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【アニメ化】ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~【2026年1月放送】  作者: ハム男
第4章 ローゼンヘイム侵攻編 精霊王と祈りの巫女

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第183話 潜入活動①

 アレン達はティアモの街から10キロメートルほど北上した場所にいる。


「結構作ってあげたと思うけど、まだ必要なの?」


「ああ、そうだな。多分これからもっといるんじゃないのかな? 要塞とか色々攻略しないといけないからな」


 アレンは今日もセシルと広くて背の低い植木鉢を挟んで、お見合い席のように座っている。アレンが必死に作る天の恵みが植木鉢から零れないように、セシルが収納に入れている。


 今回の防衛戦で20万個の魔石がローゼンヘイム側の物になった。そのうち10万個の魔石を2万個の天の恵みに変える必要がある。


 今までのエルフ兵達の戦いは、外壁や壕で守りを固めた防衛戦が主であった。今後は、自らの国を取り戻すために北に向けて進軍しなくてはいけない。


 負傷する兵はこれまで以上に増えるだろう。死亡リスクを減らすには、魔力を消費し殲滅速度を上げ、そして瀕死の重傷を治す天の恵みが必要不可欠だ。


「なんか、こういうの見ると相変わらずね」


「ん?」


「ミスリルの採掘権手放した時も、アレンは何も求めなかったよね」


 セシルはこの状況に既視感がある。悪いことばかり考えているようでいながら、相手にお礼を求めることがずいぶん少ないなと思う。貧乏貴族のグランヴェル家がカルネル家に困らされている時、アレンは自ら得たミスリルの採掘権を放棄した。


 その引き換えとして手に入れた物は「グランヴェル家の客人」としての立場だった。金のないグランヴェル家が用意できる精いっぱいのお礼だったと、セシルも認識している。


「まあ、どうだろうな。無い袖は振れないって言葉があるからな。無理にたかってもしょうがないだろ」


「何それ?」


 セシルは「無い袖は振れない」と言う言葉が分からなかったようだ。セシルに前世の諺について話をする。セシルがふんふん言いながらアレンの話を聞いている。


(こうやってみると言葉を選んでいたことが多かったな)


 前世の諺や横文字などを随分避けて会話をしていたなと思う。


 ローゼンヘイムは極貧の国になった。現在領土の3分の2以上を魔王軍に侵攻され、多くの街が火の海になった。現状を完全に復興しようと思えば10年はかかる。


 踏み荒らされた畑からの収穫量を回復させるには2~3年はかかる。


 ギアムート帝国はこのあたりの状況を見て食料などの支援を始めた。今まで割高だったエルフの回復部隊の遠征代金を安くしたり、エルフの霊薬を購入する交渉材料にするためと予想している。そんな話もここ数日の会議の議題として上がっていた。


 アレンはこの状況を理解しているので、無償で天の恵みを作ってあげている。強いて言うなら、天の恵みを無償で作るのは精霊王との約束の「ローゼンヘイムを救う」の範囲内くらいに思っている。


「さて、見えてきたな。魔獣達だ。3万体くらいいるな」


(ふむ、昨日から飛んでいたからエリーがそろそろ到着しそうだな。さて俺もレベルを上げなくてはな)


 スキル「指揮化」はどこまでレベルを上げれば封印が解けるか分からない。まあレベルを上げて悪いこともないので、ひたすら上げることにしている。

 レベル63まで上げたのだが、まだ封印が解けない。いくつになったら封印が解けるか知らないが、1体でも多くの魔獣を狩る必要がある。


「じゃあ、セシル様、初撃をよろしくお願いします」


「うむ。まかされた」


 そう言うと鳥Bの上に立ち上がったセシルは、エクストラスキル「小隕石」を発動する。魔王軍の残党狩りが始まった。



 そんなアレン達から離れて行動する別動隊がいる。霊Bの召喚獣達だ。

 霊Bの召喚獣を中心に、鳥FとEとDの召喚獣1体ずつで編成し、アレンの指示で北上を続けていた。


『見えてきたデスわ』


 霊Bの召喚獣達が、山々の中腹に作られた要塞を発見する。ラポルカ要塞と呼ばれる堅牢な要塞だ。


 この要塞の情報を手に入れ、何としても攻略をしたい。


(思った以上にしっかりとした要塞だな。これは落とすの苦労するぞ。でもラポルカ要塞を落とせば首都フォルテニアが見えてくるしな。にしても小さいようで大きい国だな。前世でいうところのオーストラリアくらいあるんだっけ)


 この要塞を抜けて馬車で5日ほどかければ、陥落した首都フォルテニアが見えてくる。


 最南端ネストの街からの馬車換算の移動日数

・馬車で30日 ティアモの街

・馬車で40日 ラポルカ要塞

・馬車で45日 首都フォルテニア

・馬車で110日 最北の要塞


 なお、5大陸で一番小さいと言われているローゼンヘイムは、前世のオーストラリア大陸よりやや大きい。ローゼンヘイムは大陸であって島ではないので、それなりの大きさがある。

