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【アニメ化】ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~【2026年1月放送】  作者: ハム男
第12章 魔王軍の進撃と古代の魔法

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第764話 報告会

 魔王軍の侵攻を受けた当日の夜のことだ。


 魔王軍は撤退はしたものの、今でも行方不明者の捜索が継続し、避難民の居住スペースを設けるなど守人の竜人が戦闘後も尽力している。


 王都近隣都市シャウパは瓦礫の山となったが、探知機能に優れたタムタムや召喚獣たちも救援活動に加わっている。

 なお、天の恵みや大精霊神や精霊神の加護、キールの回復魔法を広範囲に振りまいた結果、たとえ瓦礫の下にいても重傷者はいない。


 救難活動を任せつつアレンたちは魔王軍侵攻された日の夜、王都ラブールの天空大王に呼び出された。

 シャンダール天空国を救ってくれたと大天使アウラからの報告が既にあったことが理由のようで、謁見の間ではなく王城内の一角にある広めの会議室での、一緒に食事会となった。


 どこの世界でも王族が歓迎と感謝の気持ちを示すのは一緒に食事なのかと思う。


(まったくありがたくないけど、今後のことを考えると天空大王への報告は丁寧にしていた方が良いか)


 豪華の一室で、黄金のカップに入れられた果実水を飲みながら、ニコニコと正面の席でこちらを見つめる天空大王を見て、社交性を全開にして笑顔で返す。


 この食事会には100人を超える魔王軍と戦った功労者たちが招かれたのだが、中央のテーブルには天空大王と王妃、そして第一天使ホマルの対面に、アレン、ソフィー、メルスが席に着いている。

 シャンダール天空国で戦ったクレナとドゴラが疲労を回復させ、空腹を満たすようにスプーンとフォークを動かし、もてなされた豪華な食事を口の運ぶ。


「うまい。これも美味い! 全部美味い!!」


「うむ、美味いぞ!!」


 今回参加したアレン、勇者、ゼウ、ガララ提督のパーティーとザウレレ将軍とその配下で50人以上参加しても十分入るほどの食堂には料理が絶えることなく、どんどん運ばれてくる。


 窓から見える建物の外では、竜王マティルドーラが竜人たちに樽に入れた酒を渡されて飲んでいた。

 その横で巨大な肉をバリバリとハクが貪っている。


 竜人たちは大勢が参加したため、流石にこの食堂には入り切れず、守主アビゲイルと生き残った守人長のみが呼ばれた。

 神界人が忌み嫌う原獣の園から態々やってきて戦いに参加した獣人の村の有力者たちが招かれたので、どれだけ今回の戦いに参加したことを感謝しているのかが伺える。


「もう、2人は相変わらず良く食べるわね。私は疲れすぎてそんなに食べれないわ。あいつらそんなに良いもの持っていなかったし。ねえ、メルル」


「ロゼッタ。酔ってるでしょ。このお酒美味しい。バウキスにない味だ。もう一杯貰えるかな?」


 背の低い頭に肘をかけ、ウザ絡みするロゼッタの腕を振り払うように、メルルは頭を動かして、自らの前に置かれた果実酒を入れた金のコップを両手で持ち上げ、一気に飲み干して使用人たちにおかわりを求める。


「なるほど、やはり殺されたのか……」


「はい。配下を守るために必死に戦ったようです」


(祝杯を挙げる気持ちじゃないだろうけど、勝利は勝利だからな)


 無念の気持ちが至る所で聞こえる会議室の声をアレンは意識して耳で拾っていく。


 アビゲイルは必死の戦いの中で自らの配下の竜人を動かすだけで手一杯の中、指示系統として、守人長に指示をしていたのだが、守人副長が答えていたため、恐らくやられてしまったとは予想できていたようだ。


