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第24話 挑発

 芋掘りを始めて3日が経った。もうすぐ10月も下旬に突入する頃である。


「今日はちょっと昼から出かけてくる」


「え? そうなの? あんまり遅くなったら駄目よ」


「うん、夕方前には帰るから」


 芋掘りは全て終えて、庭には大量の芋がある。これから、大小に選り分けて、種芋を除いた6割を村長に納める。収穫の時期は結構庭を圧迫する。


 徴税については、年に数回決まった時期に定期的に荷馬車に乗った者がやってくる。次来るのは12月上旬であるのでそれまでに選り分けておけばよい。


 午前中やることに、芋の選別が増えた。農民化が進む。


 芋の選別が終わった後の作業もゲルダから聞いている。畑にまだ生えている茎や根を取り除く作業があるとのことだ。そうしないと来年の春に新しく植える際に邪魔になる。あとは細い用水路が埋まっていないか調べ、均一の深さにする作業があるとのことだ。ロダンに割り振られた畑に接する用水路の管理をする。


(この辺は、合間にやっていくか。それにしてもようやくカードの準備が整ったな)


 ロダンが怪我から目覚めて3日が過ぎた。


3日前

・獣F11枚

・虫F2枚

・鳥F2枚

・草F15枚


現在

・獣F16枚

・虫G3枚

・虫F2枚

・鳥F2枚

・草F7枚


(カードの調整も強化レベル2も終わったな)


 力をつけて畑仕事がしやすくなるように、草カードを減らし獣Fカードを増やした。そして、カードの編成が終わったので、強化レベル2に上げるべく魔力を消費し続けた。強化レベル2の効果も概ね把握できた。


 強化レベル2

・消費魔力は10

・効果は加護対象のステータス2つを+20する


(これで、生成以外のスキルは取得時の消費魔力からレベルが上がっても変わらないってことが確定したな。合成は5、強化は10で固定と)


 そして、強化のレベルが1から2になることで、召喚獣のステータス強化が+10から+20になった。手持ちのカードは全て強化レベル2で強化済みである。


 今後は、強化レベル3にまず上げてから、生成、合成、強化の3スキルがレベル4になるまで均等にスキル経験値を稼いでいく予定だ。


 午前中の芋の選り分けの途中で昼食になる。まだロダンは寝室から出てこられないが、少しずつ良くなってきた。もしかしたら草Fで作った木を、両親の寝室側に生やしたのも回復を助けているかもしれない。


 昼食を終え、アレンはもう一度庭にでる。今はロダンもテレシアも家にいるので、マッシュも寂しがらず大人しい。


 大小いくつかある籠の中で、良さげな大きさの籠を木の前まで持ってくる。おもむろに石ころ10個を籠の中に入れていく。全て何度も投げ続け、角が取れた野球ボールほどの大きさの石である。木刀は腰ひもに差す。


 そのまま籠を持って外に出る。あぜ道を進みながら、ゲルダに聞いた休耕地に向かう。


 休耕地にたどり着くと、そこはアレンの身長より高い雑草が生い茂っている。何も手入れをしておらず、伸びに伸びた雑草は、乾燥して枯れている。カサカサと音を立てて中に入っていく。


 適当に籠を置いて、中をかき分けていく。


(まずはこの休耕地がどんな感じか調べないとな)


 身長以上に伸びた雑草が、この休耕地の大きさを不明にしている。大体の大きさを把握するため、行ったり来たりかき分けて進む。


(この辺が中心か)


 休耕地の大体の中心が分かった。するとアレンはその中心から雑草を踏み始める。どんどん踏みしだいていく。乾燥した雑草が踏まれ、パキパキとした音が聞こえる中黙々と行なっていくのである。


 直径10メートルほどの、昔流行ったミステリーサークルのような円状の空間ができてくるのである。


(まあ、こんな感じか)


 おもむろにその10メートルの円状の空間から、その外の草が生い茂る場所に行き、籠から無造作に石ころを取り出し地面に置いていく。そして木刀を握りしめる。


(ピョンタ召喚)


 虫Gの召喚獣がミステリーサークルのような空間の中心に召喚される。ウシガエルほどの大きさのカエルである。


(よし、挑発しろ)


