飛びました。
不定期更新です。筆がのれば更新が早くなります。
この世の半分は不思議で出来ている。などと言う名言はこの世には存在しない。人間はいつだってその不思議を解き明かさんと科学を、技術を、研究し続けてきたのだから。
まぁそれはそれとしてファンタジーはワクワクするものだ。
古来より人間はうさぎ追いかけて穴に落ちたり、クローゼットの奥へと何故か突き進んでいったり、はたまた他人を庇って車に轢かれて異世界に飛んだりする。最近だと過労死してたりもするな。うん。
かく言う私はと言うと、別に窮地に陥った社畜でもなければ、人の輪に入れずにいる訳でも、両親が死んで独りで生活している訳でもない。事故死する予定も今のところは無い。あっても困るのだが。今の学校生活にも、部活動の先輩達にも、何一つ不満は無いし、いや、何一つは言い過ぎか。ほんのちょーっとだけあるとすれば先輩達が揃いも揃って曲者揃いな事くらいだ。まぁそれでもよくしてもらってるし、本当に些細なことなのだ。先輩達が人気者過ぎるのも少しはあるのだが。
親との関係性も良好。健在どころかバリバリ働いてるし放っておいても向こう二十年は確実に元気だろう。これに関しては確信の域だ。
さて、そんな私が今どこにいるかって?
何処にいるか、と言われると何とも言えないのだが、とりあえず多分ここは私の慣れ親しんだ日本ではないだろう。え?じゃあ外国かって?んなわけあるか。
私は今、だだっ広い草原に一人なのである。
うっかり何も知らずに、その時人気だったアニメの夢小説サイトを見てしまった小学五年生の頃から、オタクとして覚醒した私の脳内にガイアが囁いてくる。
「お前、異世界に飛んでもうたやで」と。
だって私、さっきまで学校の帰り道で本屋寄るか否か悩んでたもん。こんなん夢小説と異世界ものの導入で大量に読んだもん。知ってるんだぞ。
とすれば、何かしら能力が身に備わっているのでは?と言うワクワク感といやまずこれ何の世界だ?ファンタジーか?という非常に能天気な考えが脳内を駆け巡る。夢小説読みながら「いやいや、まず不安にならへんのかい」などと思っていた身ではあるが、その立場になると分かった。めっちゃアドレナリンが出る。ちなみに、ファイアー!とか叫んでみたけど何も出なかった。
一頻りやって、何も出やしねぇなと分かったところで周囲を見回す。だだっ広い草原。少し視線を前方へ拡げると森が、ぐるりと回れ右、だだっ広い草原。もう少し遠くを見る。とりあえず砂となんかこう、すっごい深そうな谷とそのさらに向こうに一本?の塔が見えた。いかにもゲームとかだと強い敵が居るタイプのやつだ。森と砂漠、どちらへ行くかと言われると私の場合はまぁ、森一択だったわけで、幸い、靴は歩き慣れたいつものスニーカー。学校に持って行っているカバンの中には水筒と本日友人達がくれた飴が入っている。風は心地良いし、陽の光だって突き刺すようなものじゃなくてぽかぽかとした陽気なものだ。私はハイキング気分で森へ向かって歩き出した。