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第743話 神界闘技場強襲①※他者視点

 第一天使ルプトは、アレンたちに時空神の救援を求め、メルスに天空大王へ事情を説明し、防備を固めるよう指示してすぐに、神界闘技場にある剣神の道場へ向かった。


 配下のアウラたち3体の大天使たちには、他の神々に連絡をしたり、救援してもらうよう駆けつけたりしている。


 転移の際に輝いていた天使の輪が、神界闘技場の中央上空へ到着すると落ち着きを取り戻す。


『また、連絡が切れています。剣神様は道場にいてくれたら良いのですが……』


 緊張感のある表情のルプトは剣神の勝手な振る舞いに文句を言うことない。

 中央付近に設けられた武具8神のとりまとめ役であり、上位神である剣神セスタヴィヌスの道場へ羽に霊力を込め、一気に加速して向かう。


 悠久の寿命を持ち、神界人の中から生まれる天使の中でも最高位である第一天使ルプトは、広大な神界を好き勝手、自由自在に転移できるわけではない。


 神界自体は人間界に比べてもとてつもなく広大な上に、それぞれの神々のいる神域も広い。


【神界に登場する各神域の広さ12章簡易版】

・原獣の園:地球表面(5億平方キロメートル)

・精霊の園:地上表面(1・5億平方キロメートル)

・シャンダール天空国:北アメリカ大陸(2500万平方キロメートル)

・大地の迷宮:1辺1000キロメートルの立方体で階層構造

・神界闘技場:半径300キロメートルの円状

・魔法神の研究施設:100キロメートルの正四面体で階層構造

・時空神の管理システム:100キロメートルの正四面体で階層構造

・風の神の雲:全長100キロメートルの雲海

・商神の露店市場:1辺50キロメートルの平面


 第一天使の役目は255柱のトップに君臨する創造神の思いを神々はもちろんのこと、天空国、人間界にも伝えなくてはいけない。

 創造神エルメアの想像を絶する指示をこなしながら、悠長に空を飛んで行って伝える時間など第一天使ルプトには与えられていない。


 人間界の教皇、天空国の大王には魔導具で連絡したり、配下の大天使マーラたち3姉妹に任せることもある。

 255柱の神域であるなら神々をとりまとめる上位神に連絡し、それぞれの神々に伝えることを依頼する等、伝達の手間を軽減させている。


 それでも、今回の非常事態に迅速に連絡を取り合うために、第一天使には創造神より一部の神域に転移先として登録したり、霊力の消費だけで直接連絡できるような、スキルを与えられている。


