第626話 ギランの試練②達成報酬「神技」
アレンは簡潔に来た目的を獣神ギランに伝えることにする。
「昨晩、ギラン様より与えられた試練を1つ達成しました」
(神を相手に雑談から入ることもないか)
『ガルム様より聞いていますよ。随分な騒ぎを起こしたそうですね』
昨日の今日で、すぐにやってきたつもりだが、神界の報告は随分早いなと思う。
「試練達成のためには仕方ないこととはいえ、何とか創造神エルメア様のお許しを頂きました。おかげで人間界の鳥人たちも大変喜んでおられます。これも試練を与えていただいたギラン様のおかげといっても過言ではありません」
アレンは試練達成の報酬を貰うまで、殊勝な態度を貫き通す所存だ。
今回のクエスト達成の条件は、幻鳥レームが神になる方向性を示すことだ。
神界のトップに君臨する創造神エルメアが、レームを神にすることを前向きに考えるとは、試練達成の条件を十分満たすと考えられる。
セシルもソフィーも昨晩のことがどのように話が進むか神妙な表情で推移を伺う。
シアは、何が起きたのか分からず、「アレンはまたやったのか」とセシルとソフィーに視線を送る。
ロザリナだけが、話に興味がないのか、セットが決まらないオレンジ色の前髪をいじっている。
『次問題を起こしたら、守り切れないと言われました……』
「無事で何よりです」
『ガルム様にご迷惑をおかけしたかもしれません』
「心中お察し申し上げます」
(え? 何? もったいぶってんの? それとも、報酬を貰うための合言葉でもあったか?)
『……』
沈黙が訪れ、アレンとギランが見つめ合う。
「試練の報酬を頂きに来ました」
困惑するギランにアレンは、ここに来た目的をはっきりと伝える。
『この状況でまだ試練の報酬を催促されるとは。これ以上、反省を促すのは無粋でしょうか。良いでしょう。シアさん、前に来なさい。報酬を与えます』
「シア、報酬だぞ。すぐに前に来るんだ!!」
「あ、ああ、分かった。無事に試練を越えたんだな?」
「当然だ。ばっちりだったぜ」
『なんとなく時空神デスペラードに起きた災難が分かったような気がしますよ。それで言えば、大精霊神イースレイ様も大変だったでしょうね……』
「何か言いましたでしょうか?」
『何でもありません』
「ギラン様、こちらでよろしいですか」
アレンとギランの会話の最中、シアがギランの目の前に立った。
『もちろんです。では、獣神ガルム様の血を引き、アルバハルの末裔シアよ。あなたに神技を授けましょう。全ては結果に終わる神速の爪を備えなさい』
「ぬ? おおおお!?」
獣神ギランが爪がむき出しになった前足を掲げ、シアの目の前で軽く振った。
軽く風が起こったかと思うと、シアの周りに囲い込み、肩から腕、そして両手を風が包み込む。
ブン
『シアはスキル「神技発動」、神技「神風連撃爪」を手に入れた』
魔導書にはシアが獲得した神技がログとして表示される。
シアは獣神ギランの試練を1つ達成した。
「おお! シアが神技を手に入れたぞ!!」
(なんかすごい響きの名前だね)
紛れもないシアの強化にアレンは仲間たちと共に喜ぶ。
【名 前】 シア=ヴァン=アルバハル
【年 齢】 16
【加 護】 獣神(加護無)
【職 業】 拳獣王
【レベル】 99
【体 力】 7851+9600(真爆拳)
【魔 力】 4273+4800
【霊 力】 9073
【攻撃力】 8280+9600
【耐久力】 7851+4800
【素早さ】 6355+9600
【知 力】 3573+9600
【幸 運】 5271+9600
【神 技】 神風連撃爪〈1〉
【スキル】 拳獣王〈8〉、真強打〈8〉、真駿殺撃〈8〉、真地獄突〈8〉、真粉砕撃〈8〉、真爆拳〈2〉、反撃武舞〈7〉、獣王無尽〈6〉、組手〈8〉、拳術〈8〉、獣王化〈7〉、獣帝化〈5〉、神技発動
・装備
【武器】オリハルコンのナックル:攻撃力12000、攻撃力6000
【鎧】オリハルコンの鎧:耐久力10000、耐久力5000
【指輪①】素早さ5000、素早さ5000
【指輪②】素早さ5000、素早さ5000
【腕輪①】クールタイム半減、回避率2割上昇、体力5000、素早さ5000
【腕輪②】スキル発動速度2倍、物理ダメージ2割上昇、攻撃力5000、素早さ5000
【首飾り】素早さ3000、素早さ3000
【耳飾り①】 物理回避率7パーセント、素早さ2000
【耳飾り②】 物理回避率パーセント、素早さ2000
【腰帯】 風属性 素早さ10000
【足輪①】素早さ5000、転移、回避率20パーセント
【足輪②】素早さ5000、転移、回避率20パーセント
「獣帝化も随分、スキルが上がっているな」
シアのステータス欄には、たしかに「神技」の項目が追加されていた。
魔導書でさらに、シアのスキルの変化について確認する。
アレンたちが霊石集めやギランの試練②の達成に向けて、別行動している間に、スキル「獣帝化」はもちろんのこと、そのほかのスキルについても、いくつか上昇がみられる。
「余だけこの場に残ったのだ。やるべきことをやったということだ」
「どうする? 攻撃系のスキルのようだけど、いったんスキル上げをしてからにするか」
「いや、せっかくだ。スキルの内容は挑戦の中で確認したらよい」
アレンからギランに視線を移して、シアは答えた。
『ほう、この勢いのまま、もう1つの試練も超えようというのですか。この20日ほどの間、大して距離は詰められていないように思えますが?』
ギランは口角をニヤリと上げて答えた。
(たしかに、獣帝化のスキルが上がるたびに、目に見えて素早さが上がっていっているんだが。しかし、今日の俺たちをこれまでと思ってはいけないな!)
