第一章(14)
アステリア王国でのラムの諜報活動のその後と王城での
出来事。そして妻達は一度集まる相談をする。
アイラはカストル帝国での行動を開始する。
第一章(14)
この辺で一度ルーベン氏に報告しに行った方が良さそうね。
王族から得た情報は、ちょっと話せない内容ですし・・・
少し事実と違う内容で報告しないとダメね。
~~~ルーベン邸~~~
『ラムさんお久しぶりです、お仕事は順調でしょうか?』
『今回の件ではお世話になりました、今日は約束通り取材で得た
情報の報告に参りました』
知り得た情報をそのまま聞かせるるのはマズいと思う、彼も
以前の会話で、この戦争に対して疑問を持っていたのよね。
この戦争を始めた理由は政治的思惑が多少あるみたいだけど
殆どが王族の娯楽に有るなんて言えないわよね・・・
特にあのバカ王子の事は絶対に話せないわ。
『王族の方々は王国民の事を案じておりました、この戦争に
ついても心を痛めていました』
『そうでしたか・・・あの王が・・・』
『ルーベンは王の事をご存知で?』
『私は以前に王宮の食材管理の仕事をしていたのですよ
その時に何度か王を拝見する機会があったのですが
あまり良い印象はなかったなと・・・
それでラムさんの報告を聞き、何となく違和感があり
まして』
あらま、彼も王に対しては先入観や敬う気持ちは無く
正確に判断できるようね。
彼なら私達の意向に沿う働きが出来そうね。
『その様に思われていたのですね、ではもう少し注意深く
取材してみたいと思います』
『あはは・・・ちょっとマズい話をしてしまったでしょうか?
批判とかそんな感情ではないので忘れてください』
『ご心配なさらないでください、私も今回の取材に協力して
いただいた事に感謝しているのですよ。
ルーベンさんにご迷惑になるような事はいたしません。
でも、意外でしたわ、ルーベンさんは愛国心が強い方だと
勝手に思い込んでいましたから・・・』
『ああ、愛国心は強いですよ、でもそれと国王を思う事とは
別ですから・・・』
『そうなのですね、今日は現在までの取材報告と言っても
まだ記事になる様な事は取材できてないのですが・・・
ま、定時報告と思ってください』
『取材は出来ているようで安心しました、どのくらいの期間
こちらで取材をしていかれるのですか?』
『とくに期間は決めてはいないのです、この戦争に対して
王族、王国民がどの様に受け止めているか・・・
その辺が取材できればと考えてました』
その後、一通り報告を済ませた私はルーベン邸を後にした。
でも毎回が今回の様な報告では逆に怪しまれる様な気が
しますね、彼も愛国心と王族への感情とは別だと話していたし
表現方法と多少の内容改変すれば受け入れやすいのでは?
そして段階的に真実に近づける感じで・・・
最終的には私達の協力者となってもらえればね〜
その為には王族に対して不信を抱かせてしまうのが近道だと
思うのよ、内部告発的なものでは逆に私が不審がられるわよね。
もう少し王族の実態を確認すれば、役に立つ情報が得られる
でしょう。
彼をこちら側に引き込むのはそれからね。
~~~アステリア王国、王城~~~
『カヌート王よ、この戦は数ヶ月で我がエストラエルが勝利
するだろうよ。
此度の貴国から受けた支援には先の約定を果たすとしよう』
『頼むぞジェームズ大統領、領土拡大は我が国にとって国力を
増す為に必要なのでな』
『しかしだ、これ以上の穀物輸出は国内の需要に影響が出ている
状況を考えると難しのだ。
次の輸出から二割は減らさんと国内で民衆が騒ぎ出すかもしれん。
公には戦争により輸出が増えた事は隠しているのでな』
『現在までの輸入で備蓄した穀物であと2ヶ月は戦えるだろうよ
それまでに決着はつける、心配はいらぬよ』
『大した自信だが確証はあるのか?』
『この戦争で我が国は新兵器をテストも兼ねて投入し大いに成果を
出している。
この状況ならば支援しているガッタス教国は手を引くであろうな
いくら大義が有ろうとも他国の戦争で兵を失うのは本意では
ないだろうからな。
教国の支援が無ければラオビサウ共和国は時間の問題よ』
『そのように事が運べば良いがな・・・軍事力が及ばなければ
遊撃戦になるのではないか?
死兵となり奇襲や待ち伏せの行動をされたら厄介であろう』
二人の会談を聞いていると、この戦争は長期化する様な感じね。
みんなの状況はどうなっているのかしら?・・・一度集まって情報を
整理する必要がありますわね。
でもこちらの状況だと上層部を消さないかぎり戦争を終わらせるのは
無理なんじゃないかしら?
