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【アニメ化】ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~【2026年1月放送】  作者: ハム男
第9章 竜王マティルドーラと審判の門

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第494話 開かれた世界

 クレナたちは勝利し、竜王は力なく崩れ落ちている。


『メガデス様と契約を交わしてまで、この日を待っていたというのに……』


「……マティル。ああ、そうだ。酷い怪我だ。癒さないと」


 アステルは竜王の思いを知る。

 竜王は自らの乗り手であるアステルの蘇生のために、この日を待っていたようだ。

 目的が達成できず、悔やむ竜王の体は致命傷と言ってもよいほどのボロボロの状態だ。


『む? 神官共を神殿の外に待たせてある』


 竜種は生命力が強いようだ。

 かなりの深手に見えるが、死にそうな状態ではない。


「いいよ、私が持ってるので治してあげる」


 クレナは魔導具袋から天の恵みを取り出した。

 竜王に使ってあげると、見る間に竜王の傷も、全員の怪我も含めて跡形もなく治ってしまった。


 骨が皮膚から突き出た部分も、広げることができなくなった翼も、食いちぎられた尾も元通りになる。


『ぬう、素晴らしい回復薬だ……』


 体力が回復して、竜王は改めて自らの敗北を悟っているようだ。


 そこにアレンたちが転移してやってきて、クレナの下に駆けつける。

 何かあった時のために、既に神殿内に鳥Aの召喚獣の「巣」を設置してあった。


「クレナ、良くやったぞ。完勝だ」


 アレンは念を押すため、竜王にもよく聞こえるようにクレナが勝利だと口にする。

 竜王は黙っており何も言ってこないようだ。


「ありがと。でも、ハバラクさんたちが作ってくれた剣も防具も壊れちゃった」


 大剣の半分のところで折れている。


「そうだな。オリハルコンでも砕けることがあるってことだな。神界に行って、もっといい武器がないか探さないとな」


 魔王と戦うため、S級ダンジョンでオリハルコンの武器や防具を追い求めた。

 試しの門でもオリハルコンが手に入り、転職ダンジョンのお陰でオリハルコンの武器や防具を造れる職人も増えてきた。


 しかし、真の強敵が使う渾身の一撃にオリハルコンは耐えられないことがある。

 神界に武器や防具があるのか知らないが、ドゴラは神器カグツチを使っている。

 神界で、最強の武器や防具を探してみる価値はありそうだ。


「うん」


 アレンの言葉にクレナは、明るさを取り戻して返事をした。


『ギュウウン』


 クレナの後ろで、ハクが項垂れている。

 悪戯が主人に見つかった飼い犬に似ている。


「ハク、怒ってないよ。助けてくれてありがとう」


 死にかけた中、ハクが身を挺して守ってくれたとクレナは感謝する。


『ギャウ!!』


 クレナはハクの鼻先を撫でると、ハクは先ほどの事を忘れたかのようにパッと元気を取り戻す。


(使う可能性をつぶさないために、クールタイムが終わるのを待っていたし)


 アレンはハクに覚醒スキルの有用性を確認した。

 S級ダンジョン最下層ボスのゴルディノ相手に試したのだが、成体となったハクのあまりの強さに一方的な戦いとなった。

 自我を失い暴走し、ハクのみでゴルディノを最終形態まで倒しきった。


 クレナはあまりの惨状に見かねて、覚醒スキル「竜の魂」は使わない方がいいと考えた。

 コントロールが効かず暴走するスキルは使わないに限るというのはアレンも同感だ。


 しかし、アレンは竜王に確実に勝利するためクールタイムが終わるのを待って戦いに臨むようにした。

 この覚醒スキル「竜の魂」の発動から丸一日経ち、ハクに尋ねても使えないと言う。

 どうやらクールタイムは1日ではないらしい。


 レベル上げも終わっていないので、レベルを上げながらもハクに確認すると、前回使用から10日目にして、『つかえる!!』と言ってきた。

 どうやらマクリスの覚醒スキル「聖珠生成」と同じく、クールタイムは10日のようだ。


 エクストラスキルも覚醒スキルも、クールタイムが長くなればなるほど、その効果は絶大になる。


(ひどいことをしたもんだな)