 中央大陸の大きさはローゼンヘイムより3倍ほど広大だ。


(ふむふむ、普通に見張りがいるな。鎧系の魔獣だな。A級ダンジョンの最下層で見かけたな。グレイトウォーリアーって名前だっけか)


 要塞の入り口には体長10メートルほどの門番が2体いる。Aランクの魔獣だ。


(エリー、別に正面から入る必要はない。そろそろ、上空にいると発見されるから、地上に降りて適当なところから潜入して)


 空には大きな目玉をぎょろぎょろした蝙蝠が何体も飛んでいる。ティアモの街でも見かけた目玉蝙蝠という索敵担当の魔獣のようだ。


『畏まりましたデスわ』


 霊Bの召喚獣は、共有しているアレンにだけ聞こえるように小さく呟いて、山の斜面すれすれに降り立つ。霊Bの召喚獣は3体用意している。広い要塞と聞いているので、手分けして中を確認するためだ。


 少し浮いた状態のまま、木々に身を隠しながら要塞の壁を見る。


(ふむふむ、要塞の外壁の上も魔獣で一杯か)


 霊Bの召喚獣は要塞の壁をすり抜け、要塞の中に入って行く。鳥FEDの召喚獣は木にバラバラに止まり待機する。


 侵入した霊Bの召喚獣達が見たのは、要塞の中をわが物顔で闊歩する魔獣達だ。当然のことながらエルフ達はいない。


 首都フォルテニアが落とされた際、一旦はラポルカ要塞に女王を含めて撤退したのだが、そこで籠城することなく南下してティアモの街にまで逃げたと聞いている。


 首都北部の要塞と首都の陥落時に多くの兵が死んだ。首都からそこまで離れていないラポルカ要塞に籠城するには、十分な兵を集めることが出来なかった。


 ラポルカ要塞では兵が足りず女王を守れないと踏んで、何日も粘ることなくこの要塞を明け渡したそうだ。そして、ティアモ以下南部に待機させていた兵がティアモに結集し、籠城作戦が敢行された。


(お陰で、要塞としての機能は健在と)


 戦った痕跡は要塞の中にいくつもあるものの、未だ堅牢な要塞に見える。

 街としてはそこまで大きくないが、30万人のエルフの兵が入るには十分な大きさだ。


 そして、霊Bの召喚獣が剣を握った骸骨に視線を向けられる。軽く微笑み霊Bの召喚獣達が横を通り過ぎていくが、襲ってこない。


(うしうし、やはり襲ってこないな。名前がキャラの上に出ていて、赤文字は敵、青文字は味方みたいな設定ではないからな。たぶん行けると思ってたけど、よかった)


 アレンはこの戦争で、敵に落とされた街や要塞を奪還することがあると踏んでいた。

 そのため、霊Bの召喚獣をこれまで戦闘に直接参加させず、街々での連絡係に終始させた。潜入活動をさせるためだ。


 戦争で大々的に活躍したら、アレンの召喚獣とバレて潜入捜査ができないのではと温存していた。


 霊Bが潜入しつつ情報を収集し、その間アレン達は、エルフ達がラポルカ要塞を攻略するための地ならしをする。


(よし、一番大きな建物を目指そう。何かボスみたいなのがいるかもしれない)


『はい、畏まりましたデスわ』


 そう言って、要塞中央に作られた堅牢な建物を目指す。


(あまり大型の魔獣はいないな。まあ人間サイズの街だからな。スケルトン的な魔獣が多いと。エリー達が溶け込めて好都合だな)


 進んでいくと、人間の倍くらいまでの大きさの魔獣はいるが、竜系統など大型のものはいないようだ。剣を持った骸骨や、ローブの中に何もない魔獣があたりをフラフラ動いている。霊Bの召喚獣が溶け込んでも違和感がない。


 要塞の中の街並みを確認しつつ、何か情報はないか親玉がいそうな建物の中に入って行く。


 大きな建物にもわが物顔で入る霊Bの召喚獣を、建物の番人をしている魔獣達がチラ見したが、すぐに視線を元に戻す。入るなとも何とも言ってこないようだ。


 何体も入ると警戒されるので、とりあえず1体だけ扉から入って行く。


(魔族とか魔神はいるかな)


 中にも魔獣達がいるが、霊Bの召喚獣は潜入活動のためずんずん奥へと入って行く。


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ヘルモード12巻
発売日:2025年10月16日
ISBN:978-4803021981

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素晴らしい戦略眼 スネークすることなく潜入しやがったぜ
[一言] 番人仕事しろ
[良い点] アレンの仕事が増えていく。 しかし、これは社畜ではなく自営業。 スケルトンといったアンデッド系がいるとなると、アレン側が魔獣を倒して魔石を補充するように、魔王側も屠ったエルフの亡骸を魔獣の…
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