兄様の乱入
短いです…。
私は心地の良い空間にいた。
さっきまでシェレル様と一緒にいたのが夢なのではないかと思うほどに。
えぇ。きっとあれは夢だったのでしょう。
夢じゃなきゃ何だと言うのか。
シェレル様が私を好き?愛してる?
おかしいでしょう。
だってシェレル様は私ではなくアリーナさんを愛しているんだから……。
あれ?あれは茶番だっけ?……うん……?
自分の記憶が曖昧になり心地いい空間から放たれるように目を覚ました。
「……あれ?」
どうやらアレは夢では無かったらしい。
目を覚ますと素晴らしい笑顔を浮かべたシェレル様と目があった。
…………あれ?シェレル様はキラキラした笑顔を浮かべているはずなんだけど、気持ち悪く?ならないな。何でだろう……。
「フィーア 目が覚めた?目が覚めたばかりの所悪いんだけど、さっきの続き、しよ?」
シェレル様は甘い雰囲気を漂わせて微笑んだ。
さっきの、続き?
え、何?
……確か、シェレル様に押し倒されて、キスされて……今もシェレル様は私を押し倒していて………え?
続きってナニをするんですか?って言おうとしたその時、
部屋の扉が吹き飛んだ。
大袈裟とかではなく、凄い音を出して吹き飛んだ。
その音を聞いた時、シェレル様は笑顔を消して舌打ちをした。
王子様でも舌打ちするんだなぁって思って、凄いなぁって思っていたらもっと凄い人が部屋に入ってきた。
「ねぇ殿下?何、してるのかな?」
扉があった場所に立っていたのは
真っ黒な笑顔を浮かべた兄様でした。
「え?何って……。俺達婚約者ですから?
何をしていたって、お義兄さんには関係ないですよね?」
シェレル様は私から退いて私の前に立ち兄様を睨みつけた。
「あぁ?何言ってんだお前。婚約者ぁ?認めてねえけど?フィー放ったらかしにして他の女にうつつを抜かしてたくせに?あぁ、演技だろうが本気だろうが俺にはどうでもいいからな。それにさ、俺、言ったよね?フィーが殿下の事を好きだって言ってからなら何かをしてもいいって。ねぇ。フィーは殿下が好きだって言ったの?」
兄様。言葉遣いが良くないです…。
「…………それは……」
「ねぇフィー?フィーは殿下が好き?」
あ、ここで私に振られるのですね。
「私は……シェレル様の事を……」
「好きでも嫌いでもないですね」
申し訳ないけれどまだ、好きとは言えないのです。
まだ。
私の言葉にシェレル様は顔色を絶望に染め、兄様な歓喜に染めた。
「あぁ フィー。可哀想に。どうとも思っていない人に押し倒されて…。殿下に何かされてない?」
されてないと言えば嘘になるけれど……
「はい。大丈夫です。何にもされてませんわ」
私がそう答えるとシェレル様は目を見開いて私を見てきたので微笑んで返した。
「さぁ フィー。お家に帰ろう」
兄様はシェレル様を片手で退かして私を抱き上げると歩き始めた。
「え、ちょっ、フィーアをどこに連れて行くんですか?!」
「家だが?」
「な、なぜ…」
「……はぁ。殿下。貴方とフィーの想いが釣り合っていないからです。このままではフィーが潰れてしまう。フィーをその手にしたいのならば国民が認める賢王になってみろ。そして、自分の気持ちをコントロール出来るようになれ。その時にフィーが殿下を王と認めていればフィーを口説く事を、俺の弟になる事を許してやる」
兄様はそう言うと私を連れてその場を後にした。
その日以降7年間シェレル様と顔は合わせていない。