第一章(7)
書き続けるって難しい、長編書いてる作者さんは凄いと思う。
ちょっと修正しました!
#7
*ラオビサウ共和国がエストラエル国に侵攻して半年が過ぎ
物資の面で苦境に立っていた。
戦況の打開の為、ビクテル・カストル最高司令官及び軍上層部
による作戦会議が行われていた。
『デーニッツ作戦参謀、現在の戦況はどうなっている』
『はい、最高司令官に報告します。現在前線部隊は国境付近より
後退しておりますが、後続の部隊と合流の後に攻勢に転じる
予定であります』
『何故に後退しておると?劣勢の理由は何なのだ・・』
『兵器性能の違い及び物資不足により攻め倦いでおります』
『前線の物資搬入を急がせよ、兵器性能の違いは数で押しきる
のだ、前線にはこれ以上の後退は敗北を意味すると伝えよ』
『前線を押し上げる旨、前線部隊に伝令を送ります』
『ここに参集した者には今更ながら話す事ではないが、慈愛と
融和だけの指導者など、今の我が国には害悪でしかない。
政策無き人口の増加、今の国家に現状の人口を支える事など
不可能な事は皆も承知であろう。
ところでパウル参謀、例の交渉だが条件に変わりはない
だろうな?』
『条約は詰めの段階です、外交官からは今のところ重要な
変更の報告は来ておりません』
『そうか……この条約により我が国の国土の3分の1が他国の
領地となる、それに加え戦争により人口は大幅に減少する。
ここに居る3名以外はこの侵攻の真の意味を知らぬ。
軍治政権の樹立による政権交代、侵攻により略奪した物資
の国民への分配が侵攻の大義名分ではあるが真実は異なる。
減った国民を養える国家に我が国を委ねるのが目的であり
残った国土もやがて併合されるであろう。
歴史の中で売国奴と呼ばれるであろうが、国民を飢えさせる
よりは……後悔は無い』
『ビクテル最高司令、ここに集まりし者は気持ちを同じくする者、
御気遣いは無用です』
『ガッタス教国に派遣中のガイル外交官からの報告では、調印は
順調に進んでいるとの報告です。
しかし併合後の我が国の立ち位置については明言は避けられて
いる様です、対等の関係を申し入れているのですが・・・・
教国の真意を測りかねます』
『仕方あるまいて、対等の条件など持ち出せただけでも
良い方じゃて、本来なら無条件で取り込まれても不思議では
なかろう。
侵攻が失敗に終わり元首ヴィクトルが責任を負う形で終決
すれば元首と一部の幹部が戦犯として裁かれるであろう、
そして我々の事が知られれば残された共和国の国民や今回の
侵攻に懸念を感じている国々からは非難される。
皆のもの、済まぬ……』
『『『『最高司令……』』』』
~~~ガッタス教国教皇庁~~~
『マロウ枢機卿、戦況はどうなっておる?』
『ガスパル教皇様、ラオビサウ共和国が戦線を維持出来ず
国境より後退していると報告が来ております、このまま
後退する様でしたら適時に介入が宜しいと思われます』
『何れは我が国に併合されるのだ、エストラエル国に荒らされ
ては困るでな。
居住地区に被害が出るようなら介入せよ、先ずは領土を確保し
改宗は戦争を終えてからでも良かろう』
『教皇様、今回の軍治支援は布教活動が目的でよろしいで
しょうか?』
『ふ、それは表向きの話よ……国が荒れ貧困に喘ぐ民はな
精神的な最後の望として奇跡を願う時、政治よりも宗教を
心の拠り所にするものよ。
それにだ我々が統治すれば現状よりは良い暮らしができる
であろう』
『今のままの体制で共和国が存続すれば教皇様の言われた通り
民は貧困を強いられるでしょう、この介入行為は民に最低限
の生活は保障されるでしょう』
『ここに集まりし枢機卿よ、これは救済なのだ、心せよ』
『『『『仰せのままに』』』』
~~~エストラエル国での管理者達~~~
『アイラ昨晩は良く眠れたかい?』
『フフフ♥・・・・あんなに激しく攻められたら脱力感で
熟睡でしたわよ、ここに来てない方々(妻達)には申し訳
ないですね、戻って話したら恨まれそう♥』
