フリージアの後悔
セリフほぼ無しですー。
最近学園では、ピンクブロンドの髪を持った元平民の男爵令嬢の話題で持ちきりだった。
王太子様と仲睦まじくいるだとか、公爵から子爵までの殿方と仲睦まじいだとか。
私的には心底どうでもいい。
最初は王太子様も迷惑そうに、嫌そうな顔をしながら避けていたのに、いつのころからかニコニコ笑いながら一緒にいるようになった。
私はその姿を見て心底滑稽だと思った。
なんでだかはわからないけれど、凄く汚いもののように見えてしまった。
私も最初はピンクブロンドの彼女を見て、あの物語のヒロインみたいだなぁって思ってた。
でもあれは物語である。
物語のように元平民と王族は一緒にはなれないのに。
そんなことわかってたのに。
それでも最初は物語のようになればいいなと思った。
王太子様が私以外を見ればいいと思っただけだったの。
ただただ私が受け入れたくなかっただけなのかも知れない。
あの、王太子様から私に向けられる重たい何かを。
きっと私にはそれを受け入れる覚悟がなかっただけ。
その何かを受け入れてしまったら、二度と逃げられないような気がしたから。
だから私はあの時に物語を参考にしようと思ったのだ。
まぁ、結局私は物語のように彼女をいじめることが出来なかったけどね。
虐めはしなかったけど苦言は申した。
だって、彼女が声をかけるのは全て跡取りの殿方。玉の輿とやらを狙っているのかは知らないけど迷惑この上ない。
その殿方の婚約者達が私に苦言を言ってくるのだ。
あのピンクブロンドの彼女をどうにかしてくれと。
私自身は彼女に苦言なんてないけれど。
それに私は彼女の名前すら知らない。
だから呼び止める時も、「そこの貴方」になるのだ。
あの本の悪役令嬢っぽくなるけれど、言うことは常識のみだと私は思っている。
「未婚の女性は無闇矢鱈に殿方と接しない」だとか、「婚約者のいる方とは必要以上に親しくしない」だとか言っただけで、あのピンクブロンドの彼女ときたら……。
「私は皆んなと仲良くなりたくて」だとか「フリージア様は私が嫌いなんですね」だとか言って泣くのだ。
私、名前を呼ぶことを許した覚えないんですけどね。ついでに言うと、私、貴方に名前を名乗った覚えもないんですけどね。
彼女は私が何かを言うと必ず泣く。
あとは都合が悪くなった時。
彼女が泣くとこちらが悪くなるても、こちらが悪いことになるらしい。
ほかの婚約者だった方達が言うとそうなるらしいが、私が苦言を申した時は周りの人達が彼女を頭が可哀想な子を見るような目で見ているのでよくわからない。
そして私と話して彼女が泣いていると王太子様と兄様が現れるのだ。
王太子様が彼女を。兄様が私を庇うようにして。
王太子様は何か言いたげな目で私を見て。
兄様は汚いものを見る目で2人を見て。
そして私と兄様はいつも2人に背を向けて歩き出す。
2人が動かないから。
そして私達が立ち去る時、彼女を見るといつもゆがんだ瞳をして勝ち誇ったように笑いながら王太子様の腕に絡みついているのだ。
そんな事しなくても、王太子様の婚約者の座を譲りますのにね。
周りが認めるかなんて知りませんけれど。
私はいつもはぁと溜息をついて兄様とその場から離れていた。
そんな私の後ろ姿を王太子様が思い詰めたような、悲しいような顔をしながら見ていたなんて知らなかった。
そんな王太子様を睨みながら兄様が歩いていたなんて知らなかった。
だから、知らなかったから、私は今………。
この時にちゃんと王太子様を見ていなかった事を凄い後悔する事になる。
ここで一気に時が進んですいません…