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ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~  作者: ハム男
第6章 邪神教の教祖と火の神フレイヤの神器編
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第353話 エクストラモード

「ルド隊長」

「そ、そんな、起きてください」

「こ、こんなことに。我らの隊長が……」


 シア獣王女の座る横で、目を閉じ冷たくなってしまったルド隊長に部隊と兵たちが人だかりを作っている。


 横になったルド隊長に向けてそれぞれが最後の言葉をかけてあげているようだ。


 そんな獣人たちの会話とは余所にアレンたちはずいぶんと破壊された壁際から、外の景色を見ている。

 荒涼として生き物が住んでいる気配が全くしていないゴツゴツとした岩肌に巨大な丸い岩がめり込んでいる。


 セシルが使ったエクストラスキル「小隕石」だ。

 100メートルを超える小隕石も、縦10キロメートル、横8キロメートルほどのこの島ではそこまで大きく感じない。


「確実に倒せたのよね」


 戦闘の開幕が強烈過ぎて、セシルがまだ勝利を疑っているようだ。


「上位魔神を倒したって書いてあるよ」


 クレナがアレンと魔導書を一緒になって読む。


『はは。倒せてよかったね。時間ぴったりだったよ』


 頑張った感を出して、モモンガの姿をした精霊神はソフィーに撫でるようにと催促をしている。

 分かりましたとソフィーが胸の中で精霊神をワシャワシャと猫可愛がりしている。


「はい。今回もありがとうございました。かなり厳しい戦いでした」


(お陰でレベルが6も上がった! さて、功労者に挨拶をしないと。と、その前に)


「キール。ルド隊長に神の雫を使ってやってくれ」


「ああ、そうだな」


 そう言って、獣人たちが作った人だかりの中に、キールが割り込んで入っていく。

 光り輝く宝石が先端についた杖を持つキールが近づいてきたので、獣人たちはエルメア教の祈りの言葉でもかけてあげるのだろうと思い人だかりの前へ通す。


「少し遅くなってすまなかったな」


「ん?」


 冷たくなったルド隊長にそんなことを言ったキールの言葉が横にいたシア獣王女はどういう意味で言ったのか分からない。


 そして、祈るように手を近づけ、キールはエクストラスキル「神の雫」を発動する。

 天から光り輝く雫が1粒落ちてくる。

 すると、光り輝く潤いにルド隊長が満たされてくる。


「こ、ここは。我は……」


「た、隊長おおおおお!!」

「よ、蘇ったぞ!!」

「こ、これは奇跡だ。奇跡が起きた」


 知力5000上昇する指輪を2個手に入れたキールは余裕で知力が1万を超えている。

 知力の高さによって成功率が変わる蘇生スキルであるエクストラスキル「神の雫」を、キールは100%の確率で成功することができる。


「すまないな、戦いの最中だと何人死ぬかも、誰を先に生き返らせるかもわからねえ状況だったんだ」


「ぬ? ああ、そうか。そうだな」


 ルド隊長は理解が追い付かないが、キールの謝罪を受け入れる。

 あのような状況でアレンが死ねば真っ先に生き返らせるのはアレンになる。

 アレンが死ねば、検証はしていないが恐らくメルスも消えてしまう。

 そういったこともあって、戦闘終了まで蘇生するわけにはいかなかった。


 その言葉に、「もっと早く」という言葉をシア獣王女は飲み込んだ。

 皆が皆、勝利を信じて戦っていたことは、先ほどの戦いを通じて痛いほど分かったのだ。


(今回の件はとてもデカいな。結局ここにやって来て、止めはセシルに任せっきりだったからな)


