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【アニメ化】ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~【2026年1月放送】  作者: ハム男
第11章 神界編②原獣の園と大地の神ガイアの迷宮

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第611話 ギランの試練②レームシール王国

 アレンたちは幻鳥レームが神になれない理由を探るため、信仰している者たちの元へ向かうことにする。


 それは鳥人国家レームシール王国だ。


 鳥人国家レームシール王国は中央大陸南西にある巨大な大陸であるガルレシア大陸の西の端の方にある。

 もっとも有名な国はシアの故郷のアルバハル獣王国だ。

 最西端は竜神の里マグラで、レームシール王国はその隣国だ。


 ガルレシア大陸には獣人以外にも鳥人や竜人など多種多様な種族が国や里を築いて暮らしている。


 神界にあるボアソの街の側にある審判の門には巣が設置してある。

 そこから竜神の里の神殿内へ移動し、さらにクワトロに乗って、レームシール王国を目指すことにする。

 こうやって転移先や中継地点を活用して最短距離で目的地を目指していると、前世のゲームを思い出す。

 今日は朝から幻鳥レームに会ってから、レームシール王国を目指しただけなので、まだ昼前だ。


(おっと、その前に)


 アレンがやってきたのは、竜王の台座もある神殿の中心だ。

 竜王を祀る竜人の神官たちが、ワラワラとアレンたちに向かってやってくる。


「これはアレン様、神界での修行お疲れ様です」


「ありがとうございます。レームシール王国に用事があって、人間世界に戻ってまいりました」


「ほう。では、アレン様が伺う旨、王国へ連絡したらよろしいのですかな」


「そうしていただけると助かります。夕方前には王城に到着するとウーロン国王陛下にお伝えください」


 竜人の神官たちは話が早くて助かる。

 RTAでもやっているのかと思われるくらい、いつもせかせかとアレンが地上に戻る際、竜人の里の神官たちと接しているため、彼らも順応してくれたようだ。


 この神殿にはアレン軍の兵たちも待機させているので、何かあれば指示してもよいと伝えてある。


「畏まりました。私たち竜人はアレン様の目標こそが、求めるべき神道であると信じております」


 竜王マティルドーラもアレンたちの仲間になり、竜神の里の竜人たちはかなり協力的だ。

 アレンは竜人たちに礼を言って、天井まで数百メートルはある神殿内でクワトロを召喚する。


「すまないな。クワトロ、せっかくのレームシール王国だからな」


『いえいえ、気にする必要はありません』


 金色の羽で全身が覆われた白鳥のようなフォルムは見ていて美しい。

 アレンたち3人はクワトロの背中に這いつくばるように乗り込んでいく。


「なんか景色が変わってきたわ。って、何もないわね」


 大小の山々が前後左右、はるか先まで無数の山脈を連ねている。

 山脈はそれぞれかなり急勾配で、傾斜は60度を超えており、このような環境に人が住む場所などあるのかとセシルは思ったようだ。

 山々を見ていると、人が住めるような平地は少なく、人里や橋などの人工物は確認できない。


「いや、たしか。レームシールは狭谷の中に街があるはずだ」


「谷間ってこと?」


「そういうことだ。クワトロ、谷間を縫うように移動してくれ」


『畏まりましたわ』


 相変わらず丁寧な口調のクワトロは翼の傾きを変え、高度を下げ、山々の谷間へ入っていく。

 全長30メートル、金色の美しい羽根を広げると100メートルにもなるのだが、谷間の間は狭い場所でも数百メートルもあるので、羽を痛めることはない。


