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第360話 軍の受入れ①

 アレンたちはローゼンヘイムの首都フォルテニアにいる。

 エルマール教国における戴冠式を終え、中央大陸での戦争への加勢も終わっている。


 魔王軍の幹部が魔神だったので、倒してアレンのレベルは93になった。


 なお、その足でバウキス帝国が戦っている海上の戦争に向かったが、魔王軍は撤退を決めていた。

 既に魔神もおらず、こちらの魔神は倒し損ねてしまった。


 女王の間ではなく、もっと広い間で、2000人のエルフがアレン軍に加わるために式典を行うと言う。

 儀式や儀礼を重んじており、エルフらしいと思う。


「アレン様。大変お待たせしました。只今より、出発式及び着任式を行います」


 儀式の会場にやってきたエルフの女王がアレンに話しかける。

 これから始まる式典の前に一言挨拶をしようと思ったようだ。


 女王のアレンに対する態度が目下急上昇中だ。

 何か距離がすごく近くなった気がするのは、どうも浮いた島である「ヘビーユーザー島」を手に入れたからだろう。

 精霊神が精霊王であったころからの先見が正しかったことになる。

 世界を救う「闇を払う光の者」認定を改めて貰った形になった。


 2000人の星2つの才能のある者たちを、戦争が終わったすぐの状況で貸してもらえる。

 戦争の被害が今回はずいぶん少なかったと聞いているが、それでも数千人の兵が死んでいる。


 期限は無期限で、生死を分ける作戦も含めて、アレンに任せると女王から言われた。

 2000人のエルフの直接の指揮はルキドラール大将軍が行うことになっている。


 アレン軍の活動が何年にも長期化する可能性もある。

 どうしても家族と別れられないというエルフは、家族もヘビーユーザー島に引っ越して良いとも伝えてある。

 希望者が数千人に達しても大丈夫だが、この島は魔王軍との戦いで最前線をいくことになる。


「申し訳ございません。このような状況で優秀な才能のある者を2000人もお貸しいただいて。皆さんの覚悟は確認いただけたでしょうか?」


 女王に行けと言われたらエルフたちは断らないだろうが、しっかり参加の意思を確認してほしいと思う。


「もちろんです。私たちは本来、死の概念が違います。それで、まもなく、え!? あ、ああ、そんなことが……」


 エルフたちにとって、死とは世界樹の木の根元に還ることを意味するという。

 だから、そもそも世界樹を、そして世界樹の精霊である精霊神ローゼンを祀る女王を守るためなら命など惜しくはないという考えが根底にある。


 その精霊神と共にいる次期女王と呼び声高いソフィーが「闇を払う光の男」と共にいる。

 断る理由は誰もないと言いかけたところだった。


「え!? どうされました!!」


 エルフの女王が何かを発見し、ワナワナと震え出し膝から崩れ落ちた。

 慌てて、女王に仕えるエルフたちが駆け寄ってくる。

 

 見つめる先はアレンではなく、その後ろにいる仲間たちだ。


「な、なんでもありません。あ、あの、私の娘に何か粗相がありましたでしょうか?」


「え? 粗相? ソフィーがですか?」


 そんなのあるはずないので、大変助かっていることを伝える。

 今回、アレン軍を考えてくれたのもソフィーだ。


「いえ、何もないなら良いですが……」


 明らかに動揺している。

 そして、その動揺した目でセシルのマクリスの聖珠を改めて見る。

 そのまま視線をスライドさせて、クレナのルバンカの聖珠を見る。

 もしかして見間違えかと思ったが、この輝きは間違いなく聖珠だ。


 ローゼンヘイムの女王は聖珠を持っていない。

 エルフにはその価値を見出せなかったというのが、その理由だ。

 また、プロスティア帝国物語の内容からも、世界を通して王が王妃にプレゼントする文化だ。

 だから、ローゼンヘイムに関わらず、女王制の国ではあまり流行っていないという。

 

 しかし、その価値と意味は知っている。

 セシルとクレナの腕に聖珠がはめられていることに驚愕する。

 ソフィーの腕に聖珠がないことに絶望する。


 バスクから奪ったルバンカの聖珠だが、グシャラとの戦いの後もクレナが装備している。

 ドゴラは一撃必殺キャラのため、普段の戦闘ならクレナの方が優秀だったりする。

 この辺りのバランスを見て、今回はクレナ強化に使うことにした。


 なお、現在はドゴラは既に戦闘に参加できる状態まで体力が回復した。


「あ、あの女王陛下、申し訳ありません」


(ん?)