根本的な原因は王族の欲と戯れだし、国益から見れば王族意外も
この戦争で受ける利益は大きいのよね。
民が潤っている状況で戦争被害も無い、これでは王国民が戦争に
反対する事は無いでしょうから・・・
でも、事情を知らなければ唯の暗殺よね・・・それに王族を暗殺しても
替わる者が同じ考えであれば意味が無いし。
現状は王国民も戦争に反対している者は極一部だけな気がしますね。
やはり私意外の状況も知りたいわね。
~~~エストラエル国、管理者が宿泊するホテル~~~
『佐竹さん、ラムから今回のミッションに参加しているメンバー
と意見交換したいとの要請が来ていますが返答はいかがいたしま
しょうか?』
『そうだな、他の子達からは何か言ってきているの?
アイラの方はどうなの?』
妻達は僕から見てもかなり優秀だよな、何かあったのだろうか?
今の進行状況も気になるし・・・僕も話を聞きたいな。
『私は今のところ何もないですね、でも会って話したいかな?』
『じゃ、このホテルで行うとして、日程と会議室を押さえてくれ。
僕も妻達と話したいしね、ところでカストル帝国には誰を送ったの?』
『ラオビサウ共和国はナーマに任せて私がカストル帝国を担当する事に
なりました』
『では準備しますね』
〜〜〜〜妻達が集まる一月程前のカストル帝国でのアイラ〜〜〜〜
何も考えずに来てしまったけど、どうしようかしら・・・
兵器開発では、他の国々比較しても技術力が抜きに出ているのよね
これは国民の殆どが魔法を使えないのが関係しているのでしょうか?
最近使用されて新兵器は今後の展開に大きく影響してきそうだし
強力な兵器による戦争の抑止力になってしまうのはどうなのかしら?
互いにナイフを突き付け合い、つかの間の平和を得る。
突きつけ合うのは指導者だけが感じているだけで、一般大衆の生活には
関係ないのよね・・・均衡が破れ争いが始まり生命の危険が迫るまでは
何事もなく生活するのよね。
兵器開発の現場でも観察しようかしら・・・
首都アシコニに来てみたけど、兵器開発の場所と潜入方法を
どうしましょう・・・
帝国王城に行けば情報を得られるかも、それに王城なら観光案内所
で聞けば分かるよね。
*帝国観光案内所
『すいませ〜ん、王城って観光はできるのでしょうか?』
『お嬢さん、観光客かい? 残念だが、観光客は王城内には
入れないよ。近くにある帝国歴史伝承館なら観光できるよ
それにそこからなら王城は見えるよ』
『そうですか、ここからはどう行けば良いのか教えてもらえますか?』
『ここからだと歩きでは遠いな、このパンフレットに利用できる
交通機関なんかが記載されてるから使いな』
『ありがとうございます』
予想より遠かったわ、鉄道の乗り換え一回と徒歩で30分って
首都からの観光施設としては致命的に遠いのでは・・・
せっかく来たので歴史伝承館には行きましょう。
なかなか歴史資料を良く纏められてますね、歴史を監視してきた
私達から見たら、中には少し都合よく修正した解釈も含まれている
ようですけど、統治者の立場を考慮すれば仕方ないわよね。
あれ、何か騒がしいけどどうしたのかしら?
『これは誰の指示で展示内容を変更したんだ!』
『これは先日、帝国情報局より展示内容の修正命令が来たのです』
『なんだって・・・後で僕が直接確認する、それまでは前の展示物は
そのままにして置くように』
『承知しました、ベラケス学芸員』
『では、後ほど』
<<<ドン!>>>
『キャ!』
『あ、大丈夫ですか?』
よっしゃー、さり気なく後ろに回ってチャンスを待っていたのよ!
ここから何か情報が得られれば良いけど。
『はい、私の方こそ余所見をしてました、この通り大丈夫・・・イタ』
『もしかして、足を痛めたのでは?』
『あ、はい・・・少し捻ってしまったみたい・・・』
『それは申し訳ない、私にも責任がある、この施設には医務室が
あるのでご案内します、よろしいですか?』
『私も悪いのですが、お言葉に甘えさせていただきます』
私は彼の申し出を受け医務室で治療を受けた、痛みは演技なのが
心苦しいのですが仕方ないですよね。
でもこれで終わる訳にはいかないのよね、何とかこの後に繋げないと
ちょっとお礼を兼ねて誘ってみましょうか。
『ありがとうございました、遅れましたがアイラと申します
カストル帝国には観光で参りました』
『そうでしか、私はこの伝承館で学芸員として勤務してます
ベラケスといいます。
私の不注意からケガを負わせてしまいました、観光と伺いましたが
ケガをした足では歩くのは負担が大きいのでは?
差し支えなければ私が車でご案内したいと思うのですが?』
へえ〜車を持っているのね、確かこの国では車は上流階級の者で
なければ所有するのは困難だったはず、これは幸運だったかしら?
