第一章(8)
久々の更新です、のんびり書いて行こうと思います。
ちょっと修正しました!
#8
*ガッタス教国首都で佐竹はアイラの報告を受けていた。
『佐竹さん、教会内では次期教皇の候補者選びが行われて
いるらしく様々な情報と臆測が囁かれているようです。
有力なのは二人に絞られたようですが、状況は拮抗して
いるようです』
『なるほどな・・・・この戦争介入の理由も教会内部での
影響力を示す狙いの一つだろうな、どんな人物なんだ?』
『トラカ枢機卿は実務経験に実績があり聖職者と言うよりは
事務的で少し野心家な面があります。
もう一人のオブライ枢機卿は枢機卿の中では若く国民に人気が
ある人物のようです』
『なるほど・・・・対照的な二人のようだな、地上の介入に関わる
つもりは無いのだけれど今回は二国間での戦争で終わらない気がする。
ガッタス教国が支援する事で戦闘は長期化するだろう
それは短期決戦と考えていたエストラエル国は戦費が増大する事実を
国民に概括すればラオビサウ共和国が侵攻した理由が明るみになる。
侵攻した主な理由は国土の砂漠化による農産物の生産量が激減し輸出に
よる外貨獲得並びに工業を支える鉱物資源の輸入が滞っている
この真実を知ればエストラエルとダッカスの国民はどのように感じる
だろうか?
『アイラ・・・国民にそれとなく噂を流してみてくれ、騒ぎが大きく
なれば上層部も無視はできないだろしな』
このまま戦争が拡大するのは僕の本意ではない、ここまで成長した
文明を後退させる原因となる事態は避けたいし、どうするのが正解な
なのか………今はアイラに指示した策がどのような結果になるか見守る
としよう。
*エストラエル国のオープンカフェでは戦争の長期化が市民間で
話題となっていた。
『ねえねえニュース見た? 何か戦争が長期化するみたいよ』
『俺、あんまニュース見ないからな、それって本当かい?』
『国土を侵略者から守る為の戦いで相手国の戦力だと短期で戦争は
は終了するって政府は説明してたんだよな・・・たしか?』
『長期化するなんて私達の生活に影響出ないかしら?
万が一にも貴方が戦争に行くような事になったら私、耐えられないわ』
『そうだな、少し心配だけどヤバくなれば何か発表されんじゃないかな?』
*エストラエル国大統領府では広まる噂に対ての対応策が話し合われていた。
『大統領、国民の間で広がっている噂をご存知ですか?
戦争の長期化による戦費の増大とラオビサウ共和国の侵攻の理由が
我が国にも関係があるのではないか?
そのような噂が囁かれているのです』
『情報の漏洩か・・・裏切り者の詮索は噂が落ち着いたら行えば良い
今は噂の広がり工合の確認と、どう治めるかだな。
真実などは国民が知らなくても良いのだ、知ったところで何も
変える事など出来はしない。
我が国は民衆に選ばれし政務者により国政が行われている民主国家
ではあるが、中身は清廉潔白とは言えぬ汚職もあれば不正も少なか
らずある。
ある程度の悪意を許容た調和、それが民主国家と考えている。
それに儂も一人の人間よ欲もあれば悪意も無いとは言わぬ』
『このまま戦争継続と考えてよろしいのでしょうか?』
『ポーター情報局長よ、この戦争では様々なところが利権や
待遇などを得ようと動いている。
商業連合、政治家、人身売買組織など数えれば切りが無い。
儂も権力維持に必要な資金を得る為にこの戦争を利用している。
今更、引くことはできぬ』
『それは権力者であれば仕方のないこ事と理解しております
人は争うことを宿命づけられた存在なのだと思います。
街角で争う事と他国との戦争の間にどれほどの違いが有りま
しょうか・・・規模が違えば犠牲者が出るのは当たり前です
