第一章(13)
ガッタス教国でのティーナの行動を中心に書いてます
教国の動向が今後の展開に重要な意味を持つのか?
序盤の話です。
#13
〜〜~~〜〜~~ラオビサウ共和国〜〜~~〜〜~~
ネムさんの罪悪感は多少なりとも癒えたかしら・・・
家族に対して謝罪したとしても国家が戦争をしたわけだし
上官がお詫びに来たとしても家族としては受け入れられな
いでしょうね。
肉親を失った悲しみは、国王が謝罪に来たとしても癒えるとは
思えないわね。
今後だけれども彼を国の指導者達に意識させるくらいの
立場にしたいのだけれども・・・どうすれば良いかしら
彼は生き残った事が<奇跡の生還者>って共和国民の間で注目
されてるし、軍部にも受けが良い。
この状況を利用できないでしょうか・・・
政治家、軍上層部、民衆の英雄、この中では政治家が理想なの
だけれども彼は政治家としては優しすぎるわね。
優しさを活かすなら宗教家かな・・・軍人が宗教家ってかなり
無理がありそうですわね。
あ、宗教戦士ってどうかしら・・・考えて見ましょう。
この国にあるかな?
翌日この国の宗教団体本部を訪ねた、目的は戦士のような
部署があるか確認する事。
『すいません、ちょっとお伺いしたい事がありまして』
『はい、どのような事でしょうか?』
『実は私の友人で兵士だった者が仲間の弔いを兼ねて入信したい
らしくて話を聞きたく来たしだいです』
『そのような事情であれば、ではこちらへ』
別室で説明を受けたが基本入信は犯罪者(罪を償えば別)以外は
制限は無いらしい。
入信にも色々あるらしく、信仰をしながら普通の生活を送る者
教団に入り教会に住み込み与えられた仕事をするなどだ。
気になってた宗教戦士だが、こことは違う場所にあるらしく
紛争地域にある教会を守護する部署として存在するらしい。
『元兵士で宗教戦士に興味があるのでしたら、面接をこの教会
でも行っているので担当の者を紹介しましょうか?』
『そうですね、ではよろしくお願いします』
その後担当者と会い面接の約束をした。
ネムとナーマは担当者との面接を受けた、ナーマは付き添いと
して同席したが担当者から同席の理由を尋ねられたが、戦場で負傷した
ネムの看護を担当していた縁でその後もネムと行動を共にしていた
旨を話した。
ネムからも同席を希望された事を話し面接は始められた。
面接から数分でネムが奇跡の生還書だと明らかにな担当者の態度が
一変した。
『失礼しました、貴方があの有名な生還者だったのですね
お会いできて光栄です。
では、説明させて頂きます』
結果から言えば実力この場合は戦闘力になるけれど元軍人で
あれば問題は無く、彼の場合は有名人でもあり教会としては歓迎らしい。
教団なのだから信仰なんかも関係あるのかと思うのだけれど
宗教戦士の場合はある程度の信仰心があれば問題は無く実力が
重視されるみたいね。
面接は30分程で終了し必要書類の記入、無事に宗教戦士として
採用がきまった。
まずは安心、彼も戦士して働きながら弔う事ができそうなので
前向きになっているみたいね。
ここからは暫く様子を見ましょう、彼が認められ重要なポスト
に就く事を祈るわ・・・
〜〜~~〜〜~~ガッタス教国にて〜〜~~〜〜~~
ティーナはマバーに仕事の指示を受けに来ていた、でもそれは
口実で先日の襲撃から警備兵よりも優秀な働きをしたメイドの確認と
元兵士である事実を聞き取りする気なのでしょうね・・・
兵士であった事のシナリオは完璧に覚えたわ、実践で実力も示し
枢機卿サイドにも信頼を得たはずだし、メイドとしてはかなり高評価
ではないかしら。
でも考えると不自然な事もあるわ、時期教皇選出に影響力がある
枢機卿邸に簡単に族が侵入できるあたりがね・・・
内部に手引する者がいたのではないかしら?
