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【アニメ化】ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~【2026年1月放送】  作者: ハム男
第12章 魔王軍の進撃と古代の魔法

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第732話 錘とため池

 アレンたちの協力で星4つの錘王の才能に転職したアビゲイルが、大精霊神イースレイの報酬として自らの才能にあった「錘」が欲しいと言う。


(ふむふむ、予想通りだな。オリハルコンの錘、気に入ってくれていたし)


 アビゲイル率いる守人の竜人部隊はアレン軍と共同演習をしたり、スキルやレベルをカンストした竜人の転職をすることがある。

 以前、人間界で行動を共にする将軍格の1人がオリハルコンの武器を装備していた時、アビゲイルが羨ましそうにしていた。


 霊石を回収し、ペロムスを通じて学園都市改革の資金を得ていることもあるので、オリハルコンの提供を申し入れたところ何度も辞退された経緯がある。


 資源の少ない神界の雲の上では、オリハルコンとは真に神の鉱石であった。

 配下を率いる上でも、守主としてあるべき姿であるべきだと説得し提供した。


 神々と天空大王に挟まれて、今回は流石に、辞退することはないようだ。


『錘ですか……。困りましたね』


「そ、そうですか?」


 報酬は何が良いか聞かれて錘しか思いつかなかったのだが、大精霊神の言葉にアビゲイルは困惑する。


『恵みや豊かさを報酬として与えるのは私が得意とするところなのですが、本来武器を提供するのはいささか不安が残ります。アビゲイルさんを満足できる武器ができましょうか。モルモル様はいかがですか?』


 大精霊神はアレンたちへの報酬も与えており、十分な神力がないと言う。

 なお、苦手だが上位神とあって、強力な武器を作れないこともない。

 アレンとの打ち合わせの結果、このように回答し、豊穣の神であるモルモルに話を振る。


『……ほほ、儂も苦手だの。力としては大精霊神様と系統は同じ故に。ギランさんは神技や神器を与えて疲れているようですし、属性神のうち誰か与えられぬか?』


(モルモルが話を合わせてきたな。まあ、無駄な神力を使いたくないとかそんな感じか。竜人とはほとんど接点ないし)


 なお、シアにも神技や神器を与えた獣神ギランは攻撃系の武器を造れそうだが、ヨボヨボでくたびれているので無理にお願いしないようだ。


『む? ドゴラに力を与えているゆえにな。モルモル様の頼みに言えど難しいわ。アクアはどうなのだ?』


『そうですね。私もイグノマスに力と加護を与えていますし。錘と言えばガイアがぴったりな気がしますが?』


(水系の武器か。魚人といえば槍だな。ハンマー系の錘は大地の神がイメージに近いか)


 前世でギリシャ神話のポセイドンの武器は三つ又の槍だったような気がする。


『おいおい、勘弁してくれ。大地の迷宮を完全攻略されて骨の髄までこっちは搾り取られているんだぞ。大地の迷宮がどうなったか見に行けよ』


(アレンの剣ありがとうございます)


 ガイアは名工ハバラクに神技、神器、加護の全てを与えた上で、アレン専用武器である「アレンの剣」に神力を限界まで絞りだしてもらった。


 火の神、水の神、大地の神はそれぞれ、試練を超えたアレンの仲間たちに対して、神力を注ぎ込み、報酬を与えている。


「何だあの神々のくたびれた表情は……」

「人間界の人々は何を神々に求めたと言うのだ」

「ネスティラドを狩ったと言うし、それほどの試練を超えてきたと言うのか」


 四大属性神や神々の疲弊に天空大王や貴族たちはザワザワとし出した。


 だが、疲弊した四大属性神の中であって、まだ、報酬を与えていない神がいる。

 会話に参加せずに、両手で後頭部を支え、空を眺め我関せずな態度に火の神が声を上げた。


『おい』


『……』


 火の神の声掛けにも開放的な神殿の天井の先を見つめている。


『おいって言っておるのだ! ニンリル、お前が報酬出せばよかろう!!』


『え? 俺か? めんどくさいな』


『そうだぞ。お前だけ誰にも報酬出していないだろ。別に神器寄こせと言っているわけじゃねえんだ』


 大地の神も同意して、水の神も強く頷いている。


『ほほ。これは決まりだの』


『すみませんがニンリルさん、アビゲイルさんに報酬を上げてください』


 2柱の上位神からも賛同を得て、風の神が報酬を与える流れが作られる。


「ニンリル様の報酬……ですか」


『天空大王、いかがしましたか?』


 大精霊神は天空大王の独り言を見逃さなかった。


「い、いえ。流石は竜人の守人たちを束ねる守主のアビゲイル殿であるな! うむ、素晴らしいことだ!!」


(なんか初めて「殿」をアビゲイルさんにつけたな。呼び捨てだったくせに。それにしても神界人にとっては喜ばしい話ではないと。だが、竜人の誇りを取り戻さないといけないからな)