『まあ!車をお持ちとは・・・足の事があるので、お願いします』
『任せてください、さ、行きましょう』
私達は何箇所か観光地を周った帝国は工業国であり観光施設は多くない
このままでは、やっと出会えた情報提供者候補に逃げられちゃうわね。
何とかしなくちゃ、食事とか誘う?それに彼に興味を持ってもらうには
どうすれば・・・
私の事は今のところ観光者だよね、この国の上流階級なら研究者になら
興味を持ちそうね、この路線で行きましょう。
『あの〜運転はお疲れでは? 一度休憩してはいかがでしょうか?』
『そうでした私の方こそ気づきませんで、お腹空いてますよね?
この近くに知っているレストランがあります、そこで食事でも
いかがですか?』
『はい、お願いします』
私達は高級そうなレストランに入った、予約無しでも大丈夫なの
でしょうか?
彼は店内に入りウエイターに何か話しかけている、ウエイターは厨房
に向かい誰かと話し、こちらに戻って来て私達を奥の席に案内した。
凄い、流石の車持ち!
テーブルには食前酒が運ばれて来た。
『では、今日の出会いに乾杯!』
『乾杯』
『素敵なお店ですね、お料理が楽しみですわ』
『ここは贔屓にしている店なんですよ、味は保証します』
食事は素晴らしく食べ過ぎたかな?後は彼が私に興味を
持ってもらえれば・・・
『アイラさんは休暇で観光を? 時期外れの様な気がしますけど』
『確かにそうですね、私の仕事は研究職なんですよ、だから一段落
するまで纏まった休暇は取れなくて今になった次第です』
『そでしたか、差支えなければどの様なお仕事を?』
だよね~聞かれると思った、彼は伝承館の学芸員で上流階級だもの
私が研究系の仕事をしている事を知れば興味を示すはずだよね。
さて、何と答えたら良いか・・・
軍事技術に利用可能な研究が理想的じゃないかしら、技術レベルも
この文明に合わせないと・・・
何が良いかしら? 弾道計算なんて良いんじゃ? 帝国の技術は
強力な兵器であっても魔法と産業技術の合わせ技であって、設置型の
兵器には然程影響は無いけど砲弾なんか飛ばす場合は今でも
行き当たりばったりなのよね。
女性が研究してるんだもの凄惨な研究じゃ無い方が受け入れやすい
と思う。
『物理学が専門で今、力学と数学を加えた弾道学が私の研究テーマ
なんです。私意外は研究している方がいるとは聞きませんが』
『弾道学ですか・・・私も初めて聞きました、是非お話を聞かせて
下さい、よろしいでしょうか?』
『構いませんよ、あまり面白い話ではないですし、秘密って訳でも
ないですので』
その後、私達は研究についての話をした。
研究に興味を持ったのは幼少期に遊の中で感じた疑問がきっかけ
だった事、エストラエル国の大学に研究員として在籍している事。
研究論文を仕上げたので長期休暇を取って観光に来たなどを話した。
彼は楽しそうに聞いていたと感じた。
『物を目的の場所に飛ばすには飛ばす角度と速度を計算してあげれば
大凡ですが飛んで行きます、他の要因も影響しますので完全とは
言えないのですが』
『面白いと思います、私達は物を飛ばす時は魔法の力を利用します
よね、到達点をイメージして行うのですが個人の魔法能力により
精度にバラツキがあるんですよね、その点アイラさんの方法だと
誰でも同じ精度で物を飛ばせる事になりますよね?
とても素晴らしい研究テーマではありませんか!』
これは軍事技術となるのではないか?
ここで知り合ったのは偶然だろうが、アイラさんの研究は帝国に
は必要な技術となるであろう。
私は学芸員とは別に帝国軍部技術顧問にも所属している、帝国が
開発中の強力な破壊兵器を使った遠距離攻撃にアイラさんの研究は
使える予感がする。
エストラエル国の技術者ではあるが、話をきく限りでは研究内容は
それほど注目されてはいない様子、研究に対して資金を含む強力を
申し出て帝国に来てもらうのはどうだろうか?
話してみるか・・・
『ありがとうございます、この研究をしていてこの研究に興味を
持った方に出会えたのは初めてです。嬉しいな〜』
『私は学芸員とは別に帝国の技術研究所にも所属しています。
アイラさんの研究は今、帝国で進められているプロジェクトに
対して大いに貢献できると確信しました。
もし関心があれば私のお話を聞いていただけませんか?』
ヨッシャー乗ってきたわね、おそらく兵器絡みよね。
兵器関連であれば、間違いなく帝国の中枢機関でしょうから
こちらの希望通り・・・このまま進めましょ。
『私なんかの研究が・・・何か不思議な感じです。
是非、お話を聞かせてください』
『では、研究所にご案内いたします』
最近内容が把握できなくなってきたので、内容を纏めた
メモを作成していました。
作成中に発見した所を今回修正しています。




