寂しいと甘い
短編よりも王太子が積極的で、フリージアさんの対応が柔らかい…?
王太子様と婚約してから7年。
今でも私は王太子様の婚約者です。
どういう訳か2日に1回は私の家まで会いにきますの。王太子様が。暇なんですかね。
私は王妃教育があってすんごく忙しいんですけどね。私も2日に1回、王妃教育の為に王城に向かうのです。そこでも毎日毎日王太子様に会いますの。
実質毎日会っていることになりますわね。
毎日毎日毎日 王太子様のキラッキラした笑顔を向けられて、私は少しやつれましたが、最近慣れて来たと思いましたの。
でも、やっと慣れてきたと思ったらキラキラとは違うなんだか甘い雰囲気を醸し出すようになりまして……。
結局慣れないんですよね。7年も一緒にいるのに。
どういう事でしょうかね。
王太子様はいつも私の側には来ませんの。
毎回テーブルを挟んだ席に座るのです。
私の隣が空いていたとしても。
まぁ、隣に座られるとそれはそれはキラキラが凄くて私が死んでしまうと思うのですけれど。
隣に来ないって事は私の事、嫌いなんですかね?毎日会っているのに。
でも、目が合うと凄く蕩けるような目をしている時がありますの。
その目を見ると、凄く心が乱されるのです。
何故でしょうか。
まぁ、それも今日で終わりですわ。
王太子様は15〜18歳の子供達が通う学園に明日入学するのですわ。
だから、もう毎日会いませんわね。
私、1つ年下ですから。
「フィーア。僕に何か言う事とか無いのかい?」
7年たって益々美形に育った王太子様が私に笑顔を向ける。
此処は王太子様の執務室。
今日もテーブルを挟んでのお茶会。
美味しいお茶と私の好みの甘いお菓子。
王太子様は甘いのがあまり好きでは無いらしくいつも1つしか手につけないから毎回私の為に用意されているお菓子。
「いつも美味しいお茶にお菓子をありがとうございます」
私はにこやかな笑顔を向ける。
「うん。喜んでくれて嬉しいよ。でもね、そうじゃないよね」
「そうじゃない?」
じゃあ何でしょう?
「ほら、僕たち明日から会えないでしょう?」
それがどうしたのでしょうか。
わからずにこてんと首を傾げた。
「ふふっ フィーア。僕はね、これから毎日フィーアに会えなくなると思うと寂しくてどうにかなりそうなんだけどな」
王太子様は苦笑してからいつのまにか呼ばれるようになった私の愛称を呼んだ。
「寂しいんですか?」
隣にすら来ないのに?
基本喋らずにお茶会は終了するのに?
「寂しいよ。フィーアは違うの?」
王太子様もこてんと首を傾げる。
「寂しいですわよ?これからこのお菓子たちが食べられないと思うと」
王太子様とのお茶会がなければこのお菓子たちに会えないからね。
「ふふっ。フィーアはフィーアだねぇ。そんなところもいいんだけどね。……僕はさ」
そういうと王太子様は席を立って私の隣に座る。
初めての距離。……近すぎません?
「僕に会えなくなって寂しくないの?って聞いてるんだよね。僕は寂しいよ。フィーアに会えなくなるなんて」
王太子様は私の髪をくるくる触りながら、あの、蕩けるような目で見てくる。
初めての距離で、初めての接触。
今はキラキラは無くて、ただわからない甘い甘い雰囲気だけ。
なんだか狡いと思いません?
「………寂しいも何も義務ではないですか。今までが会いすぎなのです。それに私、1年後に入学致しますしっ」
王太子様の方を見ると至近距離に顔があって。
「………そっかぁ。うん。そうだねぇ」
王太子様はそう呟いてから先程座っていた向かいの席に戻っていった。
………ビッックリしたぁ。
何なんですの?
私はよくわからなくてもう一度首を傾げた。