何か調査する方法はないでしょうか、私が動くには時間的な制約もある
メイドではね・・・
今回の働きで護衛の仕事に回されれば調査を含めて行動しやすくなる
かもね。
佐竹さんに監視用グッツでも手配をお願いしようかしら・・・
~~~エストラエル国で報告を待つ管理者~~~
『佐竹さんティーナから連絡がきてますよ、監視に役立つ物を
送って欲しいそうです』
『アイラ、何が良いだろうか?わざわざ連絡してきたのだから
監視することが難しい状況なんだろうな。
あ、監視対象に空間を繋いで映像と音声を相手に気づかれずに
覗ける装置があったよね?』
『ありましたね、よろしいんじゃないでしょうか』
『決まりだね、至急届けてくれるかい』
妻達にばかり働かせているみたいで少し申し訳ない気が
してきたよ、皆の様子でも見に行こうかね。
今回の戦争は全世界を巻き込む規模になってきている
世界の成り行きはこの星に住まう者に任せると決めたのだから
あまり干渉はしたくない。
長い年月をかけて育ててきた文明なのだから少しでも長く
存在してほしい、ウルゲンからは永遠に存続する事は難しい
と聞かされている、それを見せる事で僕に何かを伝えたかった
のだろうか?
地球は、文明は今も存在しているのだろうか?
この星での出来事を見ているとふと考えてしまった。
人々は争いと平和を繰り返す、自然界での破壊と再生の様に
人も動物も植物も微生物さえも生き残る為に戦っている。
広大な視点で考えれば、この宇宙ですら破壊と再生を繰り返して
いる、違いは始まりと終焉に要する時間だけだ。
おそらくだが、この宇宙では絶対敵な法則なのかもしれない。
この文明を作った者として行末は見守るが未来を選択するのは
星に住まう者達であるべき・・・でもこの考え方に僕は少しだけ
疑問を感じてしまう。
意思を尊重する事は都合の良い偽善的な考えに思えてしまう。
創造主であるなら創造した物を自由にして良いのではないか?
創造された物の自主性などを尊重する事が偽善的なのでは。
異世界小説でよくあるパターンで神(創造主の場合)がそこに
住まう者達に恩恵を与えたり、見守っている様な内容を知って
いる、しかし例えが適切かは分からないが自ら生み出した生物を
水槽で飼っているのと何も変わらないのではと・・・
であれば生み出した生物や物質の扱いは創造主にある。
考えても仕方ないが地球文明と言うか人類は滅んでいるような
気がするよ、僕がウルゲンに転移させられた時代は世界戦争の
危機が囁かれていたしね、今となってはどうでもいいけど。
〜〜〜〜〜〜マロウ枢機卿邸〜〜〜~~~
『ティーナさん、ご実家から荷物が届いてますよ』
『ありがとうございます、マリーナさん』
佐竹さんからだわ、監視用に使える物を頼んだのだけれど
何かしら。
これは離れた場所から映像と音声を確認できる装置だった
わね、今回の任務にはかなり使えそうだわ。
今日は午後に勤務は交代だし枢機卿は午後から外出の予定が
入ってたと思うから、情報収集の開始ね。
『旦那様、行ってらっしゃいませ』
旦那様を送り出したら私は勤務を交代だから部屋で監視
しましょう、位置を特定用の繊維状の発信機は法衣に付けたし
始めましょうか・・・
この場所は町外れの教会かしら、教会関係者の立場なら不自然
ではないでしょうが彼の様な地位ならば少し不自然な感じがしま
すね・・・
それにこの教会には彼以外、人の反応は無いようですが・・・
もう暫く監視を続けましょうか。
以前の調査ではマロウ枢機卿の奥方が教皇と内縁の関係に
あり、それを承知でマロウ枢機卿は彼女を引き受けた事。
しかし彼は教皇と彼女の関係を許す事は出来なかったみたいね
そして暗殺者を使い彼女を襲撃した、引き換えに枢機卿の立場
を得たのだから彼女に拘る必要はあったのかしら?