でも争う事の本質に違いを感じないのは私だけでしょうか?』
『儂は人が生きてくには動物でも植物でも他者の命を糧としな
くては命を維持できぬ、それは人以外も同じく他の生命を
糧としているのだ。
ガッタス教国で信仰されておる神とやらが存在しているので
あれば、食さず個の存在で強大な力を持ち永遠の存在である
神に人が至る事が出来るのであれば・・・そして全ての人が
神になれるのであればその時は争いは無くなるであろうな。
しかし今は国民の不信感を払拭せねばなるまいな』
*佐竹はアイラの報告を受けるべくエストラエル国に来ていた。
『アイラ、噂はかなり広がっているようだな、街の至るところで
聞こえてくるよ』
『結構、苦労したのですよ佐竹さん。
あまり干渉しないと聞きましたが、このまま放置ではないので
すよね?』
アイラの情報操作の御蔭で民衆には戦争の状況が広く知れ渡った。
僕自身過度に関わる事はしないが、ここまで順調に成熟した文明が
壊れてしまうかもしれない状況を看過はしたくはない。
自分の居た世界と比べ途中進化を省略し作り上げた世界だが
僕が初めて作った世界であり愛着もある。
この世界が何れ終焉を迎えるにしても早すぎると感じている
せめて自らが原因での滅びは回避して頂たく
その点で多少は助力したいと思っていた。
さて何から始めようか・・・一部は酷い状況にはあるが
各国とも国政は安定している、戦争に関係している3国以外
を巻き込み各国を緊張状態にすることで戦闘よりも冷戦状態に
移行できないだろうか?
世界が一つになんて・・・思わないけど、お互いの国の事情
を許し合える関係を築けないものか・・・
地球でも宗教や貧富など様々な理由で人々は争ってきた。
少数なら解決する問題も大人数、国単位となれば些細な事でも
和解し解決するのは難しくなるのは地球の事を考えれば容易に
想像できる。
人々を導くであろう宗教であっても多数の宗教が存在し
それ自体が争いの原因となる事があった。
人の数だけ個性や考え方があるのと同じで宗教も複数存在して
いる。
日本人として育った自分は宗教に対して強い思い入れは無かった
と思う、クリスマスや葬式くらいが宗教を感じただろうか……
宗教の存在を好ましく思うのは国を統治する立場の人間だと
思う、民衆の底辺層が富裕層に対しての不満を誤魔化す為には
優れた思想ではないか、貧しい事・不平等・不運などを神の
試練と解釈しそれを耐え忍ぶ事を修行と位置づけ教えを全うした
者を死後の楽園へと誘う。
宗教を初めに考案したのは遥か昔の権力者ではないのか?
人々の統治システムと考えれば優れているのであろうな
地球では何千年も存在し続けたのだから。
よし!今回は戦争当事国のリーダーを変更し、こちらの
意向を理解しそうな人物に首を挿げ替えるか・・・
多少は介入行為に近いとは思うが、今のままでは多くの犠牲者と
歪んだ支配体制が誕生してしまいそうだ。
科学文明と言うよりは魔法文明として発展したこの世界は何と
なくだが論理的な思考をする事に関しては未熟な様に感じられる。
様々な物理現象が魔法で簡単に行使できてしまう
言い換えれば現象そのものを深く探求すると言う考えに至らない。
事象を魔法で改変しているのだから結果を見れば同じであり
探究心は魔法そのものに向けられ、物理現象の探求には意味は無い
のかもしれない。
考えれば考えるほど道が逸れてくるので本題に戻ろう。
『アイラ、エストラエル国には僕らの意向に沿うような人物の候補
はいるか調査してくれ、それと当事国の3国以外に現状に干渉
できそうな国も調べてくれ』
『了解です、先の調査で少し心当たりがありますので大丈夫かと』
何ともこ心強いな、アイラの報告を待って僕も行動するか・・・