 アレンたちが高度を下げ、狭谷の間を滑空する。

 谷間ということもあり、上昇気流が生まれ、羽ばたかなくてもこれだけの巨躯で滑空することができる。


「まあ、山の中に街がありますわ!」


 ソフィーは目を輝かせる。

 アレンたちが見たのは厳しい山の傾斜の中をくり抜くように作られた鳥人たちの街だ。


 鳥人たちは山の傾斜の岩盤をくり抜いて、居住用スペースを作っていた。


「む? 手を振っているな」


 鳥Eの召喚獣を使って、街の様子を見ていると、鳥人はどうやら視力が良いようだ。

 かなり離れているのだが、肩車をする親子の鳥人の子供が、アレンたちに気付いて手を振っている。


 アレンは小さく手を振り返しながら、街の風景を見る。


 街の手前には上下にかなりの高さのある鉄格子で、等間隔に伸びている。

 幅は10メートルほどだろうか、きっと大型で高ランクの魔獣が鳥人たちの住処に入ってこないようにするための工夫だろう。


 まるで鳥かごのようだ。


 また、山峡の中にある街とあって、地形的に風が強く、風車があちこちでぐるぐると回っている。

 きっと吹き付ける風の力を使って、水路の水を流したり、穀物の脱穀などをしているのだろう。

 新鮮な空気を風の向きを調整して、くり抜いた街の奥の方まで届ける工夫も随所に見える。


 街の中央には、ずんぐりむっくりとしたひよこの姿をした大きなクワトロの像がチラリと見えた。

 鳥人たちが羽毛の生えた手を合わせ、祈っているようだ。


(鳥人たちも信心深いと)


 だったらなんで幻鳥レームが神になれないのか分からない。


「ふむふむ、レームシールの一般的な街だとこんな感じか」


 アレンは魔導書から地図を出す。

 こんなこともあろうかと、アレン軍に以前から指示を出して、各国や大陸の地図をたくさん持っている。

 今回はレームシール王国の主要な街を移動しながら、国の状況を観察し、最終的には王都を目指す。


 大小様々な切り立った山や崖の中に作られた街々を見る。

 鳥Eの召喚獣の視界ごしに、細かいところまで見ているのだが、最初に見た街とそこまで代わり映えがない。


「外から見ていても分からないわ」


 セシルの感想は最もなことだと思われる。


「確かにその通りだな。そろそろ王都へ到着しそうだ。あとは王家と話をしようか」


 アレンは地図と見比べながら大きな山を指差した。


 山脈を迷路のように縫って進んだ先にはこれまで以上に大きな山脈があり、切り立ったように巨大な山の斜面が大きく削れ、岩盤がくり抜かれている。


 ここはレームシール王国の王都フリーデルである。


 クワトロが翼をはためかせ、体の向きを変え王都へ向かう。

 王都がすっぽりと入った山は1万メートルに達しそうなほどの標高に、1キロメートルほどの高さ、奥行きは数十キロにもなろう大穴が開いている。


 しかし、最初の街と同様に、巨大な鉄格子のようなものがクワトロの行く手を阻むため、一旦召喚獣をしまって、再召喚する。


 優雅に飛ぶクワトロを、王都の鳥人たちは指を差したり、祈りを捧げたりしながら、思い思いに受け入れられる。


 王都の中央には王城があり、アレンたちは、ゆっくりと着地をした。


(結構騒がせてしまったが、敵対的な感じではないな)


 兵たちがすでに何人も王城から出ているのだが、弓や槍を向ける鳥人の兵たちは1人もいない。

 どうやら、通信の魔導具を使って、竜人の里の神官たちから既に、アレンたちの来訪が伝わっているようだ。


 その中でも、ヒョロヒョロとした出で立ちで、豪華な服を着た鳥人がアレンたちの元へやってくる。


「これはこれは、クワトロ様と共にやってきていただき、ありがとうございます。私はこの国で宰相を務めるカラサギ……、おお、美しい……。なんというお姿だ!」

 

