第一章(17)
アイラが戦争を左右する事になる兵器の開発
に関わる事になり少し悩んだが、このまま
推し進めるようになる。
~~~~~~エストラエル国兵器開発局~~~~~~
『それで大統領の思惑をどう見るフリッツ?』
『そうだなロバートも聞いたと思うが、アステリア王国の軍備拡張を
警戒しているだけだと思うが・・・、何か気になるのか?
それよりもカストル帝国の方を警戒すべきだ、今は国力が小さく他国
に対は兵器の威力以外は問題視していないが、新しく開発された
イクシオンハープの威力は今後帝国の野心を刺激しかねないだろうな。
そうなれば帝国を抑えつけるのは現在の国々では難しでしょうな』
『それは同意見だな、力には力、兵器には兵器、イクシオンハープを
解析できれば良いが一つの強力な兵器だけで戦局が決定するわけで
あるまいよ、兵器の物量、兵員数、軍事物資、同盟国など戦争は多くの
要素があるしな、それにあの兵器の欠点は設置型であり運用が限定的
な点であり攻略方法は無い事は無い』
『イクシオンハープの解析、製造を目指し更に改良を加え運用の多様性を
検討する、それと自国だけでなく技術力を持つ国があれば共同開発や
軍事同盟を結びカストル帝国に対抗する選択肢もあるでしょうな。
現在、諜報員を各国に調査の為、潜入させております』
『なるほどな・・・他国も交えてか・・・フリッツよ軍事同盟が成立した
としてだな帝国に軍事侵攻をするのか?それとも圧力を加えるだけか?
それとも別の何かを考えているのか?
現在戦争を行っている国もあるのだ、それも含め考えを聞こう』
『この状況は寧ろ好機と考えております、我が国とラオビサウ共和国の
戦争の裏には当事国以外の国が関与していると諜報員からの報告が
あります、そこで我々が現在関与していない国を含め軍事同盟を
すれば大きく二つの勢力に分かれると思われます。
世界のリーダーを目指すなら友好国と敵対国を知らねばなりません
戦争当事国以外も戦争の情報を集めているのです、今回の新兵器の威力
も知れ渡っているなら単独国家では対処不可能と考えているでしょう。
我が国が纏め役となり主導権を握る事ができれば絶大な富と権力が手に
入ると思われますが』
『なかなかに面白い考えよな、纏め役になるには力を示す必要があるの
ではないか? 何か策を考えているのだろうな』
『我が国は豊富な地下資源を有しています、そして帝国程ではありませんが
兵器の製造技術を持ち生産する力が有るのです、まずは兵器増産を進め
ラオビサウ共和国を物量で圧倒すれば各国へ我が国の軍事的優位性を示す
事になると考えております。そして今は侵攻を受けている事で兵器の増産
を民衆も受け入れている状況です』
『そうだな・・・後は大統領の合意を得る為に具体的な計画書の作成を
フリッツ、任せたぞ。
それとラオビサウ共和国とガッタス教国は同盟関係であり無理だろうが
アステリア王国は我が同盟に加えねばなるまいな、あの国の農産物は
戦中戦後に重要な役割を持つであろうからな』
『お任せください』
*この計画は大統領の承認を得て本格的に始動し始めた。
世界は戦争当事国を中心に二つの同盟に別れる事になった。
エストラエル国同盟はアステリア王国とカストル帝国。
ラオビサウ共和国同盟はガッタス教国とその周辺小国。
両同盟国を比較すれば食料、最新兵器を有するエストララエル国同盟が
軍事的優位である、しかしエストラエル国はカストル帝国を戦争を利用
し取り込もうと画策している事が後に戦況に影響を与えることになる。
~~~~~~カストル帝国放物運動研究室~~~~~~
*新設された放物運動研究室は室長にアイラが就任しサポートに二人の
研究員が当てられていた。
帝国技術研究所の所長からはまだ具体的な指示は出されておらずアイラは
今後の研究の方向性を二人の研究員と話し合っていた。
『アイラ室長、所長からは室長に協力する様に指示されてますが差し支え
なければ研究内容を教えていただきたいのですが』
彼は男性の研究員で名をトーマス、28歳独身で小太りではあるが
なかなか味わい深い顔立ちだ。
『あ、私も知りたいです!』
慌てて聞いてきたのはもう一人の研究員で20歳の独身女性、幼顔で
名をアイリ。
『そうですね、では私がこの研究所に来る事になった経緯から
話しましょうか・・・・・・』
私は二人に帝国に観光に来ていて伝承館を見学していた時に
スカウトされた事、ここに来る前はエストラエル国の大学に研究員
として在籍し物理学が専門で力学と数学を加えた弾道学が私の研究
をしていた事、この研究が帝国の何かのプロジェクトに役にたつ
らしいと聞かされここで研究をしないかと誘われた事を聞かせた。
かなり大雑把ではあったが二人は納得したようだ、そして私も
彼らの事を聞かされた。
トーマスは研究所では個体・液体燃料の研究を研究をしていたようで
初めはこの研究室に来る事に戸惑っていたようだ。
アイリの方は研究所に来たのは最近らしく私の研究室が最初みたい。