 竜王が3000年前に契約した神界に行く条件はかなり厳しいものだったとアレンは考える。


 自分の考えを見透かすようにアステルは苦笑いをしてため息をついている。

 どうやらアレンの考えに同感のようだ。


「メガデス様にやられたと言っていたけど、なんか強かったんじゃない」


 セシルが半壊した神殿にため息をつきながら、勝てて良かったという。


「たしかに、恐らく神技はエクストラモードで成長するんだろう」


 成体になって暴れるハクの力は論外の強さだったとしても、竜王とアステルは間違いなく強者だった。

 厳しい場面もあり、絶対にクレナとハクが勝利する条件だったかと言えばそうではなかった。


 アレンはこの強さについて仮説を立て終わっている。


 恐らくだが、アステルも竜王もエクストラモード相当の強さを持っている。

 アステルと竜王が見つけた神技はスキルレベルがあり、エクストラモードだと成長する。

 ドゴラのスキル「全身全霊」やクレナのスキル「限界突破」と同じ仕様だ。


(神技は成長すると。これはふむふむ)


 神技「魔法使いの神技」も「魔法具使いの神技」もセシルやカサゴマがエクストラモードなら成長し、今以上の効果を発揮する可能性が出てきた。


 メガデスの戦いに敗れたアステルとは違い、竜王は3000年という悠久の時を過ごしてきた。

 その間もスキルレベル上げに努めてきたというなら、あの強さは説明がつく。


「竜王様!!」


 アレンが自らの仮説について考えていると、ようやく竜王に仕える神官や神兵の竜人たちがやってくる。

 神殿の中で広がる激しい音がなくなり、アレンたちもいなくなったので、慌ててやってきたようだ。

 竜王の周りを心配そうに竜人たちが集まってくる。


『うむ、終わったぞ』

 

「で、では?」


 高位と思われる神官が戦いの結果を竜王に尋ねる。


『我の負けだ。神界には行けなかったぞ』


「いえ、竜王様、御無事でなによりでございます」


『……そうか。そうだな』


 竜人たちが願ったものは竜王とは違ったようだ。

 一様の安堵の表情に、竜王はこれ以上何も言えない。

 アステルは、その様子にどこか満足そうな表情を浮かべていた。


 パタパタパタ


 離れたところにずっといたメガデスがアレンたちの下にやってきた。


『最後の戦いお疲れ様でした』


「厳しい戦いでした。これは、報酬が期待できます」


 今回の戦いも門番であり、越えねばならぬ試練であったと言う。


『もう、念を押さなくてもあげるよ。ほほい』


 メガデスが虹色の羽をパタパタと中空で動かすと、光がクレナとハクに移っていく。


 パア


「おお、また転職だ!!」


『ギャウ!!』


 光に包まれるクレナとハクが声を漏らす。


(む? ハクが神に一歩近づいた件について)


 クレナは星4つの竜騎王から星5つの竜騎帝になった。

 ハクは次元竜から亜神竜になった。

 レベルはクレナもハクも1に戻り、ステータスは半分引き継がれた。


『神界にようやく行けるのだな』


「そうだなって、ムートン! おい、ひっぱるなよ。髪が痛いって!!」


 大精霊ムートンがあまりの興奮で揺れ、ルークの頭をスライムボディの体が巻き込んでしまっている。


『そうだね。早速だけど、審判の門を開こう。証を全て出して』


「どうぞ!」


 クレナは魔道具袋から3つの試しの門の門番を倒し手に入れた証を出した。

 『牙の証』『爪の証』『鱗の証』は光を帯びて宙に浮き、アレンの手元から審判の門に向かっていく。


 審判の門に描かれた竜の絵の牙、爪、鱗の部分に吸い込まれていく。


 ゴゴゴゴッ


 竜の絵を2つに割るように観音開きに大きな審判の門が開いていく。


「お、おおおおおお!!」


 クレナが思わず声を出す。


「大地が白い靄になっているわね、ここが神界かしら」


 セシルが審判の門の先に見える風景を見ながら口にする。

 

