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ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~  作者: ハム男
第13章 魔王城の攻略と攫われた天使
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第780話 攻略準備4日目:戦略艦②

 アレンがリオンに指示をして確認したのは、戦略級戦艦の魔導具、通称「戦略艦」の準備状況だ。


 魔導船は用途によって大小様々なものがあるが、人を一度にたくさん運ぶことを目的にしているため、50メートルから100メートル級のものがほとんどだ。


 だが、大国と呼ばれるバウキス帝国やギアムート帝国には、戦略を覆すほどの魔導船として、戦略級戦艦の魔導船が配備されている。

 戦略級魔導船は戦略艦とも呼ばれ、全長500メートルに達し、航行の際は大小の魔導船を引き連れ、大国の誇示に使われてきた。


 戦略艦は膨大な人員を一度に運び、武器や補給物資を大量に積み込むことが可能で、駆逐用や補給用の魔導船の大隊を組み、ゴーレム使いを多数運べば、敵陣破壊と戦線維持に有効だ。


 しかし、戦略艦にもデメリットがある。

 通常の魔導船と違い、艦体が大きい分、継続戦闘能力を維持するために膨大な魔石を必要とする。

 戦時中以外でも膨大な経費が嵩み、国家財政にかなりの負担を強いているため、大国であってもそうそう配備できるものではない。


【戦略艦の配備状況】

・ギアムート帝国1艦

・バウキス帝国2艦

・ローゼンヘイムなし

・アルバハル獣王国なし

・プロスティア帝国3艦


 今回、アレンの要望でギアムート帝国は1艦、バウキス帝国は1艦、プロスティア帝国は2艦の貸与の約束を得ている。


 戦略艦の鋼板で作られた防壁がいくつも取り除かれ、駆動室や推進機構の部分がむき出しになっている。


 今回のアレンの作戦を遂行するためにも、借りたままの状況では、十分な戦果を発揮できないため改造が必要だった。

 毎回のようにリオンをドックに寄こしているのは、今回作戦に必要な戦略艦の改造が期日までに間に合うのか確認するためだ。


(お? 魔導船と一緒に魚人たちも来てくれたか。助かる。進捗が捗るで)


 リオンの眼下では、ゴーレムに乗ったり、巨大なアームが取り付けられた魔導具などを操るドワーフと一緒に魚人たちが多く見受けられる。

 新しく運ばれてきた戦略艦の作業を魚人たちが一緒になって進めているようだ。


 ドック内には魚人とドワーフたちの指揮官と作業員たちの怒号が鳴り響く。


「魚人たちよ、この程度の大きさのスクリューでは推進力は得られぬぞ! 強力な推進の魔導具を3艦持ってきたぞ!!」

「砲台をそちらの戦略艦にも配備するぞ! どちらに運び入れたらよい!!」

「なんだその巨大な砲台は!? そもそもこれでは荷を詰め込み過ぎた! 重すぎて人が入れぬぞ!!」

「問題ない! 魔導コアを駆動の魔導具に連結させ推進力は3倍に向上させる予定だ!!」

「3倍だと、そんな馬鹿な!?」


 会話の掛け合いだけで巨大なドックの室内の気温が上がってしまいそうだ。


(魔導コアは惜しみなくだな。このためにアレン軍が魔導コアを収集してきたと思ってもよい。打倒魔王軍!)


 戦略艦を今回の電撃作戦に活用するため改造する必要があった。


 S級ダンジョンの最下層ボスであるゴルディノを倒すとたまに貰える魔導コアの存在を魚人たちはほとんど知らない。


 魔導コアはダンジョンコアの劣化版とも言えるもので、魔導具に取り付けたらSランクの魔石を超える動力としての効果を発揮する。

 今回の作戦に1艦当たり20個の魔導コアを使う予定だ。


『ほう? それでタジジス長官よ、魚人たちは協力してくれているのかな?』


 共有したアレンに足元の状況を見せていたリオンは、今度は思考を読んで、同じ執務室にいるドックの管理者であるバウキス帝国軍第一艦体整備長官タジジスに状況を確認する。


 魔王城攻略日前日までに4艦の改造した戦略級魔導船を用意するためには、人員不足が危ぶまれていた。


「はい。納期を間に合わせるには、どう急いでも人員が少ない状況だという話は昨日したのですが、本日中にドワーフは1万人まで増員させ、さらに魚人たちも3000人ほど、魔導船の扱いに優れた者たちが働いてくれています。女帝陛下様の命で作業が終わるまで戻れない厳命を頂いてきております」


 戦略艦に乗せた魚人たちが全て、魔導船の作業に優れた者たちだったとタジジス長官は教えてくれる。


 3日目よりもさらに工期を速めて作業を進めると言う。


(なるほど、随分形になってきたな。もう少し人員が欲しいのだが、正直倍の人員は欲しいところ。だが、これならいけるか。結構大変そうだな。力仕事にルバンカを寄こすかな)


「く、重すぎる! ゴーレムたちもこっちを協力してくれ!!」

「今、操縦室を改造するので手がいっぱいだ!!」


 多くの人が戦略艦で作業に当たっているのだが、人員にも限りがあるようだ。

 ゴーレムに乗った作業員もかなりいるのだが作業量に限界を迎えていた。


 リオンの意識の中で力仕事に適任だとルバンカの派遣を検討する。


 ドオオオン


(お? 獣人だ!!)


