第一章(16)
妻達の策略も初期段階を終え次の行動準備段階になってくる各国の抱える問題が見えてきた。
~~~~~〜ダッカス教国、ティーナの憂鬱~~~~~~
旦那様は暫くはアステリア王国よね、その次はこっちよね・・・
教国は時期教皇が選出に多少の陰謀は有ると思うけど、教国の何方も実力者。
有力候補は二人、下手に動けば自分の首を締める事になるのは両者とも理解
しているわよね、となれば実力勝負って感じかしらね?
これでは旦那様が来ても現状確認だけで直ぐに移動されてしまうわ。
でも下手な事したら怒られそうだし・・・何か良い方法はないかしら・・・
以前にあった暗殺計画を利用するのは・・・バレたら怒られるな。
仕方ない、メイドの仕事に戻りますか、新たな情報が出れば相談する方向性で
考えましょう、今日はマロウ枢機卿の奥方様の護衛任務が入っているのよね
何か新しい情報が得られないかしら・・・
『ティーナ!』
ガチャ(ドアを開けティーナは婦人の部屋に入った)
『お呼びでしょうか奥様』
『予定通り出かけますよ、準備しなさい』
『御召し物は如何いたしましょうか?』
『このままで良いわ、馬車と護衛を一人用意して』
護衛?先日の事件で私の実力は承知のはず・・・それでもなお護衛を
付けるとは・・・でも一人・・・念の為って事でしょうか?
私も武器は携帯した方が良さそうね。
私達は屋敷を出て郊外へと馬車を進めた、走り始めてから婦人より
目的地を告げられた、行き先はガスパル現教皇の別邸とのこと。
まさか、今でも二人の関係は続いているの???
前に来た時の会話の内容を考えると二人の関係は終わっていると
思うのだけれど・・・
関係を疑われる危険が有るのに会いに来る理由は有るのかしら?
また盗聴の準備しなきゃ。
『どうしたのじゃ、アリアン、今の時期ここに来るのは良い考えでは
ないぞ、火急の案件か?』
『ご相談があり参りました、先日の襲撃の件の事なのですが、始めは
時期教皇選びに関係した事ではないかと考えてましたが、何となく
別の目的があったのではと思えるのです、それでご相談したく参りま
した』
『聞こう、話してみよ』
『襲撃の目的なのですが、教皇選びとは別の目的があったのではと
感じたのです、私達親子に危害を加える事が有効な手段となり得る
とは思えないのです』
『うむ、誘拐でもされ事件が明るみにならねばマロウ枢機卿を脅す手段
にはなるが、今回の襲撃は表沙汰になっている事を考えるとアリアンが
不安に思うのも理解はできる、じゃが他に理由など考えられぬが・・・』
『もしかしたら私達が狙いだったのかしら・・・
すいません、変な事言いまして、でも・・・』
『何か思い当たる事でも有るのか?』
言われてみれば少し違和感があるな、それにアリアンの不安と感じる
事も気にはなる。
ここは儂も調べてみる必要がありそうじゃな。
『これと言って確証は無いのですが、ちょっと気になってまして・・・
一度お話を聞いて頂きたくて今日ここに参りました、ご迷惑でしたか?』
『よい、アリアンがが気にしているのだ、儂も少し調べるとしよう』
さて、盗聴はしているのだけれど・・・二人の関係性については以前の
盗聴で確認しているので会話から新しい情報は得られなかったわ。
襲撃の目的か・・・私は知っているのよね・・・
教皇と彼女の関係を知ったマロウ枢機卿が計画した犯行だって
事を・・・どうしようかな・・・でも私が介入する理由はないわよね?
むしろマロウ枢機卿の計画が露見し彼の立場が悪くなる方が私達には
よろしくないでしょうね。
ここは枢機卿の動向次第では協力者の変更も考える必要がありそうね。
~~~~~〜アストリア王国王城~~~~~~
『大公ルコントよその後の戦況はどうなっておる』
『エストラエル国の新兵器の影響により戦場は膠着状態と報告が上がって
おります』
『新兵器の使用でエストラエルは優位に立ったのではないのか?