 今回の魔王軍の侵攻は1時間かそこらであったが、竜人や神界人は数万単位で命を落とした。

 神界のために命を落としたというアビゲイルの言葉が思いのほか会議室に響いたのか、食事を口に運んでいるクレナは動かす金のフォークを止めてしまう。


 不穏な空気の中、天空大王は正面に座る大天使アウラからも最高の功労者と報告を受けているアレンに改めて魔王軍の真意を問う。


「……それで魔王の目的は分からぬまま、侵攻を始め、第一天使ルプト様を攫ってしまったというわけか?」


「そのようです」


「時空管理システムを奪われて大丈夫なのか?」


「すぐに何か影響が出るというわけではありませんが、これがないと神界と人間界の間の移動に障害がでるようです。時空神様は創造神エルメア様に報告に行くと言っていました」


 今のところ、アレンたちが人間界と神界の行き来することに問題がないと聞いている。


(さて、これ以上の報告のしようがないのだが、労ってくれたのは良いんだけど、ルプトを取り返しに行かないといけないぞ。ん? ようやく魔王に報告に行くのか?)


 天空大王への問いにも、王都ラブールに来るまでに整理した情報を卒なく答えつつ、頭の中でこれから急いでメルスの双子の妹のルプトを取り返す算段を考えていた。


 クワトロの特技「追跡眼」が魔王軍の動きを察知する。


『……ルプト』


 アレンと同時に魔王軍総司令オルドーの動きを捉えると、メルスが小さく呟いた。

 メルスは、天空大王にアレンと一緒に呼ばれていたのだが、険しい顔をしてずっと、時々オルドーやマグラの追跡眼に移り込むルプトを追っていた。


 メルスの殺意とも怒りとも取れる表情に、天空大王にも緊張感が伝わり息を飲んだ。


「アレン様?」


「ああ、ルプト様が魔王の下へ運ばれるようだ」


 天空大王が食い入るようにこちらを見つめるため、ルプトに「様」を念のためつけておく。


『……ふん、ようやく大人しくなったか』


 転移の得意なため勝手に逃げられないよう呪符のようなものを首につけられたルプトが、魔王軍総司令オルドーの肩に担がれ、静かに運ばれていく。

 特技「追跡眼」の視界の端からルプトを担ぐオルドー、キュベル、バスク、シノロムが広間を進んだ先にある階段を上がっていく。


 広間の中央にある階段を上がった先もどうも広間のようだ。

 上がった先の広間の視界の端に、さらに階段があるのだが、その階段の前で全員跪く。


「……遅かったな。もう戻ってこないかと思ったぞ」


 視界から見えない階段の上と思われる場所から聞いたことのある声が聞こえる。

 海底のプロスティア帝国の帝都パトランタの歌姫コンテストの会場で会った、魔王ゼルディアスの声だ。


『終わりの魔王ゼルディアスの下へルプト様が連れていかれたようだ』


 自らの2つ名を『終わりの』魔王の肩書からとって『始まりの召喚士』と名乗るアレンに緊張が走る。


 今回の魔王軍の侵攻は随分被害が大きかったようだ。

 これは神界の話ではなく魔王軍の話でもある。

 魔神、上位魔神合わせて1000体を投入し、現存する魔神王も全員参加での作戦だ。


 結果、最高幹部の魔神王が3体もやられてしまい、魔造した魔神たちは全て化身に変えて使い物にならなくなった。

 最後のルプトを攫うことになったキュベルに対して、オルドーがイラつきながら魔王報告に向けて作戦を練っていた。


(本来は第一天使3体全て攫う予定だった。だから神界闘技場とシャンダール天空国に攻めていった。攻める先にも理由はあったのか)


 ルプトを攫うことは最優先事項だが、ケルビンやホマルも余裕があれば攫う予定だった。


 生存する創造神エルメアの第一天使はルプト、ケルビン、ホマルの3体だ。

 上位神だからというわけで全ての神に第一天使が仕えているわけではない。


 今回の魔王軍の作戦は第一天使3体全て攫う予定で、神界闘技場にも攻め行った。

 魔神王で六大魔天マーラにはホマルを攫うことだけを伝えていたようだ。


 魔王軍がケルビンを攫う予定とシャンダール天空国でホマルを攫うタイミングを合わせ、陣頭指揮を執るルプトは、その最中で攫う予定だった。

 だが、神界闘技場の武具神や武神の決断は早く、ヘルミオスとゼウのパーティー、クレナとハクの奮闘もあって、とてもじゃないがケルビンを攫う余裕はなかった。


(だが、あの場所にはホマルもいたわけで。ルプトを優先する理由は何だ。年齢か?)