「雲の上ということかしら」


「そういうことだろうな。神界は雲の上に浮く大小の島や大陸で出来ているっていうしな」


(神殿も浮いているらしい)


 アレンはソフィーの予想で正解だと言う。


「なんか、こんなに日の光を間近で見るのもすごいな」


 日の光が挨拶するかのように、大地の上で見るよりもでかでかと見えるとキールは言う。


 仲間たちが感動する中、この世界にいる時間の終わりがやってきた者がいた。

 アステルも一緒になって、竜王と一緒に目指して叶わなかった神界の景色を見ている。


「そうか、ここが神界か。マティルと冒険してみたかったね。おや?」


 アステルの体からシャボン玉を膨らませたように光が溢れ、飛び出ていく。


『アステルよ……』


「もう時間のようだ。マティルよ、制約はもうないのだろう。これから先は自由に生きてくれ。いつか、世界で見たことを俺に教えてくれ」


 1日でも長く生きてくれと竜王に乗って旅を続けてきた英雄アステルは笑顔で口にした。

 竜王は両手をわなわなと震わせる中、アステルは光る泡となって消えていった。

 竜王は涙しながら、アステルがいた先を見たまま動かなくなった。


 一瞬の沈黙が神殿に広がる中、アレンは口を開く。


「……さて、神界に行くか」


「ええ、そうね。そのために頑張ったんだから」


 セシルは涙を流す竜王に同情してしまう。


(準備は整ったか?)


 アレンはここにはいないメルスに状況の確認をする。


『全て問題ない。もう少し場所を開けてくれ』


 アレンの視界を共有するメルスがもう少しスペースを開けるように言う。


「すみません、神界に行く仲間たちがこの場に移動できません。ちょっと、どいていただけませんか」


「ぬ? 来れないですか?」


 高位の神官にもう少しどくようにアレンが言うので、少し横に移動した。

 

「いえ、もう少し移動してください。この辺に神官や神兵さん方は集まっていただけませんか? 申し訳ありません」


 何を言っているのか神官も神兵は分からない。

 感傷に浸っていた竜王もメガデスも同じだ。


 アレンの言うがままに、神官と神兵たちは端に固まり、観音開きに開いた審判の門の前に大きなスペースが開く。


「よし、こんなもんでいいだろ。せっかくなんで仲間たち全員で神界に行きたいからな」


『仲間……? これから仲間がやってくるの?』


「ええ、そうです。メガデス様、私たちだけでこの感動を味わうのはもったいないですからね。仲間と共に神界を目指します」


『仲間ね……』


 なんとなくメガデスは神界に行くのはここに集まるアレンたちだけではないことを理解する。


(良し、準備できたぞ。飛んできてくれ)


『分かった』


 アレンの言葉と共に、メルスがやってきた。


 しっかりと隊列を組み、鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」を使うのを待っていたようだ。


『な!? ば、馬鹿な! なんだこの人数は!!』


 あまりの光景にメガデスは神殿に響き渡るほどの声で叫んだのであった。

 そこには万を超える軍勢がやってきたのであった。

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ヘルモード12巻
発売日:2025年10月16日
ISBN:978-4803021981

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― 新着の感想 ―
クレナは精霊神との約束で星4つまで行けるんだから、それから3つ上げれば星7つまでいけたのでは… アレン並みになりそう
[気になる点] ハクから伝わるシルドラ(FF5)感 もしそうだったらいつから構想してたのか驚愕のする
[一言] ついに神界侵攻開始か
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