『WW・・その報告はしないでほしいよ、皆もある程度は
予想しているだろうし改まって話さなくていいよ
何か見返りを求められそうだし……』
『それよりエストラエルの戦後処理について調べなくては・・
干渉はしない決まりだが、折角作った世界だし子孫達には
少しでも長く存在してほしいからね』
『佐竹さん、少しでも長くとは?』
『旅立つ前にウルゲンから聞かされた事があってね、閉ざされた
環境で進化を続けながら生存する生物は単一の種が永遠に存続
する事は、ほぼ無いと教えられたのさ。
大雑把に言えば永遠に存続するには累代では難しいみたいだ。
言い換えれば進化の先は衰退が決められている、生命の宿命だと
ウルゲンが話していたよ。
永遠と言う時間の定義は曖昧で有限の生命と一定以上の思考を
持つ生命体が持つ定義であり永遠に近い生を有する存在は時間
の概念に違いがあるようだね。
僕自信もウルゲンから永遠とも思える存在にされてからは時間を
意識する感覚に変化が現れたよ、肉体的な死だけではなく食事
すら必要としない存在、地球の知識では神に近いとさえ思える。
死と言う時間の制限が無い状態になると時間経過に対して鈍感
になる感じかな……
アイラも僕と同じで不死に近くなったのだし、その辺はどう
感じてるの?』
*彼女達も僕と旅立つ時点でウルゲンに永遠の時間を授けられた。
メンテナンスカプセルに入り長い眠りにつく事もあるが、その行為は
寿命を伸ばす目的ではなく、あくまでメンテナンスであり序でに
寝ているだけである。
『そうですね、私は佐竹さんと共に存在し続ける事に喜びを
感じていますよ。
愛する人の側にいられる幸せ、互いが消滅するまで一緒
なんて嬉しいですよ』
『アイラがそれで幸せなら僕も何も言う事は無いね』
~~~ラオビサウ共和国軍、最前線~~~
『ネム隊長!・・エストラエル軍の進軍を止められません
兵器・兵力共に差が有りすぎます、このままでは我が軍の
前線部隊は壊滅、前線は更に後退します』
『そうか……現在の戦力と補給物資の状況で我が軍は何処まで
戦えるのだ』
『兵の疲弊、物資の補給が困難な状況であり、後退しつつの
戦闘でも前線は30日が限界と思われます、最終防衛線での
戦力確保をするなら速やかに撤退をするべきと考えます』
『・・司令部には私自ら報告する、命令が来るまでは極力現状
維持とし防衛を最優先で当たるよう前線に伝えよ』
*侵攻するラオビサウ共和国軍ではあったが、装備と戦力に余裕
があるエストラエル軍に敵うはずもなく自国の国境内に戦場を
移していた。
戦場が都市部に迫ろうとする時ガッタス教国の援軍が到着し攻撃
を開始する。
ガッタス教国軍の主力は魔法による遠距離攻撃部隊であり前衛は
エストラエル軍、後衛がガッタス教国軍の配置となった。
前衛を担うエストラエル軍には相変わらず損害は出ていたが、援軍
が来る前よりは損害が少なくなつている、一方ガッタス教国軍は
後衛という事もあり損害はほぼ無かった。
~~~管理者達の優つ~~~
『佐竹さん今戻りました~』
『偵察、ご苦労様アイラ。でどうだった?』
『佐竹さんの予想してたガッタス教国軍が援軍として参戦しま
した。
魔法による遠方攻撃は強力でエストラエル軍の機械兵器を威力、
多様性共に凌駕し、後退していたラオビサウ共和国軍を国境付近
まで押し戻しているようです』
『やはりガッタス教国軍が参戦してきたか・・・・教国も人口増加
による食糧難の問題を抱えていた所に隣国が戦争を始めた。
生活が苦しい国民は教国の政策や教義に不満を持つ者が増えて
くるだろう。
この戦争で領土を増やし食糧の生産率を上げる事とフラストレー
ションの解消、教国への信頼回復等々、参戦するメリットは多い
からね。
しかし魔法攻撃が機械兵器を上回る威力とはね……
兵器の機械化が進んできたけれど、この戦争を覗き見している
国々は魔法戦力の見直しと共に配備を進めるかもね』
『佐竹さんは地上に来た目的って・・・・なんなのかしら?