 アレンがリオンから見る視界とララッパ団長の配下のドワーフから状況を皮算用していると、ドックの扉が轟音を立てて大きく開いた。


「おお、なんて広いドックだ! さすがはバウキス帝国と言ったところか!!」


 軍服に身を包んだ豹の獣人が、配下の獣人たちを引き連れてドックの中に入っていく。


「おお! 高速艇でやってきてくれたのか。アルバハル獣王国が魔導船の作業員を派遣してくれたぞ!!」


 タジジス長官が高めの場所に設置された執務室から体を乗り出して驚く。


(タジジスさんとしては人員や日程が足りないと思っていたのか。ニコニコしているのに騙されてはいけないぞ。リオンよ! 日程は死守させるもの!!)


 ぞろぞろと獣人たちがドックの中を見上げながらやってくる。

 手には工具を手にしている見た目からも魔導船を扱う作業員たちだ。

 ヨロヨロと巨大な鋼板を運ぶ魚人たちに気付いたようだ。


「ぬ? 何だ、その程度の鋼板をそんな人数で運んでいる!!」


 軍服に身を包んだ豹の獣人が配下の獣人に指示を出す。


 魚人たちが10人でヨロヨロと鋼板を運んでいると、駆け付けた獣人が跳ねるように駆けると5人ばかりで間に入り、ヒョイと頭の上まで持ち上げて見せる。


「ひあ!? 足が!!」


 10人の魚人たちが驚いたのは、10人全員の足が床板から離れたからだ。

 身長はドワーフの倍の大きさ、魚人たちよりも頭1つ飛び出たムキムキの獣人の作業員たちだ。

 そのまま魚人たちに言われた場所へ易々と鋼材を運んでいく。


 タジジス長官が高台の足場から離れ、獣人たち下と向かう。


「よく来てくれました。助かります。はぁはぁ」


「我はアルバハル獣王国特務整備隊隊長のザイという。ゼウ獣王陛下の王命に従いやってきた。指示を頼む。戦略艦は持っておらぬが、魔導船の扱いに長けた者たち3000人を連れてきたので力仕事は我らに任せてくれ」


 到着した後の細かい話は良いから作業に入ると作業員の責任者のザイ隊長は言う。


(士気を上げるため、ゼウさんが作業員たちを鼓舞してくれたのか)


 アレンは大量の作業員を派遣してくれたゼウ獣王に感謝する。


「では、執務室に来てくれ。状況の説明から始めたい」


「あい、分かった。ラバ副隊長は我と一緒に説明を聞いてくれ。ボム副隊長は皆に手伝いをさせるよう指揮を頼む!」


「は!」

「は!」


 2人の獣人の副隊長に指示をすると、ザイ隊長はタジジス長官に引き連れられ、昇降の魔導具に乗って、ドック内に設けられたし執務室に戻った。


 リオンも含めて皆が席に着くと、タジジスが口を開いた。


「それで、半日も早く来てくれて助かる。求めていた鋼材と人員はどのようになっておりのかな」


「鋼材を含めた資材については6割ほど魔導船に積んでこの港町の沖合に停泊している。どうも大事な魔王軍との戦いに控えて港も込み合っているようだ」


 ザイ隊長は10艦にも及ぶ魔導船を引き連れやってきたと言う。

 だが、必要な資材の運搬で港は一杯になり、停泊することが出来ず、人員の一部を引き連れ、指揮官である自らがやってきたとザイ隊長は言う。


 今回、戦略艦を用意できないアルバハル獣王国、ローゼンヘイム、ギャリアット大陸の各国にも資材や作業要員の応援を求めている。


「そ、そうか。それは済まない。すぐに配下に指示をして港を整備させよう」


「助かる。残りの資材を含めて、ブライセン獣王国、バリオウ獣王国、レームシール王国からも作業要員を合わせて5000人が明日にも到着予定だ。ぜひ配備の計画を進めてくれ」


 アルバハル獣王国が他の獣王国家や鳥人国家にも協力を要請していた。


「お、おう、そうだな。助かる。だが、さすがに入り切れぬな」


(ゼウさんが仕事をするな。シアの命もかかっているだろうし。さて、ハーブの出番か)


『人員については昼夜で交代体制を取ればよかろう。後程アレン殿より細かい計画を伝えよう』


「な、なるほど。交代体制か。リオン殿の言うとおりだな」


 24時間働けるよう「ハーブ」を今日中にも持ってくるとリオンに言わせる。

 人員が十分いるので一日中働かせる体制にするよう、アレンが思案していると執務室が大きく開いてドワーフが叫んだ。


「おおおおおい! ギアムート帝国から戦略級が1艦到着するぞ。ゴーレム部隊は受け入れ準備を!! タジジス長官、ギアムート帝国工科軍大将軍ドルネイ様がお目通りを求めています!!」


「おお! ドルネイ大将軍か! 分かった。すぐに執務室へ案内してくれ!!」


「は!!」


 どうやらギアムート帝国からやってきた3艦目の戦略艦とその責任者の到着を知らせる者だった。

 その言葉を聞いたリオンがザイ隊長の横にいるタジジス長官に声を掛けた。


(5大陸、いや海底の大帝国も含めた全世界が魔王軍との戦いを終わらせようと必死になってくれているな。さて、あまり長居をしても邪魔になるな。工期を守れるよう助言とハーブの提供するに留めて。ルバンカを派遣してと。リオン、いったん話を切ってくれ)


 全世界が一丸となっている姿にアレンは興奮する。


 戦略級の作業が順調に進んでいるので最後にリオンに念を押させることにする。


『なるほど、日程は守れそうということで良いかな?』


「もちろんです。アレン総帥にもお伝えくだい!!」


 タジジス長官が魔王軍との戦いに備えた準備を期日までに間に合わせると答えてくれるのであった。


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発売日:2025年4月11日
ISBN:978-4803021103

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