トーマスが来た事で私に課せられた目的はミサイルの開発なのかなと
感じている、まだこの世界では遠くの敵を攻撃するのは砲撃系の魔法、
攻撃魔法を使えない者は銃を使う。
何かを飛ばすのも魔法が使用されていてミサイルの様な物はまだ
開発されてはいない。
ここに潜入する為に用いた知識ですが、いいのかな・・・開発しても
旦那様からは現場での判断を任されているけど、こんなの完成したら
戦争の常識を一変させてしまう気が・・・でもこれで信用を得られたなら
もう少し帝国のお偉方と知り合える可能性があるのよね。
研究所の様子を見ながら知識を小出しにしましょうか。
『なるほど・・・室長はスカウトされたのですね、弾道学については僕は
初めて聞きました、僕も研究室に呼ばれたのは何か理由が有るのかな?』
『あ、それはね・・・私が所長に頼んだからなか?この研究を進める条件
として燃料の専門家を加える事をお願いしたのよ、あと事務仕事を任せ
られる人員もね』
『え!私って事務仕事なんですか・・・・研究がしたくて研究所に来たのに』
『アイリさん、心配しないでくださいね、貴方には私の研究助手として働いて
いただきます、よろしいかしら?』
『はい!嬉しいです。ところで弾道学って何でしょうか・・・』
『それをこれから二人に説明しますね・・・・・・・』
そして二人に弾道学とは何かって事を説明した、物を遠くの目的の場所に
到達させる学問なのだが、質問されたのは「魔法でとばししてはダメなの
でしょうか?」ま、聞かれると思ったわ。
その質問に対しての答えは「魔法では目視出来る範囲でしか飛ばせないし
魔法使いにしかできないわよね、物を飛ばせる方法が見つかれば誰でも
遠い目的の場所まで物を飛ばす事ができるのよ」その説明でアイリはキョトン
としていたけどトーマスは何かを考え込んでいた。
『アイラ室長が僕が今までの研究に求める事はその…………推進剤なので
しょうか?』
『その通りよ、燃料の専門家を所長に要望したのは貴方が今言った推進剤
としての燃料を得る目的なの、だからね貴方の役割はこの研究の要だから
期待しているわ』
『あの………私は何をお手伝いしたら良いのでしょうか?』
『アイリは私とトーマスの助手をお願いするわ、それに広い視野で見ていて
私達が気づかない事や貴方独自の発想を遠慮なく聞かせてね』
『私がですか・・・自信はないですけど、精一杯頑張ります』
『では、皆さん今日も宜しくお願いしますね』
・・・・・・そして数ヶ月が過ぎたけどトーマスの研究が行き詰まっていた
推進剤としては液体燃料を選定したが燃料を推進運動に変える方法について
良い考えが浮かばなかったようなのだ。
所謂、ノズルと噴射についてなのだが見たことも無い物を開発するのは
大変だと思うわ、私が口を出すのも彼の意欲を奪いそうだし・・・
見かねたアイリはトーマスに冷たい飲み物を持ってきた。
『ほら、トーマス。これでも飲んで頭を休めなよ、今詰めても良い考えは
浮かばないと思うんだ・・・ね』
『ああ、ありがとうアイリ、何かが掴めそうなんだよもう少しで
あはは、大丈夫さ・・・』
『私も、飲んじゃお』
『二人して何を話しているのかな?』
バン!(後ろからアイラがアイリの肩を叩いた)
『ぶっ(飲み物をストローから吐き出した)何ですか室長!驚きましたよ』
『あ、ごめんなさいね、驚かせてしまいましたね、大丈夫?』
『んん・・・・』(その様子を見ていたトーマス)
『どうしたのトーマス、何かあったの』
『ええ〜もしかして私、飲み物吹きかけましたか〜、ゴメンナサイ』
『大丈夫だよアイリでも、ありがとう・・・かな、アイリのお陰で良い
考えが浮かんだよ!、室長、実験室に行ってきます』
『あらあら、じゃアイリさん、ゆっくりお茶しましょうね』
『私、役立ちましたか???』
『たぶんね、フフフ』
『やりました〜!』
◇◇◇トーマスが実験室に篭って数週間が過ぎた◇◇◇
『アイラ室長、飛ばす為の装置の考えが纏まりましたので
聞いて欲しいのですが今、お時間はよろしいでしょうか?』
『良いわよ、打合せ室に行きましょう』
『模型を作ったので見て下さい・・・・・・・』
誇らしげにトーマスは説明し始めた、模型の外観はミサイルもしくは
ロケットと言える形状で何も参考になる物が無い状態から発想した事は
やはり優秀なのだろうと思った。
外観と推進の説明を聞きくと発想のきっかけはアイリが飲み物をストロー
で吹き出したのが参考になったようで、吐き出された飲み物が推進剤、
ストローが外観(形状)となり運ぶ物をストロー状の部分内部に収納する
と言う内容であり、この世界に無い物を単独で考えた事は優秀なのでしょう。
私が手伝わなくても完成まで行きそうな感じ、後は実験の繰り返しで
完成度を高めるだけよね。
彼の優秀さを考慮すると二年位でミサイルは完成しそうだわ、帝国は
完成したらイクシオンハープを搭載するのでしょう、他国にとっては
脅威であり対抗できるのかしら?
