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苦手な方はご注意ください。

かくおの短い物語集

「仙人を目指す男」

作者: かくお

仙人を目指す男は全てを捨てた。

お金も家も友達も。


全て捨てた。


山奥で一人の暮らし、住処も作らず定住しない。

何も持たず、何も関わらない。


仙人を目指せば目指すほど、まるで動物の様な暮らしになっていく。


「俺が目指す仙人って動物なのかな」


そんな事を考えて笑う事もあった。


この暮らしをしている事。自分が仙人を目指してる事、それらを誰かに知られる必要もない。


一人で生きていく。


それが仙人だと思っていた。


だって全てを捨てられない人間が仙人になどなれるはずがない、そうも思ってた。


それでも一つだけ男には捨てられないものがあった。

捨てられない、捨て方が分からない。


時間。


「どうやったら時間って捨てられるんだ?」


時間は皆に平等に与えられている。


大人も子供も男性も女性も、動物にだって時間は平等なはずだ。


しかし、男は一秒すらも時間を捨てる事が出来ない。

捨て方が分からない。


男は生涯その答えを求め続けた。


「無になればいいのではないか?」


そう思って座禅を組んだり滝に打たれたりもした。

それでも時間は流れている。


「時間を気にしなければいいんじゃないか?」


そう思って身体を木に打ち付けて痛みを与えたりもした。


痛みで頭が一杯になっても時間は流れている。


やがて時が経ち年老いた男は、一日のほとんどを寝て過ごす様になったが、それでも時間の捨て方だけを考え続けた。


やがて、その答え分からないまま男の命は尽きた。


死んだ男の頭に、神様の声が流れ込む。


「やっと答えが見つかったんじゃないかね?」


男の顔がパーッと晴れた。


「これだったのか、これでやっと仙人になれた気がするよ」




おしまい。

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