何故この期に攻め込まぬのだ?』
『兵器の威力が予想を大幅に上回っていたようで、前線に展開していた
エストラエル軍にも少なくない犠牲者が出たことにより国内で反戦運動
が高まり大統領府はその対応に追われ、前線を一時後退しているとの
情報がありました』
『何と不甲斐ない事よ、大統領も人気商売よの国民の反対を押し切る気概
は無いのだな、今後の行動に関する情報は無いのか?』
『現在確認されているのは反戦運動の抑え込みと報道統制による戦争の
正当化を進めていると報告が上がっています』
ここは静観するしかないであろうな、新兵器により早期に決着がつくと
考えていたが・・・先の事は分からぬものよ。
じゃが、このまま長引けば我が国の食料問題に飛び火しては食料不足の
原因が明らかになる事は避けねばならぬ。
『大公よエストラエルに長引けば食料の輸出に影響が出る事を伝えよ。
長くても後一年が限度であり、それ以降は支援しかねると』
『承知しました』
~~~~~〜カストル帝国、アイラ行動開始~~~~~〜
◇◇◇アイラはベラケス学芸員と共に帝国の技術研究所に来ていた◇◇◇
『ここが研究所です、所長にはアイラさんの事は説明していますので
施設の見学と所長が話をしたいと言ってます、よろしいですか?』
『こんな重要な施設を見学するだけでも嬉しいのに、所長さんと
お話ができるなんてとても光栄ですわ、ありがとうございます。
でも何のお話なのでしょうね?』
『それはアイラさんの研究内容に興味があるのでしょうね』
おそらくベラケスさんに話した内容が伝わったのでしょうね、あれは
兵器転用が出来る技術だものね。
どんな技術にするか悩んだかいがあったわ。
あ、部屋の外から足音が近づいて来たみたい、所長さんかしら?
◇◇◇部屋のドアが開き初老の男性が入って来た◇◇◇
私とベラケス氏は椅子から立ち上がり入って来た男性に挨拶を
した、おそらく所長ですわね融和な表情ですが眼光がなかなかに
鋭いようです、油断出来ませんわ。
『お待たせしました、所長のベェルナー・ブランクです』
『こちらこそ、お会い出来た事、嬉しく思います。
ベラケス氏からお伺いしましたが、私の研究に興味がお有りと
お聞きしました、ベィルナーさんを満足できるお話になれば
良いのですが』
『今回はそのようにお考えしなくても良いのではないでしょうか?
こちらとしてはベラケスから聞いた内容をもう少し詳しく聞ければ
と考えております。
アイラ様には研究内容をお話頂き、いくつか質問をさせて頂ければ
と・・・宜しいですか?』
なるほど・・・話をする前に質問があるって事を前置きする理由は
かなり興味があるって事よね、弾道計算だけならこの世界でもいつかは
誰かが思いつくだろうし、放物線に関する知識はこの世界でもあるし
魔法が万能すぎる為に研究されなかったのでしょう。
あまり慎重に考えなくてもいいでしょうね。
『今まで誰からも興味を持たれた事の無い研究テーマでしたので
嬉しい申出で、何でも聞いてください』
所長の質問は、何故この研究テーマにしたのか?、この研究成果を
何に役立ってようと考えているのか?など実用に関する質問が多かった。
特に答え難い質問としては研究テーマを選んだ動機かな、これは単に
興味を持ってもらえそうな題材にしただけなので答えとしてはマズかった。
なので、純粋に知識の探求であり重力が物体に及ぼす影響が研究テーマで
あり職業としての研究テーマは他にあると答えてみた。
かなり強引な答えではあるのだけれど、研究者ってこんなものよね・・・
たぶん!で押し切った。
この件に関しては無事に納得してくれたようで良かったわ、ここからが
今回の目的になるのだけれども、この世界には魔法が存在しているけれど
兵器として利用可能な強力な魔術師は非常に数が少ないのよね。
だから魔法以外の兵器を開発出来る国は、その方面の技術者を探し、育成
に力を注いでいる、今のところミサイルの様な兵器は開発されてないが
大砲は存在していて目標を狙う方法としては砲撃手の魔法熟練度に依存
されている、目標を捉え魔法により軌道を修正しているらしく命中度は
魔法力により大きく変わる、しかし魔法を使うのであれば武器としては
直接魔法で攻撃した方が効率が良く大砲に魔法を使う魔法師はほとんど
いない、弱い魔法力しかない魔術師がこの任に当たっていることから兵器
としての重要度が低いみたいね。
私の研究成果で目標を捉える精度が向上すれば、兵器としての価値は
飛躍的に上がると思うのよね、魔法が使えなくても、新兵でも強力な
攻撃兵にする事が可能になる。
カストル帝国は魔術師は少ないけど工業が他の国より進んでいるのよね。
先日の兵器テストの結果も示す通り威力が大きい程、起動方法が難しく
なるみたいだし、ミサイルがあれば・・・もしかして開発してるのかな?
