第582話 大地の迷宮RTA⑥
アレンたちは5時間ほどかけて、10階に行くことができた。
目の前で激戦の末倒した鍵部屋にいた霊獣は、霊晶石だけを残して光る泡となって消える。
『霊獣を1体倒しました。信仰値10億を取得しました。霊力1億を取得しました。神力1億を取得しました。転職ポイント10ポイントを取得しました。レベルが224になりました。体力が275上がりました。魔力が440上がりました。攻撃力が154上がりました。耐久力が154上がりました。素早さが284上がりました。知力が440上がりました。幸運が286上がりました』
「うしうし。信仰値が10億ポイントも貯まったし、霊晶石もこれで6個目だ」
「すごい! 今までで一番早い! 10階層の霊獣倒したのにまだこんなに時間がある!」
メルルがタムタムの中で嬉しそうだ。
「ロゼッタさんが3回も落とし穴見つけてくれたからな」
「ふふ、アレン。もっと褒めていいのよ」
ひたすら下の階層を目指すダンジョンのため、ロゼッタの罠探知のスキルはかなり有用だ。
神界闘技場から大地の迷宮に連れてきて正解だったと思う。
「アレン様の新たな召喚獣たちもすごかったですわ。お陰で霊力の節約になりましたわ」
(さすが魚系統のバフは偉大だったか)
・魚Eの召喚獣のステータスとスキルと覚醒スキル
【種 類】 魚
【ランク】 E
【名 前】 シラヤキ
【体 力】 30
【霊 力】 50
【攻撃力】 25
【耐久力】 50
【素早さ】 30
【知 力】 50
【幸 運】 35
【加 護】 魔力10、知力10
【特 技】 ヌメリ
【覚 醒】 ウマキ
【魚Eの召喚獣の見た目】
・ウナギ
・全長1メートル
・黒くヌルヌルしている
・滋養強壮に良い
【特技「ヌメリ」の効果】
・火系統の攻撃耐性(中)
・回避率上昇(中)
・発動範囲は半径1キロメートル
・効果は24時間
・クールタイムはなし
【覚醒スキル「ウマキ」の効果】
・消費霊力3割減
・スキル発動時間3割減(※霊力消費に限る)
・スキル経験値3割減
・発動範囲は半径1キロメートル
・効果は1時間
・クールタイムはなし
アレンは新たに創生で召喚できるようになった魚Eの召喚獣を、10階層にいる亜神級の霊獣相手に実験的に使用したら、ソフィーに褒められた。
亜神級の霊獣はアレンやドゴラ、タムタムに乗ったメルル、大精霊に守られているソフィーやルークだと、一撃で即死することはないのだが、それ以外の参加者では命に係わる危険な戦いとなる。
今回、新たに創生することができるようになった魚Eの召喚獣を活用してみたのだが、ボス戦では使えるなと分析する。
回避率を上昇も良いが、火系統の攻撃に耐性が上がるのはすごく助かる。
魔獣や霊獣たちは、色々な属性の攻撃をしてくるのだが、ドラゴンを筆頭に火を吐いてきたり、火魔法を使ってくる敵は多い。
火耐性の防御は大変有用だと言える。
消費霊力を抑えてくれるのもボス戦で助かる。
ただし、スキル経験値も3割減ってしまうため、スキル経験値稼ぎでは不向きなデメリットもあるので、状況で使い分ける必要がある。
仲間たちと共に宝箱を開けていたら、ドゴラのいる方向から歓喜の声が響いた。
『やった。ようやく、神力が戻った! わらわは戻ったのじゃ!!』
聞き覚えのある声は、ドゴラが背負うむき身の大斧になった神器カグツチ越しに語り掛ける、火の神フレイヤの声だ。
「フレイヤ様、いかがされたのですか?」
『お前たちが霊獣たちを狩ったお陰で、わらわの神力が戻ったのじゃ。むん!』
「むん、ってあちいぞ。ん? 力が沸いてくるな」
ドゴラの神器カグツチの刀身が真っ赤に輝きだした。