【創造神エルメアから与えられた第一天使ルプトの能力】

・100カ所の地点を座標として登録した場所に転移できる

・100カ所の地点を座標として登録した対象に転移できる

・100柱・人を対象に伝達できる

・対象の座標、柱・人物を配下の大天使に最大各10件まで貸すことができる

・対象は変更可能


 ルプトのスキルはアレンの鳥Fや鳥Aの召喚獣の特技、覚醒スキルの上位互換なのだが、万能ではない。

 登録した神域の座標から対象の神々がいなくては探さないといけない。

 故に神々は祀られた台座の上から動かないようにしているのはこのためだ。

 風の神のように奔放な神だと自らの神域内を好き勝手移動し、連絡がすぐに伝わらないことも多い。


 干渉を嫌う神々によっては、着信拒否をすることもあり、連絡が伝わらないことがある。


 第一天使ルプトは道場上部に設けられた隙間からサッと道場の中に入り、天井の位置を飛翔して道場中央付近へと向かう。


 キン

 ギンッ


「やあ! たああ!!」


 クレナが聖剣アスカロンを両手で強く握りしめ、自らよりも頭2つ分ほどの大きい剣神相手に剣を振るっている。


 道場の隅では、4体の天使たちが腕を組んで様子を頷きながら見ている。

 第一天使で剣神流の師範の肩書を持つ第一天使のケルビンと、3体とも大天使で筆頭師範代のムライ、師範代のゴトウ、師範代のキクチがこの場にいる。


『ほれほれ、剣神流は体全体で動かさないとだめだぞ。しっかり動け。単調になっているぞ! それじゃあ秘伝の奥義も渡せないな』


「うん!! 奥義ください!!」


『ほら、足だ。肉体の全てをしっかりコントロールしろ!!』


「はい!! やああああああああ!!」


 アレンのパーティーの中では随一の戦闘センスがあるクレナが相手にもならないようだ。

 神聖オルハルコンの大剣である神器アスカロンを、神力を込めて固くした木刀で向かっている先から軌道をずらし、いなしていく。


『ん? 何だ?』


 人が攻撃を受けたら胴ごと真っ二つに切れそうな勢いの斬撃を見ずに正確に合わせていきながらも、剣神は天井に視線を移した。


「むぬおおおおおおおお!!」


『ん?』


「へば!?」


 視線が外れて攻撃のチャンスだと、言わんばかりに剣筋に勢いを増す。

 視線を合わせず、木刀でいなされているのだが、剣神を一歩も動かすことができない。

 だが、視線が外れても足を払われ、上段に構えたままクレナは床板に顔面から崩れて落ちる。


『……はぁはぁ。いましたね。連絡しているので返事いただけると助かります!』


『修行中だったんだよ。それで、時空神がどうのこうので緊急ってところまで聞いてたぜ』


『そのとおりです。武装の準備してください。神界は魔王軍の侵攻を受けています』


『構わねえけど、前回に引き続きまたマーラに出し抜かれたのかよ。管理コードを書き換えて問題無くなったっていってたじゃねえかよ』


『今、そんな話をしている場合ではありません。私は魔王軍侵犯時における非常事態に該当すると判断しました。剣神様はもちろんのこと、他武具7神および修行中の天使も武装決起願います』


『……ほう? 非常事態の対応を使うんだな。じゃあ、武神にも声を掛けねえとな。だけど、ここで修業している天使共は火の神の強襲後に育成している奴らだぜ? 満足に戦えないかもしれないぞ』


『やむをえません。総動員での対処を願います』


 非戦闘の神々もいる中、神界闘技場の戦力が必要だとルプトは説く。


「ルプトさん? 非常事態?」


 剣神だけを見て、夢中になって空気を切る大剣で斬撃を繰り返すクレナが、ようやくルプトに気付く。


『おい、クレナ。魔王軍が攻めてきているんだと』


「魔王軍!!」


『だから、戦闘準備に入れ。ケルビン、ちょっとこい』


『剣神様! 戦闘準備でございますね!!』


 ケルビンが師範代の3体の大天使を率いて、剣神の元へ飛んでくる。

 一緒に話を聞いていたようで、すぐに何をしたら良いか分かったようだ。


『そうだ。俺はオフォーリア姉様の所に行ってくるぜ。ケルビンたちは手分けして他の7神や天使たちを動かせや』


『は!!』


 闘神3姉妹の三女である剣神は次女に当たる武神オフォーリアにも事態を伝えるようだ。

 ケルビンの返事を背中で受け、掛け軸裏に設けられた時空の歪みに手を突っ込むと、剣神はスッと姿を消した。


『クレナよ。ほれ、お前も戦ってもらうぞ』


「ありがとうございます!!」


 魔導袋を受け取って、食事と水分補給を同時にできるモルモの実をバリバリ食べながら、オリハルコンの鎧を取り出す。

 どれだけの時間、剣神に絞られて空腹だったのか、2口でリンゴサイズのモルモの実を食べると、今度は干し肉でさらに栄養を取り、戦いに備える。


『ルプト様と我、ゴトウとキクチで7神の神域に伺ってこよう。ムライとクレナはここの道場でどうなったか説明し、戦う準備を始めよ。準備ができたら、そうだな。この道場にこい。転移は任せても問題ないですね』