 どうも、ここまで聞いた話では王都ラブールでホマルを攫うのは、マーラの最優先の任務だったらしい。


 ズガンッ


 不明な点もあるキュベルとオルドーの会話を思い出していると、特技「鑑定眼」の先でオルドーが、床石が割れるほどの勢いで頭を下げる。


『今回は事前に十分に準備を重ねておりましたが……大変申し訳ありません!! 魔神王3体及び魔神ら1000体全て失う結果に……』


「過程は良い。余が求めるのは結果のみよ。それで手に入れたのはルプトのみ。生き残ったのはお前らのみというわけだな。今回も作戦は失敗したと。また、アレンにしてやられたのか?」


(俺の名前が出てきた)


 特技「追跡眼」の視界外から、やや怒気を込めた冷酷なまでの魔王の声が耳に響く。


『はい。我らの常識をはるかに超える速度でアレンとその仲間は成長しますよね。でも、何度も言うけど僕の作戦に失敗はありません。魔王がルプトを食らえばそれだけで今の問題は全て解決するんだよ。それだけの価値がルプトにはあるんだ』


 同じ魔神王でもオルドーに比べたら魔王に対して随分ラフだ。


『食らうだと!!』


「め、メルス様!!」


『お、オギャアア!?』


 キュベルの言葉を聞いていたメルスが怒りで立ち上がる。

 あまりの勢いで天空大王は目を見開いて大きく仰け反り、ウトウトとしていた第一天使ホマルは大声で泣き始めた。


「おい、アレン。何だどうなってんだよ?」


「まじかよ。食らうってまさか……」


 ドゴラとキールが食事を止め、アレンの下へと歩み寄る。


 怒りに身を任せて立ち上がった食堂は静まり返り、今まさにアレンの召喚獣の特技で魔王軍の様子を見ていることに、仲間たちが気付いたようだ。


(おいおい、邪神を食ったみたいにやはりルプトを食べるために攫ったのか。でも、何故なんだ。第一天使とはいえ、神でもない天使が邪神に比べるほどの価値があるとは……。ん? 価値?)


 第一天使を食らう。

 ルプトでないといけない。

 ルプトの価値。


 答えが出たというほどではないが、キュベルの報告で1つの可能性が出てきた。


「ほう? 問題ないというのか?」


『もちろんですよ』


『お、おい。前も言ったが魔王の御前で無礼であろう』


 無礼で言うとキュベルの背後で、バスクは早く終わらないかと胡坐を搔いて座り、シノロムは奪ったキューブ状の時空転移システムをカチャカチャと弄っており、2体は全く魔王への報告会に参加する気がないようだ。


『さてと、そろそろ気になっているようだから答えを言わなきゃと思ってね』


『……おい! 魔王様の前で!!』


 跪いているキュベルが立ち上がると、オルドーが制止しようとする。


「どうした?」


『いや、魔王軍総司令殿とバスク君の背後から覗き見ているようだからね。何故ルプト君だったのか教えてあげようと思ってね。えっと、この辺かな~。どう? 僕は写っているかな? は~い、聞こえてる? アレン君』


 アレンとメルスが同時に、背筋が凍る感覚がした。


 オルドーの制止など気に留めることもなくツカツカと歩くとオルドーの背後に回り込み、クワトロの特技「追跡眼」とキュベルの眼が合った。


(最初から気付いていただと?)


 キュベルはアレンが覗き見ていることを知っていての行動のようだ。

 視界に入ったキュベルが、まるで踊るように、くるくると回転して見せるのであった。

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ヘルモード12巻
発売日:2025年10月16日
ISBN:978-4803021981

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― 新着の感想 ―
メルスみたいにルプトも召喚獣になる線はあるのだろうか
覗くときは覗き返されてるものか
キュベルマジ腹立つ!!
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