本来であれば、鉄すら溶かす数千度になっているのだが、ドゴラは火攻撃吸収の加護もちだ。
それでも熱かったようだが、それ以上に自らのステータスの変化を感じていた。
「お? ドゴラのステータスが一気に上がってるぞ。神器の威力も増しているな」
ドゴラのステータスを魔導書で確認する。
【名 前】 ドゴラ
【年 齢】 16
【加 護】 火の神(加護特大)、火攻撃吸収
【職 業】 破壊王
【レベル】 99
【体 力】 8729+30000(加護)+9600(真闘魂)
【魔 力】 4007+30000+4800
【霊 力】 38807
【攻撃力】 8988+30000+9600
【耐久力】 8235+30000+9600
【素早さ】 6213+30000+9600
【知 力】 3845+30000+4800
【幸 運】 6028+30000+9600
【神 技】 爆炎撃〈7〉
【スキル】 破壊王〈8〉、真渾身〈8〉、真爆撃破〈8〉、真無双斬〈8〉、真殺戮撃〈8〉、全身全霊〈8〉、真闘魂〈2〉、戦破陣〈7〉、修羅双連撃〈6〉、斧術〈8〉、双斧術〈7〉、盾術〈4〉、神技発動
・スキルレベル
【武器①】神器カグツチ:攻撃力30000、体力10000、クリティカル率30%増
【武器②】オリハルコンの大斧:攻撃力12000、攻撃力6000
【鎧】アダマンタイトの鎧:耐久力12000、耐久力6000
【指輪①】攻撃力5000、攻撃力5000
【指輪②】攻撃力5000、攻撃力5000
【首飾り】攻撃力3000、攻撃力3000
【耳飾り①】物理攻撃ダメージ7パーセント、体力2000
【耳飾り②】物理攻撃ダメージ10パーセント、体力2000、攻撃力2000
【腰帯】水防御耐性、体力10000
【足輪①】素早さ5000、回避率10%増
【足輪②】素早さ5000、回避率10%増
加護が1万から3万に増えている。
神器カグツチの威力も最初手にした頃より威力を増している。
魔法神イシリス製のオリハルコンの斧よりもはるかに攻撃力が高くなった。
「お? そうか、じゃあバスクの野郎をボコボコにできるぜ」
ドゴラは力が増したことにニヤリと笑う。
(ドゴラは、踊り神の神域でサボってスキルを鍛えていたようだな。この1ヶ月でスキルレベルが上がっているぞ。それにしても、神力が着実に回復していったのか)
アレンはあることを思い出して
「フレイヤ様、神力の回復おめでとうございます」
『うむ、そなたらのおかげじゃな』
「いえいえ、火の神の御力が戻られる日を願っておりましたので。ドゴラにお力まで頂き感謝の言葉もありません」
流れるように嘘をつく。
『ま、まあ、そうなのじゃが。これ以上は厳しいぞ!』
(おっと、いつもドゴラの側にいたからな。俺の事、警戒されたか)
アレンの言動をよく分かっているようだ。
「これ以上とは何のことでしょう?」
『とぼけるでない。アレンよ、そなたのことじゃ。もっと加護を寄こせと言いたいのじゃろう。
「たしかに。これ以上は厳しいのですか?」
神の加護の限界を知っておきたい。
『当然じゃ。これでも、随分力を与えておる。これ以上の力を求めるなら代償が必要じゃな。人間を止めてもらうことになる』
「マクリスのようにってことですか?」
ドゴラは火の神フレイヤの使徒だが、さらに契約が進み「眷属」になることも可能だ。
『そういうことじゃ。人として生きたくないなら別じゃが』
「人間やめねえといけねえのか。そりゃ、つれえな」
ドゴラは、軽く武者震いをした。
まだ人間はやめたくないようだ。
『そういうことじゃ。分相応に生きるのじゃよ』
これでも人が手にするには分不相応な加護は与えたと言う。