 神界人がもっとも信仰しているのは風の神だ。

 空に浮く広大な大地であるシャンダール天空国は風の力を動力に水車や風車を動かし、穀物を脱穀したり、上下水の水路を流しており、風の神の恩恵はとても大きい。


 自らが信仰する風の神の報酬が、神界人を差し置いて、竜人の守人を束ねる者に与えられる。

 今後、守主として謁見の機会や霊獣を依頼で呼び出すこともあるだろう。

 神界人は風の神に与えられし武器を背負うアビゲイルを、今後、天空大王や王侯貴族たちは無碍にしたりできるだろうか。


 なお、アレンが4大属性神を今回の鎮魂祭に呼んでほしいとお願いした。

 こんな流れになると高い知力をもって容易に予測できたからだ。


『じゃあ、ほら、アビゲイルって言ったっけ。ほら、もっとこっちへこい。むん!!』


「は、はは!!」


 壇上の上で前に出た風の神が両手を前に突き出し神力を込め始めた。

 小さな風の渦が神力によって練られ、ゆっくりと「錘」という長くした分銅に取手がある武器に変えていく。

 斧とも槍とも違う、重量に任せて敵を叩き潰すことに特化した錘の表面には風の模様が浮き出ており、武器全体に風を纏っている。


『ほれ。ウイングクラッシャーだ。大事に使え』


【武器「ウイングクラッシャー」の効果】

・攻撃力30000

・素早さ10000

・攻撃属性:風

・魔法「ウイングハンマー」を使用可

・魔法「ウイングシールド」を使用可


(あら、素敵な武器ね。パーティーに錘使いがいないけど)


 自らの横に一瞬だけ天使B「虫眼鏡」を装備させたメルスを召喚し鑑定させたあと、カードに戻す。


「あ、ありがたく……」


 アビゲイルに風の神ニンリルにウイングクラッシャーを与えられる。


 パチパチパチ


 アレンが拍手すると、天空大王を筆頭に神界人の貴族たちも拍手しだす。

 風の神が報酬を与えた事実に神界人として後ろ向きな態度はできなかったのだろう。


『……では、報酬は与えられました。鎮魂祭を終了したいと思います』


「少々お待ちください。まだ頂いていない報酬がございます」


「おい、アレンよ。何を行っておるのだ」


 アレンと大精霊神は台本通りの会話であったのだが、台本を渡されていない天空大王からツッコミが入った。


『……アレンさん。おかしなことを言いますね。報酬は今、渡されたはずですが?』


(大精霊神は新世界の神にも旧世界の神にも中立な立場と。だが、進んで報酬は渡せないからな)


「今回の働きには獣人たちの頑張りもあったように思えます。獣人たちの働きにも何か報いて頂けないでしょうか?」


『ん? それで私が呼ばれたのですか。私に報酬を求めると?』


 台本を渡されておらず静観していた獣神ギランが反応する。

 だが、どうやら風の神の報酬を与える流れも含めて大精霊神とアレンのやり取りには台本があることにようやく気付いたようだ。


「いえ、無理にとは言えませんが、誰の負担もなく報酬を与える良い方法があるのです」


 アレンは悪い顔をしながら会話を始めた。


『アレンさん。詳しく説明してください。皆さん困っていますよ』


「はい。実は精霊の園では膨大な量の『命の雫』が溢れており、このままでは精霊の園が水没するのではという状況にございます。これもそれも竜人が務めを果たし、多くの霊獣を狩ったからだと聞いています。原獣の園の獣人たちはその働きに大きく貢献しました」


「な、なんと、そのようなことが……」


 天空大王が神界人たちと共に絶句する。


『私の神域である精霊の園はそこまでひどい状況ではありませんが続けてください』


「今のままでは命の雫は行き場を失う恐れがあります。ですが、霊獣が跋扈する荒廃した大地で懸命に狩りを行い、活動圏を広げた獣人たちの住む場所には生命の豊さを必要としています。ぜひ『ため池』を原獣の園に作っていただけませんか?」


『なるほど、結果には報いるものが必要ですか。モルモル様はいかがでしょうか?』


『……なぜ、儂に聞くかの。まあ、言わんとしていることは分かったの。そうか、命の雫を原獣の園にか。獣人たちの働きからも断る理由はないぞ。ふむ、どうするかの……。まあ、良いのではないのかの』


 顎を弄りながら豊穣神が少しの思案の結果、GOサインを出した。


『助かります』


 大精霊神が豊穣神に礼を言う。


(新世界と旧世界の神々がいるならば、モルモルはゴリゴリの新世界派らしいからな。これで同意を得たいと)


 豊穣神モルモルは人間界の人々から圧倒的な信仰を誇る。

 クレナ村もロダン村も10月1日のアレンの誕生日には「収穫祭」を行い、豊穣神モルモルに祈りを捧げている。


 収穫の恵みを祝い、来年の豊作を願う人々の祈りの祭りは全世界全国の人々が種族を問わず行ってきた。

 上位神にして、大地の神ガイア、薬神ポーションなど、力を持つ神々を率いる。


 創造神に最も近い立場にあると言われ、新世界派の筆頭と言われる豊穣神モルモルが、旧世界の神々が争った大地に「命の雫」を提供することを同意してくれた。


『……だが、そうじゃのぅ。しかし』


「しかし?」


 許可を出した豊穣神の言葉が終わっておらず、アレンに緊張が生じる。


『原獣の園への提供状況は儂の目にも納めないと創造神様へ詳しく報告できないの。のう、アレンよ。これも筋書きどおりかの?』


 豊穣神は大精霊神ではなく、アレンを静かに見つめていた。

 底知れぬ瞳の中にある闇を向けられると、絶望する程の神々の闇を感じ、アレンは身震いしてしまう。


「何をおっしゃいますか。豊穣神様にも厳しい原獣の園の状況を見ていただく良い機会でございます」


『ほほ。そうするかの』


 鎮魂祭の前に第一天使ホマルが誕生し、守主アビゲイルは風の神から報酬を貰った。

 アレンの交渉が上手くいき、原獣の園では命の雫の一部が提供する形で話がまとまる。

 こうして神界における霊獣ネスティラドを狩った結果行われた鎮魂祭が終了したのであった。

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ヘルモード12巻
発売日:2025年10月16日
ISBN:978-4803021981

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― 新着の感想 ―
アレン最高! これが御恩と奉公ってやつか!
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