 オリハルコンの武器やルバンカの聖珠、レベルアップよりも大きいものを、アレンは手に入れたと考えている。


 魔神が変貌して本気を出した状態や上位魔神のステータスはかなり大きい。

 そんな魔神や上位魔神に止めを刺すにはかなり高威力の攻撃や魔法が必要になってくる。


 そんな高威力を出せるのはメルスの覚醒スキル「裁きの雷」とセシルのエクストラスキル「小隕石」に偏っていた。

 結果として、今回のエルマール教国から始まった魔神討伐で止めを刺してきたのは、セシルのエクストラスキル「小隕石」だ。


 しかし今、目の前に横たわる男が新たな可能性を示した。


「ドゴラお疲れ、まだ立てないのか?」


「ああ、ちょっと無理そうだ」


(まさか、ドゴラが最初のノーマルモード超えになったとはな)


 【名 前】 ドゴラ

 【年 齢】 15

 【加 護】 火の神(極小) 火攻撃吸収

 【職 業】 破壊王

 【レベル】 66

 【体 力】 4569

 【魔 力】 2135

 【攻撃力】 4828

 【耐久力】 4075

 【素早さ】 3197

 【知 力】 1973

 【幸 運】 3012

 【スキル】 破壊王〈1〉、真渾身〈1〉、真爆撃破〈1〉、真無双斬〈1〉、真殺戮撃〈2〉、全身全霊〈1〉、斧術〈6〉、盾術〈4〉

 【経験値】 0/30億


・スキルレベル

 【破壊王】 1

 【真渾身】 1

 【真爆撃破】 1

 【真無双斬】 1

 【真殺戮撃】 2

 【全身全霊】 1

・スキル経験値

 【真渾身】 0/100

 【真爆撃破】 0/100

 【真無双斬】 0/100

 【真殺戮撃】 400/1000

 【全身全霊】 1757/10000


(何かステータスが色々おかしくなっているぞ。これはエクストラモードに突入したとみて良いだろう)


 アレンはヘルモードの自分のステータスと見比べてみる。


 【名 前】 アレン

 【年 齢】 15

 【職 業】 召喚士

 【レベル】 91

 【体 力】 3615+4000

 【魔 力】 5740+2200

 【攻撃力】 2012+12000

 【耐久力】 2012+5600

 【素早さ】 3743+15400

 【知 力】 5750+4400

 【幸 運】 3743+2000


 【スキル】 召喚〈8〉、生成〈8〉、合成〈8〉、強化〈8〉、覚醒〈8〉、拡張〈7〉、収納、共有、高速召喚、等価交換、指揮化、王化、削除、剣術〈5〉、投擲〈3〉

 【経験値】 0/100兆


・スキルレベル

 【召 喚】 8

 【生 成】 8

 【合 成】 8

 【強 化】 8

 【覚 醒】 8


・スキル経験値

 【生 成】 約4億/100億

 【合 成】 約4億/100億

 【強 化】 約85億/100億

 【覚 醒】 約5億/100億


・取得可能召喚獣

 【 虫 】 ABCDEFGH

 【 獣 】 ABCDEFGH

 【 鳥 】 ABCDEFG

 【 草 】 ABCDEF

 【 石 】 ABCDE

 【 魚 】 ABCD

 【 霊 】 ABC

 【 竜 】 AB

 【天 使】 A


・ホルダー

 【 虫 】 A7枚

 【 獣 】 

 【 鳥 】 A10枚

 【 草 】 

 【 石 】 A10枚

 【 魚 】 A1枚

 【 霊 】 A1枚

 【 竜 】 A50枚

 【天 使】 A1枚


 ドゴラのステータスを上から下まで見るとおかしいところだらけだ。


 まず、精霊神ローゼンの加護もちのソフィーと同様に、火の神フレイヤの加護の表示がある。

 加護は極小になっている。

 ドゴラの体力が全快であるのにかかわらず、疲弊しきっていて動けないのはこのためなのかもしれない。

 