『ゲコゲコ』


 虫Gのピョンタが赤青黄色に点滅して、飛び跳ねる。アレン自体は雑草の中で息を殺し、様子を窺う。


 10分経過


(ふむ、思ったよりうまくいかないな)


 アレンは木刀を持ったまま天を見る。そこには大小様々な鳥がまばらに上空を飛んでいる。


(空に鳥は飛んでいるんだがな。鳥の数が少ないのか、挑発は空まで効果がないのか)


 これから冬になる。越冬には薪がどうしても必要だ。今までは毎年ロダンがグレイトボアの肉を売って、冬を温かく過ごすための薪を買ってきていた。家には幼い弟もいる。当然アレンも6歳でそこまで寒さに強くはない。


 1体捕まえる度に10キログラムの肉を貰えて、10体捕まえていた。その半分ほどは薪代に消費される。村で薪を買っていたのである。


 しかし、ロダンは今年の冬はボア狩りに行けない。重傷を負いながらもなんとか倒した1回分の肉と、村長が見舞いと置いていった僅かながらの食料。そして、仲間たちに慕われていたロダンである。ボア狩りを共にしてきた農奴の仲間達からも見舞いの品を貰っている。しかし、グレイトボアの肉100キログラムに比べてしまうと、十分な量の薪を買えそうには思えない。


 テレシアのお腹の新しい命と家族を守るために、アレンは鳥を捕まえようとしている。


(まあ、アルバヘロンみたいな魔獣はともかく、その辺のタンチョウっぽい鳥でも可食部分が2キログラムはあるだろう。50羽くらい捕まえられたらと簡単に思っていたんだけど)


 空には北に渡っていくアルバヘロンのような魔獣の鳥もいる。しかし、魔獣は捕まえる気はない。大型のタンチョウのような鳥もこの季節には飛んでいる。その辺りを目標に決め、虫Gのピョンタに挑発させ罠を仕掛けている。


 そんな考察をしながら身を伏せていると、1時間が経過する。


(1匹じゃ効果ないか。念のために3枚のカードを作っておいて正解だったな)


 さらに2体目の虫Gを召喚する。2体目の虫Gも1体目と同じ場所で飛び跳ねながら挑発をする。


 さらに1時間が経過する。


(くそ~2体のピョンタでも厳しいのか。というか空高すぎておびき寄せるのは難しいかもな。挑発の効果範囲分からんしな)


 カーン

 カーン

 カーン


 3時を告げる鐘が鳴る。


(もう3時か。クレナには今日は遊べないと伝えたからな。もう何日も会っていないな)


 ロダンが大怪我をしてから、クレナと騎士ごっこをしていない。家のことがあるからと今は断っている。クレナは一瞬さびしい表情をしたが、わかったと答えたのである。この2日、クレナはアレンの家に来ていない。


(よし、さらに1体増やして3体にするぞ。これで全部出したな)


『ゲコゲコ』

『ゲコゲコ』

『ゲコゲコ』


 3体の虫Gのピョンタが休耕地にできた丸い空間でバラバラに飛び跳ねる。赤青黄色の3色がちょうど別々の色をしているなと思う。

 木刀を握り待機しているが、一向に変化がない。


(むむ、取らぬ狸の皮算用だったか。いや諦めるのは早いぞ。もう少し虫Gのカードの枚数を増やして明日挑戦してみるかな)


 その時である。


 上空から一気に急降下する物体がいた。諦めかけて、気を抜いたアレンの目の前に現れたのである。大きなカギ爪のような足が1体の虫Gを襲う。光る泡となり消える。


『ギャアアアアアアス!!!』


 丸い空間の中央に舞い降りたそれは、威嚇するかのように両翼が4メートルにもなる翼を広げ、大きな鳴き声を上げた。


 アルバヘロンが上空から舞い降りてきたのである。


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ヘルモードコミック11巻
発売日:2025年4月11日
ISBN:978-4803021103

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― 新着の感想 ―
[一言] オマエジャネーwww 名前に惹かれてきてくれたのか? 恩情か? 大丈夫だと思うが(汗
[一言] 虫Gって連呼すると台所の黒いアイツを連想しますね。
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