ドゴラが納得しかけたが、アレンにはまだ交渉の余地があると、さらに悪い顔をする。
「しかし、加護は分かりましたが、神技は1つだけだと……。他の方は2つ貰っているのに、火の神フレイヤ様は器量が狭いと……」
『技を寄こせと言うのか!』
「いえ、火の神フレイヤ様の御力を世界に示すには相応のお代を支払っていただきたいと……」
ソフィーもルークもフォルマールも複数の神技を持っている。
『お主も言うようになったの。だが、今加護を与えたばかりじゃ。欲しいならあと5体は同じ奴を倒してもらうぞ』
「ドゴラ、そういうことだ」
「問題ねえよ。アレン、ありがとな」
「ああ、パーティーの前衛は強くないといけないからな」
「違いねえ。俺はもっと強くなるぞ」
活躍の場が薄くなっていくことに不安を覚えていたドゴラは、助かったと礼を言う。
(ふう、これで霊力回復リングの「ついで」にドゴラも強化できると。あとはキールだな。結構な初期メンバーだが、強化の方法が思い浮かばないぞ。薬神の下で修行させるか。薬師じゃないけど)
ポンッ
アレンの思考を読んでいたのか、いきなり魔導書が開いた。
『拝啓アレン様
日頃より、この世界を堪能していただいてありがとうございます。
さて、早速ですが、創造神エルメア様より、修行の許可が下りました。
つきましては、回復職への特別な試練を与えたいと考えております。
なお、前衛と併せて2名1組での参加宜しくお願いします。
薬の苗床スタッフ一同、挑戦者をお待ちしております。
薬神ポーション』
「ちょっと、これってキールのことよね」
「ああ、羅神くじをキールが引いた時から、既にエルメアは動いていたってことだな」
(俺たちの行動を予見して、武神を寄こしてきたりしたしな)
「エルメア様ね。でも助かったわ。キールだけ、置いてけぼりになるところだったわ」
「おい、俺だけって、セシルもまだだろ」
「私は、決まったようなものよ」
セシルはエクストラモードを獲得できると断言した。
「でもアレン様、どうするのでしょう? 前衛が必要とありますが」
「もちろんドゴラだろ。神技を手に入れたら、キールの修行を手伝ってくれ」
(前衛前提なら戦いながらの修行か。まあ、回復職が1人でいてもしょうがないからな。回復が間に合わなかったらドゴラが死ぬとかそういうやつかな)
回復職は殴られる者がいてこそ、修行になるのは前世のゲームの時代から変わらないなとアレンは思う。
「よし、方針も決まったことだし、ガンガン下に降りるぞ」
アレンは10階層以降も、ガンガン下に降りていく。
ロゼッタの落とし穴発見は本当に助かる。
30階層に到着した。
(よし、今回はロゼッタさんがいるからな)
「この階層ね。私にエクストラスキル使ってほしいってのは」
「そうです。って、いましたね」
『ピキーッ』
ネズミがカギを背負って、アレンたちの前にまたもや現れた。
音速を超える圧倒的な速度で逃げ、挑発するように一定の距離を保つ。
30階層には、鍵部屋があり、鍵を背負う霊獣がいる。
ロゼッタは素早さ特化の装備に指輪、腕輪、首飾りを変更する。
「じゃあ、行くわよ」
『ピキ! ピキッ!』
ゆっくりと遠くで手を向けたロゼッタに霊獣はピョンピョン飛んで挑発する。
セシルが魔法で攻撃しても、着弾点から高速で移動し、攻撃魔法では捕捉できない速度がある。
ロゼッタの体が陽炎のように揺らいでいく。
「ローバーハンズ!!」
チャリン!
『ピキッパ!?』
遠くの物を奪い取るように振るうと、小銭が袋の中で跳ねたような音がする。
霊獣は自らの背中が軽くなる違和感に気付いたようだ。
「ふふ、私って役に立ち過ぎじゃない?」
ニヤリと笑うロゼッタの手の中には霊獣が背負っていた鍵が収まっていたのであった。