 レベルが6上がっている。

 これは上限のレベル60を超えて、アレンと同様にレベルが6上がったということだ。

 レベル67になるには30億の経験値が必要なようだ。

 「【エクストラ】全身全霊」の表示が無くなって、スキル欄に表示されている。

 通常の職業スキルになってしまったようだ。

 しかし、レベルを上げるのが他のスキルの100倍必要なようだ。

 スキルレベルを上げることができたら、どれだけ威力が上がるのか期待感しかない。


 エクストラスキルがエクストラモードのスキルを使っているという検証を以前したことがある。

 情報の全てが、ドゴラがノーマルモードからエクストラモードになったことを示唆している。


 レベルがノーマルモードからの引継ぎだが、スキルレベルが1に戻っている。

 ノーマルモードで取得した4つの攻撃スキルはそのままレベル1で使える状態になっている。

 全てスキル名の頭に真という文字がある。

 エクストラモードに変わって、スキルが生まれ変わったのかもしれない。


 そう言えば、バスクも「真何たら」というスキルをよく使っていたことを思い出す。

 ステータス増加の闘魂というスキルは消えている。

 これは破壊王の職業レベルが上がれば、また体得できるのかと思う。


(とりあえず、セシルの火魔法をぶつけてみて、疲弊しきった状態がどうなるか確認しないとな)

 

 分からないこと、これから検証しないといけないことも多い。

 火攻撃吸収の効果も気になる。

 ドゴラの横に置いてある神器が形を変えた大斧も気になる。


「バスクをやるなんて、あの時は助かったぜ」


「……アレンから褒められる時が来るとはな」


 ドゴラは上位魔神バスクとの戦いに勝利した。

 ほぼ一騎打ちの状況であのバスクを一刀両断にしてみせた。

 止めは逃げられたため、できなかったが、パーティーに瞬間火力で魔神を倒すに至った者が1人誕生したことを意味する。


 クレナはステータスのバランスがいいのだが、一撃必殺のスキルがない。

 この状況で前衛に勝利を左右するスキルを持つ者が現れたことに喜びを感じる。


 アレンに褒められて、ドゴラがどこか照れ臭そうだ。

 そんな中、メルルもメルスが覚醒スキル「裁きの雷」で破壊した天井から降りてくる。


「おお、みんな無事みたいだ!!」


「ああ、ドゴラがすごかったんだ」


「おお、ドゴラはいつも凄いからね!」


「!?」


 メルルは戦いを見ていないが当たり前のように受け入れた。

 ドゴラはいつも前線で仲間たちが全力で戦えるように、自らの功績も活躍も殺して頑張ってくれていた。


 メルルのいつも凄いという言葉にドゴラが動揺する。

 そして、火の神フレイヤとともに焚火を見ながら、自らを卑下していたことを思い出して赤くなる。


「ドゴラ、あのとき何があったの?」


 皆はソワソワしており、バスクに神器フランベルクに突き刺され、それから火柱に包まれ復活したあたりの話を聞かせてほしいという。


「ああ、あれはな」


 獣人たちはルド隊長の蘇生と、シア獣王女の獣王化に喜んでいる。

 アレンたちがドゴラを囲み、ドゴラに起きたことに耳を傾けているその時だった。


『……グヒン』


「「「な!?」」」


 神殿の端で死んだように横たわっていた調停神が息を吹き返したのであった。


(む。そういえば、こいつもいたな)


 戦いの中盤で戦線離脱して、それからピクリとも動かなかった調停神に全員の視線が集まる。

 麒麟の姿をした神を裁く上位神であり、バスクと共にメルスをあれほどまでに追い詰めた存在だ。

 バスクとの戦いの記憶が蘇り、全員に緊張が走る。


 獣人たちも何事だと騒然とする。

 調停神の脅威を知っているシア獣王女が臨戦態勢を取ったため、皆一様に殺気立ってしまった。


「セシルたちは下がって」


 セシルや、ソフィー、キールなど後衛職は後ろに下げる。

 調停神の前蹴りは脅威だ。


 そんな調停神であるが、ドゴラに受けた強力な一撃によって前足は両方とも折れており、バスクの抜き手によって首から血も流れている。


『……ヒヒン』


 ズウンッ


 力なく鳴き、立ち上がったかと思うと、ヨロヨロとバランスを崩して倒れてしまった。

 アレンたちがクレナを前衛に近づいていくと、こちらをじっと見つめている。


(ふむ。調停神が死にそうだな。こいつを倒すとレベルアップするのか)


 魔神を倒すとレベルが1上がる。

 上位魔神を倒すとレベルが5上がる。


 この死にかけた上位神である調停神に止めを刺すとレベルいくつ上がるのかと思う。


「怪我しちゃったね。苦しいの?」


(ふぁ!?)