獣帝化はスキルレベル5に上がり、これだけで1のころより2万も素早さのステータスが増加した。
「ロザリナ。出番だ、余裕のよっちゃんイカで、もう1つの試練を達成させたい。やってくれるな」
アレンは前世だと世代を感じさせるような発言をする。
「ふう、朝から仕方ないわね。ロザリナ、イカの魚人じゃないわよ」
我れ関せずと、後ろで寝ぐせの手入れをしていたロザリナが、ようやく、やる気を出したのか前に歩み出る。
(歌神と踊り神に鍛えられたかな。うちのお色気担当、なんか歩き方から違うんだけど。パリコレ的なやつで見たことあるぞ)
モデルがランウェイの前を歩くように、薄着のためはだけた、腰のくびれを歩くたびに大きく揺らし歩き出した。
もう、朝というより昼前なのだが、ロザリナの言葉には勝利の確信が含まれていた。
シアたちの下へ向かうため、前に歩みを進めたロザリナを警戒しながらギランが見つめている。
『ほう、あなたが歌神ソプラに「異才なる人」と言わしめたロザリナさんですか』
「あら、私も有名になったものかしら」
原獣の園まで自らの名が知れ渡り、口角が上がり、ロザリナは愉悦に浸る。
(とんでもない強化を果たして、帰ってきてくれたからな。これが極めたバフ使いの力か)
アレンは魔導書を見て、獣神ギランの前でも不遜な態度を止めないロザリナの態度に納得する。
【名 前】 ロザリナ
【年 齢】 17
【加 護】 歌神(加護大)、踊り神(加護大)
【職 業】 歌帝
【レベル】 80
【体 力】 5293+20000(加護大×2)+12000(真喝采)
【魔 力】 5293+20000+12000
【霊 力】 37293
【攻撃力】 2726+20000+12000
【耐久力】 2404+20000+12000
【素早さ】 2582+20000+12000
【知 力】 5738+20000+12000
【幸 運】 5738+20000+12000
【神 技】 天翔乱舞〈4〉、高吟放歌〈4〉
【スキル】 歌帝〈7〉、真応援〈7〉、真行進曲〈7〉、真鎮魂歌〈7〉、真幻影舞〈7〉、真喝采〈2〉、人魚之歌姫〈5〉、魅惑之唄〈4〉、扇子術〈7〉、歌唱〈7〉、魅了〈7〉、神技発動
・装備
【武器】楽姫之扇子:体力20000、魔力20000、攻撃力20000、幸運10%増
【鎧】踊姫之衣:耐久力30000、魔力10000、幸運10%増、魅了10%増
【指輪①】幸運5000、幸運5000
【指輪②】魔力5000、魔力5000
【腕輪①】魔力回復1%、魔力5000、魔力5000、幸運5000
【腕輪②】魔力回復1%、魔力5000、魔力5000、幸運5000
【首飾り】幸運3000、幸運3000
【腰帯】水属性耐性、魔力10000
【耳飾り①】魔法攻撃ダメージ10%増、魔力2000、知力2000
【耳飾り②】魔力1000、魔力1000
【足輪①】魔力5000、幸運5000、回避率10%増
【足輪②】魔力5000、幸運5000、回避率10%増
(神の加護、神技、神器を全部2つずつ手に入れた件について。これが終わったらメルルたちに合流させて、レベルカンストさせないとな)
召喚獣の枠にも限界があるため、アレンはロザリナが何をやっているのか詳細は知らない。
どんな試練を越えたのか知らないがとんでもないパワーアップを見せている。
ロザリナの全身から溢れる自信に満ちた態度に、ギランが警戒しながら見つめている。
ただし、亜神級の霊獣と戦っていたわけではないようで、レベルは80しかない。
レベル99のカンストまで上げて、スキルについても、さらなる強化が必要だ。
24時間耐久攻略の大地の迷宮RTAに参加させたら、すぐに上がるだろう。
試練を越えて新たな力を手に入れたロザリナと共に、シアの挑戦が始まるのであった。