『では、お聞きしますが現状は理論だけなのか、理論を基に実験済み
なのか教えていただけますか?』
『そうですね、理論を検証する為に投石機を使った実験で確認している
ところですわ、飛ばす物の形状や重さによっても理論値と誤差が確認
されていますのよ。
今はその誤差の理由と修正を行っているところですわ』
『おお〜それは素晴らしいですな、その研究について貴国では何か
アプローチは来ているのかな?』
『この研究は魔法が代用手段として使える事もあって周りからは然程
注目はされていませんのよ、私も何かに実用できればと考えていますが
今のところは探究心で研究を続けている状況ですわ』
この感触だと此方の狙い通り研究所にスカウトされるのでは?
ま、今回選んだ研究テーマは研究所に興味を持ってもらう為に選んだ
のだから予定通りかな?
でも少し不安要素も有るのよね、カストル帝国は工業技術が発展してる
のでミサイルが発明される懸念はあるのよ・・・
現況の遠距離攻撃は魔法が占めているけど、魔法に頼らない攻撃方法が
確立されれば各国のパワーバランスに変化が生じ危機感を持った国が
次々と現れ軍拡路線を歩む懸念があるのよね・・・
そうなると各国がこの戦争に参戦してしまう可能性があるわ。
私達の目的はエストラエル一国の領土拡大と軍事的優位を持って他国を
属国化してしまう事が無いように監視する事だったのよね。
ま、スカウトされても開発は一気に進まないと思うし、ミサイル兵器
の開発と大量生産はまだまだ先でしょうから。
まずは潜入することを優先しましょうかしらね・・・
『一つ提案なのですが、ここの研究所でアイラさんの研究を続けて
みてはどうでしょうか?
我々は貴方の研究にとても興味が有るのです、十分な報酬は約束を
します、此処で存分に研究してみては?』
『私の国ではこの研究は興味を持たれていなくて・・・私としては
そのお話、とても嬉しく思います。
ほとんど趣味のような研究テーマですが、よろしいのでしょうか?』
『是非とも歓迎いたします』
話は決まり、私は研究所に勤めることになった、研究テーマに合った
部署が現在無く、新たに放物運動研究室が新設され主任研究員となった
私、一人しかいないけど・・・
〜〜~~〜〜~~ラオビサウ共和国、宗教戦士ネム〜〜~~〜〜~~
◇◇◇ナーマは教会に宗教戦士となったネムに会いに来ていた◇◇◇
『面会をお願いしたいのですが』
『お待ち下さい、信者の方ですか?』
『信者ではないのですが、取り次いで頂きたいのですが、私はナーマ
看護師です、此方の宗教戦士ネムさんに面会したいのですが』
『お待ちください、伺って来ます』
宗教施設ですね~簡単には取り次いではくれないなー大丈夫かな?
失った同僚に対しての心の傷は癒えてると良いのだけれど。
責任感と優しさがね〜ネムさんの良いところだけど、割り切った考え
方しないと精神が不安定になっちゃうよ。
これから共和国の上層部に対し影響力を持てる存在になって頂くの
だから・・・
『お待たせしました、ネムさんの確認ができました、今は訓練中で
面会用談話室で待っててほしいそうです、ご案内しますね』
『ありがとうございます』
ふ〜大丈夫みたいね、今日は彼の精神状態と現状確認が目的だし
ま、具体的に計画に対して彼の状態が対応可能かを確認できれば
今日の目的は達成ね、以前会った時のままでは諦めるしかないけど。
『久しぶりですねナーマさん、あの時はお世話になりました、今は
この教会で宗教戦士として日々鍛錬に励んでおります。
今日は俺に何か御用でしたか?』
『元気にしているか気になりまして、同僚だった方々の事は整理
できたのでしょうか?』
『こちらで神に祈りを捧げている事で少しづつですが運命であり
彼らは役目を全うし神に召されてのだと思えるようになりました。
自分勝手な事に思われるかもしれませんが、今はこれが全てです』
『それで良いのではないでしょうか?この様な事に正解は無いの
ではと私は思いますわよ。
亡くなった者達も今を生きるネムさんが苦しんでいるのを決して
望んではいないでしょうから。
どんな形であれ御元気になられて良かったわ』
それから私達は離れてから今までの事、彼は祈りと宗教戦士の
訓練の話で、私は野戦病院を辞めた事などを話した。
『ナーマさんは看護師を辞めて今は何を?』
『これから共和国評議委員の秘書官になる為の面接なんですよ
貴方と行動を共にして政治の事を考えさせられてしまいました。
私にも何か出来ないかと・・・それで』
『そうでしたか・・・俺が弱かった為に・・・すまん』
『良いのです、気にしないでくださいね私が決めた事ですから』
この後、お互いの連絡先を交換し、何かあれば会う事を約束し
談話室を後にした。
次回から少し話の核心的な部分を書きたいと思っています、頭の中では第一章の結末は
出来ているのですが、中々話を詰められないでいます(TT)