観たいだけの単純に興味?、世界を変えたい?、差支え
なければ教えてほしいですね』
『まだ確かな事は言えないのだけど、旅立つ前にウルゲンから
もうひとつ言われた事があってさ・・・・
人々を導く時が来たら、行く末を見据えなさい、とね。
深意は解らないけどね、ウルゲンはシュリの中にメッセージを
託したって聞かされたけど、いつ聞けるのだろうか?
・・・・こんなところかな……』
『そうでしたか……ではもう少し情報を集めてきますね』
*アイラは新たに参戦したガッタス教国の首都に向かった。
~~~ガッタス教国首都コムーネ~~~
*首都コムーネに潜入し数週間が過ぎた、アイラは教会の
給仕として潜入し情報収集を行っていた。
教国民の生活は質素ではあるが不自由を感じる程ではなく
政治も宗教国家として良く管理されている。
しかし教皇は高齢であり次期教皇の地位を巡り枢機卿達の
駆け引きが行われていた。
事実上は実務経験豊富なトラカ枢機卿と若いが国民に人気が有る
オブライ枢機卿の二人に絞られていた。
『トラカ枢機卿様を除く枢機卿12名の動向ですが私を含む
5名はトラカ枢機卿を支持するとの意思確認が取れましたが
マロウ枢機卿だけが決めかねているとの事です』
『ガスパル教皇とマロウ枢機卿は直接の師弟関係じゃからな・・
思うところが有るのじゃろうて。
此度の戦に参戦したのは新たな領土と信者の確保が教皇様の
目的なのは皆も承知している、その領地に派遣される枢機卿
は信者を増やし、その功績で次期教皇の地位を得る。
そして派遣枢機卿の選抜は13人の枢機卿で最も支持を有した
枢機卿が次期教皇候補となろう』
*その頃オブライ枢機卿執務室ではトラカ枢機卿同様に
次期教皇候補について動向の報告を受けていた。
『オブライ枢機卿、支持は拮抗しておりマロウ枢機卿だけが
支持を決めかねているとの情報です。
早い時期にマロウ枢機卿との会談を行う必要があるのでは
と考えます』
『まあ待て、私には教皇の職に就くには早いと思うのだよ
枢機卿の中では一番若いのも理由の一つだが、支持が割れて
いる状況ではな・・教皇とは皆に支持されていなければ
教会、政治、民を導く資格が無いと私は考えている。
ただ国民から人気が有ると言うだけではな……』
『しかし今回の戦争介入には疑問を抱く枢機卿や国民も
少なくはないのです、教義では自国の危機以外の戦闘
は禁止であり、友好国の支援とも思えません。
枢機卿の中には救いを理由に他国の領土、領民を得よ
うと考えている者もいると聞きます。
だからです、長い経験を持つ枢機卿ではなく国民の支持
もあり真っ直ぐな考えを持つオブライ枢機卿を教皇にと
考える者も多いのです』
『マアト枢機卿よ、お前がそこまで言うのなら……』
七話は引き続き地上に降りての話です
少し掘り下げて書きたいと考えています。