シェレルの思惑と空回り☆
遅くなってしまい申し訳御座いません!!
「………王太子様?何故、婚約破棄なのですか」
僕はその言葉を聞いて、この計画を決行することを決意した日を思い出していた。
*
それは、愛しいフィーアの入学式。
絶対にフィーアが現れるクラス表の前で待っていた。
1年間でフィーアはどれくらい綺麗に、可愛く成長しているのかなぁ。
なんて、フィーアの事だけを考えていた。
そして現れたフィーアをみて抱きしめたい衝動を抑えてフィーアに声をかけた。
「フィーア。あぁ、会いたかったよ」
フィーアの顔が軽く引きつったように見えなくもなかったけど、気のせいかな?気のせいだよね。
「……殿下。お久しぶりでございます。学園ではいかがお過ごしでしたでしょうか?」
あぁ、フィーアの声は心地いい。
聞いてるだけでぬ……んん。なんでもないよ?
ずっと聞いていたくなる声で、もっと話したかったのに。
「フィーアのいない世界はつまらなかったけど、学園は比較的いいところだとは思うよ?」
僕はこんなにもフィーアを求めているのに。
「それは良かったです。では、教室に行きたいので失礼致します」
フィーアは笑顔を浮かべてお辞儀して足早にその場を去っていってしまった。
私はその後ろ姿を見つめていた。
フィーアは僕のことを嫌いなんだろうか…。
僕はフィーアに何かしてしまったのだろうか…。
そんな事を考えていたら、ピンクブロンドの髪を持つ少女がぶつかってきた。
「す、すいませぇん!お怪我はないですかぁ?」
気に触る高い高い声。
「あぁ。大丈夫だよ。僕が気づかなかったのがいけなかったんだから。ごめんね」
僕は笑顔を貼り付けてその少女に告げて彼女を視界から外した。
せっかく生フィーアが観れたのだ。そ
他のどうでもいい女の顔の思い出はいらない。
そのせいで僕は気づかなかった。
僕の後ろ姿を名前も知らないピンクブロンドの少女が目をキラキラさせてみていたことに。
そしてこの出会いが僕の計画が動き出す鍵になった。
その日から。
「シェレルさまぁ」
ピンクブロンドの女は許してもいない名前を呼んで僕の腕に絡みついてきた。
鳥肌が立ってしょうがない。
「…………何かな」
離して欲しい 気持ち悪い。
そう思いなが女を見るとふと思った。
この女は僕が参考にしようとした本のヒロインとやらに都合がいいのでは、と。
そしてこの女は本を見たときに利用しようと思っていた元平民の男爵令嬢ではないか、と。
それなら と僕はほくそ笑んだ。
「ごめんね。えぇっと…アリーナ嬢」
確か私の名前はアリーナです!て騒いでいた気がしたが合っているだろうか。
「シェレルさまっ私の名前 覚えてくれていたんですね!」
すっごく嬉しいですぅ!って言いながらしなだれかかってきた。重い。
フィーアは羽根のように軽いだろう。なのにこの女はすごい重い。不快でしかない。が、我慢しよう。
彼女に興味を持った体を装って仲良くしてみよう。
これも僕とフィーアの為だ。
震えるな僕。ポーカーフェイスを貼り付けろ。
……あぁ、あの本をお手本にするなら僕の一人称は僕じゃなくて俺の方がいいかな。
*
アリーナ嬢と和かに話していると遠目にフィーアを捉えた。
あぁ、今日も可愛い。今すぐに話しに行きたい。抱きしめたい。
なのに………なんで、フィーアの隣に居るのは僕じゃなくて、アイゼンなんだ。
アイゼンはフィーアの兄だが、ずっと隣に居るのは駄目だ。
…アイゼンは僕がフィーアに向けているのと同じ瞳をしているから。
そして、フィーアも僕には決して向けてはくれない瞳をしてアイゼンを見ているから。
「シェレルさまぁ?」
「ん?何かな」
アリーナ嬢はエメラルドのような瞳でじっと見つめてきた。
………なんだ?
「あ、いいえ。なんでもないんです。ただ、ちょっと……フリージア様が怖いなって」
……フィーアが怖い?何処が?
僕は君の方が怖いよ。
元平民の男爵令嬢が王族に話しかけてくるなんて。
周りの人達に何か言われないのかね。
鋼のメンタルだね。
あぁ、勿論僕は色々言われているよ。
でも全然平気。フィーアが見てくれる為なら何でもするつもりだからね。
………なんでも。
「……なんで、そう思ったのかな」
「だ、だって……。フリージア様は、私とシェレル様がお話していると、必ずじっっと見つめてくるんです!!…私、あの目が怖くて……」
なんだって?
フィーアが、じっと見つめてきてくれているのか?僕を?
え、ほんと?この作戦ちゃんと意味を成してる?
フィーアとアイゼンが一緒にいるのを見て、嫉妬しすぎてすごい表情で睨んでしまったけど、フィーアが少なからず僕を思ってくれていたんだとわかって、荒んだ心が少し安らいだ。
………いつになったらフィーアは僕に思いをぶつけてくれるのかなって思ってたのに。
そう思い作戦を続行し続けて、この卒業パーティーを迎えたのに。
*
そして、今。
「私、いつ、貴方を好きだなんて言いました?」
「王太子様は先程から、私の行為は嫉妬による為だと決めつけておりましたが何故でしょうか」
「あぁ。御二方。おめでとうございます。晴れて邪魔者である私がいなくなるのです。これからも仲睦まじく、国を守ってください。
まぁ、私は汚らわしい御二方の姿は見たくないので領地に帰らせて頂きますが。
遠くから幸せを願っていますわ」
こんな言葉を聞くために、僕は頑張った訳じゃないのに。
シェレルが自己中すぎて嫌いになっていく……。