この世界を創造した立場としてある程度の責任感を感じている
僕としてはどのような結果に成ろうとも見守るつもりだったが
予想以上に早く、そして歪んで来ていると感じていた。
魔法文明と宗教と言うのは僕が想像していた以上に争い事を
抑制する効果が弱いと感じている、個人の攻撃能力で比較すれば
銃などより広範囲で殺傷能力が強く相手の遺体すら残らない事も
あり罪悪感が麻痺してしまう傾向にある。
宗教的観点から見ると浄化と捉えられてしまう事もあるようだ
全く魔法と宗教は相性が良いのか悪いのか判断が難しい。
*佐竹はアイラの報告をガッタス教国で待つ事にした。
教国内でも今回の戦争支援に対して疑問を持つ者も少なからずいた。
教会内部のオブライ枢機卿もその一人であり信者で作る慈善団体の
ガッタス協会委員会などは早々に異議を唱えていた。
◇◇◇ガッタス教国教義執行委員会◇◇◇
『ケディー委員長、長引く戦乱に教国民も疑問を抱く者が増えて
おります。オブライ枢機卿も今の状況を好ましく思ってはいない
と聞いております』
『枢機卿の事は私も聞いてはいた、彼は教団内よりも教国民の方を
見ている。しかしだ彼も教団を支える一人なのだ、教団の意思には
従うだろう、今回の戦争支援には教理とはかけ離れた何かが隠され
ている気がしてならない』
『委員長、私も隠された理由があるのではと感じています、我々は
教団の救済行為を補佐する団体であり教団に対して疑念を抱く事は
本意ではありません、しかし今回は教団の判断に疑問を感じます。
自国が他国から侵略を受けたのならば戦うのは止む終えないですが
他国の戦争行為を支援する事は、争いを戒めている事を教義として
いる事を考えれば不自然に思えます』
『我々には理解できない教義に順ずる理由があるのかもしれない・・
今は従うほかあるまい』
『皆にも委員長の言葉として伝えます』
*教国民の間でも戦争が長引くにつれ介入の正当性を疑問視する
人々が増えてきた。
時期教皇候補の噂の中で教義とは反して介入を決定した枢機卿
は誰なのか・・・憶測と噂が入り乱れ広まっていた。
〜〜〜〜エストラエル国、軍部最前線司令室〜〜〜〜
『隊長〜俺らいつ迄戦うんですかね〜
援軍のせいで戦力が拮抗してからは終わりが見えなく
なっているって感じてるのは俺だけですかね〜』
『安心しろ、お前だけじゃないさ、部隊員も俺も感じている
お前は正常だよ。
司令部は何を考えているのか・・・侵攻を阻止するだけな
らば国境付近への長距離攻撃を主体とした部隊編成を敷けば
戦死者を大幅に減らせるはずだ。
ラオビサウ共和国内にまで押し返してしまえば、そこを維持
する為に兵士を配置しなければならない、言い換えれば
危険な前線に送る事になる。
そこまでする理由が俺には分からんが、兵士であるかぎり
命令には逆らえん』
『隊長、俺達だって無駄死には御免なんですよ。
俺って大して学歴も有るわけじゃないし職業に兵士を選んだ
のは、国を守るなんて立派な考えじゃなくて、ただ安定した
収入が得られれば・・・って考えただけで。
今回の出動も国境の防衛と聞いてたんですけど・・・
このまま国境を超えて進軍なんて、生きて帰れるんですかね。
俺、今度、結婚するんですよ……』
『気持ちは分かるがな、国境超えの命令は正式には出ていない
ただ侵攻前の様に国境を守るだけでは、敵に回復の時間を与え
再度の侵攻の機会を与えてしまうだろうな、それを阻止出来な
ければ結婚などと言ってられないぞ』
『あははは・・・そうですね、隊長!脅かさないでくださいよ。
明るい未来の為に、もう少し気張りますよ』
『ヘンリー隊長、リチャード、随分と重い話してますね
正式な命令はまだなんだ、でも隊長は進軍の指示が出ると
考えてますよね?