「いえ、いいのです。式典のあとでお話をしましょう」


 ソフィーは女王が何に気付いたのか分かったようだ。

 深く頭を下げて謝った。

 ソフィーは少し残って女王であり実の母と話があるので、後から来ると言う。

 状況は霊Aの召喚獣に確認させることにする。


 それからほどなくして出発式は終わった。

 2000人の兵や役人などに携わっているエルフたちをアレンは、鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」を使って浮いた島である「ヘビーユーザー島」へ移動する。

 半径1キロメートルの間にいる対象を荷物だろうと人だろうと移動できる場所に転移することができる。

 岩の中とか、土の中とか基礎のしっかりした家は転移できない。

 邪教徒からの救済や、魔神や邪神教教祖討伐など、何かと役に立った。


「何だ、ここは」

「聞いた通り、何もないな」

「何もないどころではない。人が住めるのか」


 ルキドラール大将軍を筆頭に2000人のエルフたちが驚愕する。

 アレンはヘビーユーザー島の外周付近に移動した。

 そこには草木一本も生えておらず、

 ライトユーザーは住むことを許されない厳しい島だ。


「ようこそ、天上の園へ」


 とりあえず、不安になっているエルフたちを安心させるために、アレンはルキドラール大将軍に笑顔で話しかける。

 開拓村主戦力のエルフたちは絶対に逃がさない所存だ。


 この島は前世でいうところの海底火山が噴火して出来立てのような状態だ。

 こぶし大から数メートルの岩がゴロゴロと転がっており、生命の息吹は感じられない。


「「「!?」」」


 このような死の大地を天上の園とは何かの冗談かと息を飲み込んだ。


 元邪神教の信者には、ドゴラのために火の神フレイヤを祈り倒してもらわないといけない。

 ドゴラの強さは火の神フレイヤにどれだけ人々が祈るかにかかっている。

 フレイヤが口走ってしまった天上の園にはこれから精霊魔法を使って、精霊魔法の木、土、水魔法を駆使してもらう。


 戴冠式からまだ何日も経過していない。

 島を開拓している間に、エルマール教国には、ダークエルフの里ファブラーゼ、カルバルナ王国、クレビュール王国の国と里併せて4箇所について、元邪神教で、現在フレイヤ教の信者が受け入れ可能なことを伝えている。


 おおよそ、どれくらいの元邪神教の信者がヘビーユーザー島にやってくるかの見当がつき始めた。

 4箇所合わせて1万5000人前後になると言う。

 クレビュールから魚人が来るなら池を作るなり、島の周りに水を張っても浮いてくれるかなども試さないといけない。


「ようやく来たのか。村はこの辺りでいいのか?」


「シア様、お待たせしています。そうですね。上流から川を作って水を流す予定ですので、そちらに沿う形で村を作りましょう」


 シアと2000人の部隊は既に島の上にいる。

 アレンが連れてくる2000人のエルフを待っていた。


 今回アレン軍にやってもらうことは多岐に渡る予定だ。

 その中で、まずはこの島が人が住めるようにしなくてはいけない。

 1万を超える人数が共同生活をする予定だ。


 獣人部隊はその力をいかんなく発揮して、街作りをしてもらう。

 精霊魔法を使って、木を生やすことが出来ても、木材の加工まではできない。


 街作りの才能のある職人もエルフの2000人の中に入れている。

 獣人部隊には橋や要塞など建築物造りに長けた者たちがいるので、彼らを中心に街を作ってもらう予定だ。


「すまぬが、この島ではアレンよ、お前が長だ。余に敬語は不要だ」


 シア獣王女は言おう言おうと思っていてこのタイミングだと思ったことを口にする。

 正直、もう少し前からソフィーとアレンの関係のように敬語不要にしたかった。

 この機会に敬語を無くそうとシア獣王女は話をする。


 確かにシア獣王女は王族だが、この島はアレンの物ということになっている。

 そして、シア獣王女はこれからアレン率いる「廃ゲーマー」のパーティーに参加予定だ。

 パーティーのリーダーでもあり、島の所有者でもあるアレンが、仲間に敬語を使うのはおかしい。


「そっか。そうだな。シア、よろしく頼むぞ」


「そ、そうだな。あまり敬われていなかったようだな……」


「何かこの感じ覚えがあるわ」


 あまりの言葉使いの変わり身にシアは驚愕する。

 そんなアレンとシアの会話にセシルはどこか既視感があった。

 それは学園で貴族相手も敬語不要と担任が言った矢先のことだ。

 こうして、ヘビーユーザー島の開拓は進んでいくのであった。



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― 新着の感想 ―
いつかアレンが聖獣から聖珠奪い取りそう
[一言] 精霊魔法用の聖珠がなければずっと聖珠無しですよ?
[良い点] ライトのエンジョイ勢ではきつい島とは一体
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