それに他国で任務に就いてる方達は戦争の回避で動いてるのよね・・・
でもミサイルなんて物が出来たら戦争に突き進んでいくのでは・・・
まだこの国に滞在している旦那様に話してみましょう。
*アイラは研究に一段落ついた事を所長に報告し休暇願いを出した
もう少し帝国の観光をする事を理由にした。
佐竹の滞在先は分かっていたので休暇初日に会いに行く。
『アイラどうした?』
『実は帝国の重要施設と思われる所に潜り込むことが出来たの事で
今後の方針を相談したいのですが』
『何か不安な事でも有るのかい?』
私は旦那様に研究機関の研究員として雇われる事になり研究内容は
大量破壊兵器に転用される技術開発をしている事、それは今回の私達が
行っている計画とは正反対の結果になるかもしれないしね。
『重要施設は兵器開発関係でして私はそこでミサイルの研究開発を
しているんです、私の予想ではイクシオンハープを搭載するのでは
と思っています。
その様な状況になれば平和的解決からかけ離れた事態になるのでは
と心配しています、それに他の方々も平和解決に動いていると
思うので・・・』
『それを悩んでいたんだね、僕も皆に平和解決をと話したけどさ
絶対にって話じゃないのさ、仮に戦争が拡大し多くの民が失われても
一部の民を保護し記憶操作を施し世界を再構築するつもりだしね。
成り行き任せじゃないけど、この世界の事はこの世界の住人が
良し悪しを含め決める事だと思っている。
だから、気に病むことはないよアイラ』
当然の疑問だよな、妻達には平和的に戦争回避と伝えていたんだよな
アイラが気に病むのも理解できる、これは他の妻達にも伝えないとな。
『そうだったのですね・・・旦那様の意に沿わないのではと不安に思った
ので。今日お話できて良かったです、この事は他の方々に話さなくて
よろしいのでしょうか?』
『それは僕の方で話しておくよ』
◇◇◇数日後アイラは実験室に戻って来た◇◇◇
『ただいま〜お土産を買ってきたわよ〜、開発の方は進んでる?』
『『御帰りなさい室長』』
『縮小した機体での実験を行っているところです、燃焼時間と到達距離の
データを纏めているので所長には後ほど確認をお願いします』
『分かったわ、思ったよりも進んでいるようね』
この短い期間では中々の成果でしょうね、今のままでは高度に制限が
あるので噴射ノズルの角度や飛行翼の様な補助装置の追加によって
飛行距離を伸ばす工夫が必要よね。
『現状での飛行距離はどんな感じ?』
『最終的な構造体の大きさを考慮して単純換算すると最適とされる角度で
発射した場合、20km位でしょうか・・・』
『初速と噴射時間のデータとは取ってるよね?』
『はい、大丈夫です』
『では後で私が計算上の到達距離との関係を精査してみましょう』
何となくですが今の段階では良い感じで開発が進んでいるみたい
後は私が導いていけばって・・・かなりヤバいのが完成しそうだわ。
でも旦那様の許可も得てるし、これが原因で戦争が加速したとしても
それはこの世界の人々が出した答えなのよね・・・全ての意思が統一
されているとは限らないけど反対意見を持っていても実行出来なければ
認めた事と同じなのだから、運命と思い受け入れるしかないわ。
さてと・・・私は少しヒントを与えてから戦争当事国で活動中の
方々に現状を伝えに行こうかしら。
これ以降展開を速めて行く予定です(^^)