 鷺面サギツラの宰相はアレンたち3人よりも、その後ろにいる金色に輝くクワトロに目が行く。


「ちょっと、皆、クワトロを見て集まってきてるわよ」


「ああ、そうだな。もう十分だろう。クワトロありがとうな」


『いえいえ。久しぶりにレームシールに戻れてうれしかったわ』


 場内から騎士や兵どころか貴族や役人まで出てくる状況に、アレンはようやくクワトロをしまった。

 まるで、自らがクワトロの使いであるとも言わんばかりの態度に、セシルが「また始まったわ」と軽くため息をつく。


「それで、急遽、国王陛下に謁見されたいと聞いていますが?」


 何か用事があったかなと宰相は首を180度傾ける。


「はい! 実はレーム様が神界で大変なことになっているのです。ぜひ、至急、ウーロン国王陛下にお目通りを願い出来ないでしょうか!!」


「な!? なんと、真かの!!」


「はい、聖鳥クワトロ様に賭けて、嘘偽りがございません!」


 アレンは迫真の表情で言い切った。


(セシル、ソフィー、もっと緊張感をもって対応しろ。出だしを誤るととんでもなく待たされるからな)


 ソフィーとセシルが苦笑いを浮かべており、アレンの冗談みたいな態度についていけない。


「そうか。では、応接室に案内しましょう。どうぞこちらへ」


 王国ナンバー2と思われる宰相自ら応接室に案内してくれる。

 魔王軍と戦うアレンが、この世界のためにやっていることが、だんだん浸透していっているようだ。

 特に細かい話をこの場で聞くこともなく案内してくれるようだ。


 宰相が正面の大きな階段を上がり2階を目指す。


(ふむ、応接室は入り口付近ではなく、随分奥の方にあるのか。ん?)


 2階の階段を上がった先は壁となっており、左右に道が伸びている。

 アレンは正面の壁に飾った縦横5メートルはあろう巨大な絵に目がいく。


 背後には黄色の両方の羽を天まで掲げたクワトロがおり、その前に6人ほどの若い男女がいた。

 風貌から人族、ドワーフ、ダークエルフ、獣人などで構成された冒険者パーティーと思われる。


 正面に立つ男は両手で、自らと同じくらいのサイズの巨大で虹色に輝く卵を掲げている。


「まあ、素晴らしい絵ですわ」


「本当ね。これは英雄像かしら」


 あまりの絵にソフィーもセシルも息を飲んだ。


「はは、これはクワトロ様とSランク冒険者パーティー『威風凛々』の皆様でございます」


「へ~」


 3人の態度にカラサギ宰相はどこか自慢げだ


 アレンも宰相カラサギの話が気になった。

 急いでいたのだが、足を止めて話を聞くことにした。


「今から60年以上前のことでございます。アルバヘロンレジェンドが虹色の卵を産みました。それが、我が国で起きた不幸の始まりでございます」


 アレンたちが生まれるはるか昔、既に魔王軍の侵攻も始まったころ、レームシール王国では一大事が起きた。

 アルバヘロンレジェンドが1000年に一度の虹色の卵を産む産卵期を迎えた。


 アルバヘロンレジェンドはEランクからSランクまでの全てのアルバヘロンの生みの親だ。

 ランクが低いほどたくさん産み、その間隔はとても短い。


 ただのアルバヘロンなら毎日100個は卵を産むらしい。

 レジェンドにもなると1000年に一度、虹色の卵を産むと言う。


(ガチャガチャみたいなものか。卵の色や形によって、出てくるランクが変わるとかそういう話か)


 産卵期を迎えたアルバヘロンレジェンドのために、先に生まれた子供たちのアルバヘロンは多くの餌を求める。

 アルバヘロンの襲撃によって大陸全土に渡って、鳥人だけでなく獣人など多大な被害がでたという。


 特にひどいのは虹色に輝く卵を産んだ時で、もっともアルバヘロンの活動が活発になるのだとか。


 この時、当時の冒険者パーティー「威風凛々」が立ち上がり、レームシール王国を救った話をカラサギ宰相はするのであった。

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ヘルモード12巻
発売日:2025年10月16日
ISBN:978-4803021981

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― 新着の感想 ―
アルバヘロン懐かしすぎる
[気になる点] 地上だと霊力が回復しないなら創生スキル上げできましたっけ? 腕輪は機能するから大丈夫ってことかな?
[良い点] あー、追いついてしまった!続きが気になりすぎる!
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