2人目の魔法生物
なんかこう、転職だ何だでかなり時間が空いちゃったなー!と思って見たら1年くらい空いてましたね。年末ですよ。マジか
「森に乗り込む」
そう言い放った探偵は夕方には出発するから準備をしっかりしろよと言い残して外に出ていった。
「……森に乗り込むって言ったって……そんな上手くいくんですかね……」
「さぁ……センセの事だから何か策はあると思うんだけど」
不安が拭いきれないの我々は顔を見合せる。そりゃそうだ。いくら魔導書があるとは言えド素人が同行するのだ、不安がない方がおかしいだろう。
きっと大丈夫だ。そうお互いに頷きあってみた訳で。
現実は私が思うよりドストレートだった。
「貴女がマスターのあるじ様ね。私の名前はカトリーヌ。よろしくお願いしますねぇ」
黒髪ボインのゆるふわお姉さんがにこやかに微笑んでいる。そう、彼女もまたターニャちゃんと同じく魔法生物であり、今回私が頼らざるを得ない相手である。
「なんか、ごめんね……顔合わせでこんな危険な……」
「良いんですよぅ。私、とーっても頑張っちゃいますからね」
言い淀む私とは対照的に素敵な笑顔の彼女の手にはアンティークな街灯を彷彿とさせる大きな杖のようなものが握られている。
今現在、我々が居るのはトリガー先生のご自宅から一番近いマンホールの蓋のすぐ近く。なんと先生、本当になんのひねりもないくらい普通に、そう普通にここから降りると仰ったのである。
こちらはひ弱な一般人だ。冗談みたいな事を本気でやるのはやめて頂きたい。
トリガー先生には無理があると言った。私には無理み溢れるミッションであると。しかし先生は問題無いと一言仰り、有無を言わさず作戦は強行されたのである。
マンホールから降りた我々は、ぞろぞろと一列になり下水道の水路横に作られた細い道を歩く。最初こそ悪臭に嫌悪感を抱いたものだが、人の鼻はすぐにバカになると言うのは本当らしく、すぐに気にならなくなった。カトリーヌさんの杖の先はやはりガス灯のように灯りをともしており、足元が見える分とてもありがたい。目が慣れ、状況にも慣れてきたのか、歩きながら周りを見渡すと、所々になんとも言い難いマークが描かれているのが目に入る。何なのか気になるが、だからと言って知りたいとも思えないので無視することにした。
地下に潜ってそこそこ経ったような、そうでもないような気がしてきた頃の事だった。不意に前を歩いていたクラッシュさんが立ち止まる。何事かとそんな彼の更に先を見ると、丸く開いた空間が顔を覗かせていた。どうやら出口の様だ。
生温い風と共に下水道の悪臭ともまた違う、生臭いような匂いが微かに混ざり、遠く太鼓を叩くような音と動物の遠吠えのようなものも聞こえてくる。
「ここからは慎重に行った方がいいだろう。特に君はその人形から絶対に離れるなよ」
振り返ることも無く言うトリガー先生に私は「ウス」と小さく返事をして少しカトリーヌさんに寄る。彼女から香る、花のような甘い良い匂いは、外から吹き込んでくる魚にも似た生臭さと酷く対照的だった。




