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食い扶持は自分で稼ぎます。

掻い摘んで話すと「帰れるっちゃ帰れるし帰るかどうかはお前次第」との事らしく、どうやら、帰ろうと思えば帰れるらしい。私の知る“異世界転移”の常識は尽くここでは通用しないようだ。

話を聞く限り、ファンタジー世界と言うのは決定だが、確実に現代日本より技術が進歩している。薄型テレビの画質の良さもさる事ながら、この店の周りには電波塔がない。どうやって電波を受信しているのか、そもそも電信柱すら存在しないのだ。

後日、聞いてわかったことなのだが電波に魔術によるロジックとかいうやつを組み合わせる事によって、電波を自国内であれば一定強度で飛ばすことが出来るらしい。しかし、例外もあるようで空中を漂う“魔素”というものの濃度が高いと、それがジャミングになってしまい、届きにくくなるのだとか。簡単に言うとド辺境な土地には電波届かねぇよ。という事らしい。見渡す限り大草原なこの土地はド辺境ではないのか。ド、はつかずとも見渡す限り何も無い(森は見える)ここは私にとっては充分辺境なんだが。

話は戻るが、戻りたいか、戻りたくないかと言われると家族の事はあるし、学校の事もあるから戻らなきゃかなぁという気持ちはある。あるにはある。だがしかし、それを持ってしてもこの世界を知りたいという欲求が上回っている。だって異世界だよ?めっちゃ楽しそうじゃない?魔術とか使ってみたいじゃん?

要は戻りたくないのである。

だがしかし、戻らない選択をする、ということは俗に言う「食い扶持は自分で稼ぐ」生活が待っているわけで、運動も勉強もびっくりするほど万年中間ラインをさ迷ってきた私にとって、というか多分そうでなくても、右も左も分からないこの世界で食い扶持を稼ぐ、というのは大変なことであるということだけは想像にかたくない。

「あのぉ……ここで働けたりとかって……しますかねぇ……」

いろいろ考えた末に私の出した結論はこの一言である。


**


許可はびっくりするほどすんなりおりた。とはいえ、彼方さんの独断と偏見であり、その場で「給料分は働いてもらうけどな」と言われただけなので、本当に許可が貰えているのか疑わしいところはある。

彼女は私とほぼ変わらないくらいの年齢の見た目をしている。エルフとかだったらロリババアという概念があるのでもしかしたら、とも思うのだが、彼女の耳は尖ってなんかいないし、バリバリの日本人顔だ。強いて言うなれば目の色が普通にみかける色ではないなというだけで、ほかは何一つ違和感を感じない。ついでに言うと省エネモードみたいな顔をしている。

「給料は……まぁしばらくは使い物にならないのだけは確定してるから、研修期間は、んー……日本円換算で時給八百円、三食住居付きだし、これ以上の物件は無いだろ」

「まぁ、バイト経験ゼロですからね……というか、彼方さんがガンガン決めてますけど良いんですか?店長さんとか居るのでは?」

そう聞くと彼女は一瞬、何言ってんだこいつみたいな顔をした後に少しだけ考える素振りを見せ

「私が店長だしね。言ってなかったっけ」

と言い放った。

「初耳です」

「じゃあ今言った」

雑な対応である。

「とりあえず、部屋はここの二階。シャワーもトイレもあるし、確か作って放置してたベッドの枠組みはあったから後で布団は持ってきてやるよ。ここに居る奴以外の従業員はそのうち紹介してやるから、一週間以内にホールで働くか、調理場で働くか決めなよ。生活に必要なあれこれは明日だ。質問は?」

「い、今のところは無いです」

何故、ファミレスにシャワーがあるのかと作って放置してたベッドの枠組みって何?と正直聞きたかったな、と思ったのは夜寝る前のことだった。シャワーどころか風呂もあった。

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