私も此処を制圧して作戦が終わるとは思えませんがね。
ガッタス教国の兵士が後方に確認された事を考えると
今までの様に武力差による優位性は保てないでしょうな
我々も戦力の増強を中央に要請する必要があるのでは』
『ヘラルド兵長、中央に要請するには今の状況では難しい
だろうな、敵の増援を確認しただけでは戦力の増員は
望めないだろうな・・・
しかしこの状況を放置すれば我が部隊の損害は増大する
だろう、ここから確認できるだけでも長距離攻撃が強化
されているのが分かるしな・・・
どうしたものか』
『先日、届いた新兵器がありましたよね、何かテストだとかで
あれ使えるんじゃないですかね隊長?』
『そうだな、上層部の要請で新兵器テストの命令が出てるしな
広域攻撃能力がある武器と説明があったし使用条件としては
問題ないだろう』
*そして兵器テストが行われ、この戦場は大量の死者を出した
ラオビサウ共和国軍、ダッカス教国軍はこの戦場から消え
その惨劇を目の当たりにしたエストラエル軍は恐怖した。
〜〜〜〜ガッタス教国のカフェにて〜〜~~
佐竹は今までの出来事を思い返していた
ウルゲンに転移させられた事、彼女達との出会い、この惑星での
神の如き振舞いなど、思い返せば地球で生活していた頃からすれ
ば想像も出来ない事の連続。
不死に近い存在になってからは、どれほどの年月が過ぎたのか。
しばらく時間の存在を忘れていたが、惑星に移住し人と文明の
管理を始めてからは時間の感覚が戻ってきた感じがした。
生と死、限られた時を持つ事で時間を感じる事が可能なのだと
知った。
地球で暮らしていた時も知識としては同じ事を感じていたが
実際に不死となり改めて生と死に向き合うと以前とは違い時間に
ついて認識は変わったと感じる。
もそも宇宙に時間は存在しないのではと私は思っている。
時間とはどの方向から事象を捉えるかである、有限の存在から無限
の存在を認知する時に時間を強く意識するだろう、逆の場合無限の
存在にとっての時間は物事が経過する感覚ではなく、事象の変化と
言う方が合っていると思う。
広大な宇宙では星々さえ誕生と消滅を繰り返している永遠の時間を
持つ者にとってはその事さえも単なる変化であって時間の感覚とは
異なる、時間の概念の違いである。
要は自分の持つ時間が永遠か否かで決まる、永遠の時間を有する
存在にとっては時間の感覚は薄れていく、私自身この様な存在に
なってからの時間とは管理している人類を観察する際の単位として
認識する程度で、自分を対象として捉える事は無い。
誕生から消滅に至る経過を時間と捉えるのは生物特有の思考では
ないだろうか?。
宇宙規模で考えれば幾つもの誕生と消滅は数十万年と言う単位で
繰り返えしている、宇宙は悠久の時の中で消滅するのか存在し続ける
のかは今は仮説として語られているだけで真実は確かめようは無い。
地球に居た頃は深く考えてもいなかったが、たしか宇宙の始まりの状態
はあらゆる物理法則は該当しない、なんて記憶があるそもそも物理現象
の根本的は事は解明されていなかったと思う、実験と検証により定義
付けられた方程式で説明されているだけにすぎない、その方程式ですら
不合理な箇所を都合に合うように帳尻を合わせている。
誕生して数百万年の生物が宇宙の真理を解明できるとは考えには無理が
あるのではないだろうか?
地球を離れ数千年、今でも地球の人類は存在しているのかさえ今の自分
には知る術もない。
自らの行いで人類の歴史に終止符を打ってなければ良いが・・・
今、この惑星で創り出した生命を見守っていると、何となくだが滅んで
行く生命体には理由があると感じている。
まだ確信はないが、ここで繰り返されている事の根幹に原因があり、
それは複雑な仕組みや制度などの社会性ではなく、もっと単純で
一人一人の心に起因する事が波及しやがて大きなうねりとなり全体に
歪みを生み出すのではないか?
『佐竹さん、どうしたんですか? 何か考え事でも?』
『あ、アイラ・・いや、なに・・ちょっと考え事さ、ところでさ
火が燃える理屈って人々は理解してるのかな?』
『そうですね・・・魔法なり魔素を感じれる者ならば、何となく
感じてるのではないでしょうか?
私達は魔素が素粒子の構成物質だと認識してますよね、その
素粒子(物質)にはBIOSで燃焼条件が書き込まれているので
それを魔素をで読み取り発火の条件を満たせば燃える。
それが魔法の基本ですもんね、それにしても誰がBIOSを
書き込んだのでしょうね?』
『そうだな、神・・・・だったりしてな』
『え〜なんですかそれ・・・佐竹さん、誂ってます?』
八話は各国の内情と主人公の少し理屈ポイ所を
強調して書きました。