 戦いの場所に武具8神と天使、総動員して対応するとケルビンは言う。

 剣神がいなくなった道場で、ケルビンが師範代たちを動かしてくれる。


『え、ええ。助かります。ただ、魔王軍の狙いはまだ分からぬ状況です。たった今、アレンたちが時空神の元で魔神王なる者たちとの戦いを始めたようです』


「アレンが?」


『そのとおり。どうやら、狙いがあるようですので急ぎましょう』


『ああ、俺は槍神様と斧神様の下へ。残り2人にはルプト様から逐一連絡いただけると助かります』


 剣神に仕える第一天使ケルビンが簡単にどの武具神たちに向かうのか割り振ってくれる。


『はい。私は弓神コロネ様の元へ向かいます。私から連絡しますので返事頂けるよう』


 神界闘技場は半径300キロメートルに円形の神域に、剣神の道場を中心に7方に分かれている。

 事が事なので、四方に分かれて動いた方が良いとケルビンは判断したようだ。

 ケルビンが筆頭に4体の天使が効率良く声を掛けるらしい。


【神界闘技場の武具8神:性別:主な武器】

・剣神セスタヴィヌス:女神:剣、短剣

・槍神ガイダルク:男神:槍、鉾

・弓神コロネ:女神:弓、短弓

・爪神クワルコム:男神:爪、ナックル

・斧神バッカライ:男神:斧、片手斧

・錘神ヘラルド:男神:錘、棒、杖

・投擲神カイリ:女神:ブーメラン

・鞭神ライデン:女神:鞭


 ルプト、ケルビン、ゴトウ、キクチは天使の羽をバッと広げると、飛び上がったかと思ったら、四方に開いた天井付近に設けられた隙間から出て行く。


『クレナよ。儂と一緒に来い』


「うん!!」


 鎧を身に纏い、骨付き肉の骨をガジガジと噛んでいたクレナが魔導袋に食べかすを仕舞って、ムライと一緒についていく。


 剣神専用の道場から渡り廊下を走り抜け、天使たちの修行する道場に到達する。

 ムライが引き戸を力任せに引いたせいで、轟音が道場に鳴り響く。


『ムライ師範代、いかがされましたでしょうか』


 兄弟子と思われる剣神流の門下生をする天使がムライの元へとやってくる。

 血相を変え、真剣みを増す表情にすぐに何が起きたのか分かったようだ


『魔王軍がまた攻めてきたようだ。お前たちには戦ってもらうぞ!』


『な!? しかし、弟弟子のほとんどがまだ数年しか修行をしておらず……』


 火の神フレイヤの神器を奪われた際、魔王軍に多くの被害を出したとクレナは聞いていた。

 天使側も多くの被害が出たからこんなに大勢、修行に励んでいることを知る。


『そうは言ってられぬだろう。非常事態であると剣神様もご判断された。武器を真剣に換えよ!』


 木刀を使い、素振りや試合をしていた門下生の天使たちに真剣を取れと言う。


『皆、ムライ師範代の言うことを聞くのだ。魔王軍と戦うぞ!!』


『お、おおお!!!』


 張り合いの無い返事に後頭部の薄いムライのでこに血管が浮き出る。

 訓練する天使たちが大声を出して、気合をいれようと叫び始めた。


 ズドオオオオオオオン


 爆音が鳴り響き、道場は大きく揺れた。

 どうやら道場の天井に魔法弾を撃ち込まれ、3分の1ほどが吹き飛ばされ、残骸が道場の床に落ちてきたようだ。


『これは何でしょうか!?』


 天使たちの阿鼻叫喚の中、魔王軍の一団が、剣神の道場の天井からゆっくりと現れる。


『あらら、いたいた。1体残らず皆殺しだからね~』


 手をでこに地面と水平にあて、道化師の姿をしたキュベルがこちらを見て、殺戮を宣言する。

 魔神や上位魔神の一団を率いる魔王軍の先頭に立つのは魔神王オルドーと魔神王キュベルであった。

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