったら帰ってくるんだぞ。ロダン家の長子はお前なんだからな」


「はい。父さんも母さんも元気で。マッシュ、これから学園都市の軍を移動する。送っていこうか?」


「ううん、もう少しいるよ。今日は祭りだし、なんか10日くらい新学期の授業はないみたいなんだ」


(学園の夏休み明けは10月1日だった気がするけど、アレン軍とか学園都市の開拓とかでスケジュールが変わったのかな。国王が開幕式的なことをやっているのかな)


 学園都市はアレンが5大陸同盟で訴えた学年制の変更により、本日、他国の学園都市からの転職が必要な生徒の受入れするための開拓工事が完了した。

 アレン軍も手伝ったがラターシュ王国が主導となって行われた工事が終わり、インブエル国王がその式典を行っているらしく、夏休み明けの授業開始は少し遅れるらしい。


 同じパーティー「百花繚乱」のレイラーナ姫が式典に追われてダンジョンにも行けず、せっかくなら豊穣の神に祈りを捧げる村の祭りに参加するとマッシュは言う。


(クレナたちも来たか。さて、召喚獣たちも転移先も今回全て解除するからな。マッシュが残ってくれていると助かる)


 建物の外に待機させていたロダン村を守ってきた霊Aの召喚獣が、出発を終えたロダンに気付く。


「コッコちゃん、朝、すごい鳴いたね」


「ああ、だけど、良く寝れたようだな」


「うん、目覚めばっちりだ!」


 この日に備えてこの9日間に渡る修行と準備で溜まった疲労を、草Fの召喚獣の覚醒スキル「ハーブ」を使って爆睡して癒し、鳥Hの召喚獣の特技「朝の目覚め」で起こす。

 仲間たちはもちろんのこと、これから激しい戦いが予想されるアレン軍にも体力を完全に回復させるため、メルスと協力して十分な数を用意した。


 今日の祭りに使用する櫓を背にして、クレナとドゴラの背後にそれぞれの家族が見送りに来ていた。

 どの両親も不安を必死に押し殺して笑顔を装っている。


「じゃあ、いくぞ。では、行ってきます!」


 名残惜しいが、実家には魔王を倒してもう一度戻ろうと思う。

 早く倒せたら、祭りがまだやっているかもしれないが、それは来年の楽しみにとっておこう。


 グランヴェルの街の伯爵の館でも、魔王軍と戦う予定のゼノフとペロムスがフル装備で待機している。

 玄関周りには、伯爵家とその使用人、フィオナの家族、クレナ村からやってきたペロムスの両親もやってきている。


「必ず生きて帰ってきてね」


「もちろんだよ、フィオナ」


 既婚者のペロムスが愛妻のフィオナに熱い抱擁する。


「……次はキールだ」


 カルネルの街、学園都市、ローゼンヘイムの首都フォルテニアに送った順番を逆流するように、皆を回収し、ヘビーユーザー島に向かった。


 1時間もかけず、9時頃にはヘビーユーザー島の中央当たりにあるアレン軍の演習用の広場に到着した。


 メルスも同じく世界各地に置いてきた仲間や各隊を回収してやってきたため、今回の戦いに参加する仲間全員とアレン軍2万人が広場に結集する。


 広場にはひと際大きい全長100メートルとタムタムとハクがすぐに目が行く。


『ギャウ!!』


「ハク!!」


 広場で合流できたハクとクレナが9日ぶりの再開を喜ぶ。

 なんでもハクは9日前に竜神の里に戻った竜王マティルドーラに特別な修行があると言われ、アレンたちとは別行動をとっていた。


 右手には全長100メートルのハクが10メートルほどの巨大な水晶のような玉を掴んでいた。


(竜王から『竜王の玉』を貰ったようだな。どんな戦力になるのか分析できなかったけど。クレナとの試練でも使わなかった強化の玉か)


 クレナたちが剣神の道場内で今日に向けて奥義、秘奥義の修行に励む中、ハクは竜王に連れられて、竜神の里で強化を図っていた。


 一応、作戦に組み込むため、「竜王の玉」はどんな効果があるのか竜王に尋ねたところ、竜王が竜王の職責を果たすために必要なものらしい。

 そんな説明だと分からないので、さらに説明を求めたところ「竜王の玉」は時空神デスペラードから預かった物で、竜王は神界へ繋ぐ審判の門を管理するために使うらしい。

 竜神の里に外敵がやってきたり、門を守ることに支障が出た場合、竜王の玉を使って、力づくで排除するためのものだという。


 ハクが一時的に強化するためのアイテムのようだ。

 時空神から預かった物を他の竜に貸して問題ないかと尋ねたところ、ハクはそのために次期竜王になるための試練に臨んでもらったという。


 必要なタイミングを計って使ってもらうことに使用することにしよう。


『アレン様、私の万里眼が忘れ去られた大陸の端を捉えています。今のところ上空から把握する限り、魔王軍に目立った動きはありません』


(ああ、助かる。速度的にあと3時間弱で到着するか)


 現在、ヘビーユーザー島は、中央大陸の北部から真北へ上空を減速して進んでいる。

 進行方向の島の先端近くを飛ぶクワトロが100キロメートル先にある忘れ去られた大陸の南端付近に設けられた3つの要塞の状況をアレンに報告する。


『アレンよ。各軍の状況は問題ないそうだぞ』


「そうか。全員揃ったか。メルス、済まないな」


『……問題ない。合理的ではあるからな。俺が先に救出に乗り込める可能性もある』


 今回の作戦の割り振りを受けて、メルスに改めて謝罪する。

 作戦の成功率を上げるため、メルスの希望する役回りを与えることは出来なかった。

 だが、間もなく魔王軍との戦いを控え、メルスは一切の不満を口にしない。

 自らの行動が作戦の成否を分け、それはルプトの救出するかに関わってくると理解しているようだ。


 今度はルキドラール大将軍と会話していたソフィーがこちらにやってくる。


「アレン様、各将軍が陣形を配置する前に一言頂けないかとおっしゃっています」


 アレン軍は攻略準備8日目に説明したところの配置をこれから進めると言う。

 その前にアレン軍の総統であり、最高指揮官のアレンが作戦開始前に一言頂きたいと言う。


「……分かった」


 仲間たちを背後に引き連れ、アレンは自らの軍に作戦を決行させるため一言伝えに動き出すのであった。


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ヘルモード12巻
発売日:2025年10月16日
ISBN:978-4803021981

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