「おい、クレナ!」


 アレンは思わず声が出た。

 クレナが武器を背に納め、調停神の元に歩みを進めたからだ。


『……』


「「「……」」」


 調停神がやって来たクレナを無言で見つめている。

 アレンの仲間たちもその状況をじっと見つめる。


 調停神が見つめる中、クレナは調停神の折れた前足に手を触れる。

 ドゴラの強力な一撃を受け、前足は2本とも骨が複雑に折れ砕けている。

 これでは立ち上がることもできない。


「痛かったね。ちょっと待ってね」


 クレナは、ごそごそと腰に付けた荷物袋に触れる。

 戦闘に邪魔にならない程度の荷物袋をアレンの仲間たちは全員持っている。

 戦闘で何かあった時のために天の恵みをいくつか入れていた。

 しかし、激戦に次ぐ激戦で荷物袋は空になっている。

 それに気付いたクレナはアレンの元に駆け寄る。


「え?」


「天の恵み頂戴!」


 クレナが手のひらを差し出した。


「……ほら。でも、気をつけろよ」


(エルフの霊薬な)


「うん。ありがと」


 一瞬迷ったが、クレナに1つの天の恵みを差し出した。

 クレナは笑顔でアレンにお礼を言うと調停神の元に駆け寄る。


『……』


「もう大丈夫だから。アレンの回復薬はすごいんだ!」


 調停神が無言で見つめる中、クレナは目の前で天の恵みを使った。

 調停神の体が光に包まれる。

 そして、破砕された前足も、バスクに突っ込まれた首元も完全に回復する。

 そして、全身にまだ若干漂っていた邪気のようなものが完全になくなったように思える。

 瞳に宿っていた殺気も全て無くなった。


 調停神は自らの体の異変とその結果による回復が分かったようだ。

 ゆっくりと立ち上がる。

 そして、頭をクレナに近づけた。


『ブルル』


 ペロペロ


 一声小さく唸って、クレナの頬を舐めた。


「あは! くすぐったいよ。でも良かった! これで歩けるね」


 クレナは調停神の回復を笑顔で喜ぶ。

 そんなまっすぐな瞳を見ながら、アレンはクレナが幼体となった白竜に餌を上げようとするやり取りを思い出した。

 何かやさしさや母性のあるクレナだが、ここにきてそれを発揮したようだ。


『私を助けし者。汝の名は?』


「え? お馬さん。話せるの? 私の名はクレナだよ」


 クレナの中で調停神はお馬さん扱いだ。

 そして、聞かれたので自分の名前を名乗った。


『クレナ。汝の名を覚えておこう。私は法の神を守護する者。調停神ファルネメス』


 調停神はそれだけ言うと、トコトコと破壊された神殿の壁の元に向かう。

 そして、壁の外に出た後、そのまま地面のない空中を歩いて行ってしまった。


「行っちゃった」


「そうだな。だけど、これで良かったんだよ」


「うん」


 随分小さくなった調停神の背中を見ながら、アレンは最初かなりハラハラしたがクレナの思いを汲むことにした。

 こうして、息を吹き返した調停神がいなくなり、アレンたちの完全な勝利に終わったのであった。


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ヘルモードコミック11巻
発売日:2025年4月11日
ISBN:978-4803021103

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― 新着の感想 ―
調停神の神器の扱いが気になるー
[一言] ドゴラがリードしたかと思ったがクレナがまた伸びそうだ魔神複数戦になるんか
[一言] >私は法の神を守護する者。調停神ファルネメス えっ?つまり法の神と調停神は別の存在ってこと?
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