まさか愛?嫉妬?何故かしら?・・・
でもその襲撃は私が阻止し、その事で私は調査対象に近づく事が
できたのよね。
あれ、誰か来たわね。
『失敗したようだな』
『心配するな次は成功させるさ、しかしあのメイドは厄介だよ
あの動きは素人じゃないな』
『お前もプロなら言い訳はよせ、あの女は元軍人らしい
この契約を破棄するなら、それなりの覚悟はしてもらうぞ』
『あの女が元軍人ならこちらは現役だぜ、次は決める』
『今度は油断するな、一度の襲撃ならば教皇選に関係している
と思われるだろうが、二度の襲撃となれば教皇選以外の疑い
を持つ輩も出るかもしれん。
次は偶然を装う手段で行うのだ、良いな』
『次で決めるさ』
また襲撃を計画しているのね、偶然を装うって・・・
阻止が難しそうだわ。
以前、枢機卿は全てを受け入れた事を後悔しているのでしょうね。
お子様を見て感じたのだけれども、何処となく教皇に似ていると
思うわ、やはり教皇の子供ではないのかしら・・・
枢機卿もその辺は感じているはずよね、今回の襲撃の引き金と
なっていると思うのだけれど・・・
今回の目的には襲撃による子息や妻の死は直接の関係は無いの
だけれど、協力者と考えているマバーの信用を得るには枢機卿
からの信頼が近道でしょうね。
防ぐのが難しいなら襲撃者を拘束する、消す?・・・
消すのはマズいよね、枢機卿が警戒すると思うし。
なら教皇にマロウ枢機卿婦人の暗殺の疑いあり、と情報提供を
したらどうかな?
教皇と婦人には何かしらの関係が有りそうだものね、護衛を
付けるんではないかしら?
よし!これでいきましょう。
*襲撃に関して枢機卿サイドでは外部に対して秘密にされていた
だが多くの警備兵士や使用人に目撃されていた事もあり教皇
サイドに知れる事となったが、ティーナも情報提供者の一人
であった。
『ティーナこれから外出します、護衛に付きなさい』
『アリアン奥様、承知しました』
襲撃の事が公になって教皇側からも護衛の派遣が来る事に
なった、こちらからは私と数人の騎士が護衛にあたる。
この体制なら襲撃は容易ではないでしょう、こうなれば暗殺
に近い方法で行うしかないわよね。
そうなれば仕込み段階で察知、拘束で証拠を握る事ができるわ。
首謀者である枢機卿に対してこちらの要求を通しやすくなると
思うの。
でも私が表に出る事は良くないわね、下手に勘ぐられると
計画そのものに支障が出そう。
誰か代わりの物を仕立てないと・・・
2日後に暗殺未遂があった、予想通り邸内での犯行でしたわね
今回の場合は低外では教皇側の護衛もあり襲撃も逃走も困難が予想
されますし。
取り調べされては自害される可能性があるわよね、その前に接触
して暗殺者から依頼者の情報を聞き出して証拠になる何かを得な
くては・・・
明日この屋敷から移送されるようだから今夜しか機会はないよね〜
深夜、屋敷の地下にある隔離室の1つに襲撃犯は捉えられて
いるのよね行動開始ね。
『警備は二人みたい、屋敷内という事で手薄ね。
眠らせるのは後で面倒になりそうだから、錯覚させるのが良い
でしょうね、この前届けられた物の中に幻覚を見せる事ができる
アイテムがあったはず』
警備員には起きながらにいて夢を見るような幻覚を見せた
視界に変化があっても認識はできない類の幻覚を見せている。
更にこの効果範囲に誰かが侵入してきても同様の幻覚を見る
事になる。
怪しまれないのを考慮すると一時間くらいでしょうね。
囚われている部屋に侵入し聞き取りを始めなきゃ。
『初めてですね、お話を聞きたいのですが、よろしい?』
『誰だ、なぜ此処に入れた?』
『知りたければ、これを見てくださいな』
数種類の光が点滅する装置を彼だけに見せた、これは光を見た
者の視覚から脳に作用して催眠状態にできる便利な物で一緒に送られて
きた物、流石です旦那様!
『質問です、あなたに仕事を依頼したのは誰?』
『・・・答えられない・・・』
あら、強い精神力ね・・・効果最大にしましょうか。
精神に後遺症が出たとしても犯罪者だし・・・いいよね。
『もう一度これを見なさい』
『う・・・・・・』
『あなたに仕事を依頼したのは誰?』
『それは・・・マロウ枢機卿・・・』
『依頼内容の全てを話しなさい』
『アリアンとカイテルの殺害、新教皇選出後にガスパル前教
も殺害する事』
徹底してるわね、マロウ枢機卿は・・・
教皇の頼みは彼の精神を含め誇りや自尊心を蝕んでいたので
しょうね。
教皇の交代に合わせての計画だったのでしょうね、教国に影響
がでないようにとの彼の配慮なのでしょう。
枢機卿の行いは今回の計画とは関係無いですし、前回の襲撃を
阻止したのは偶然でしかないのだし依頼者の特定も枢機卿が
こちらの計画に余計な口出しをさせない為の布石程度ですから。
では、枢機卿に今後何事にも無関心でいる事の約束を取り付け
に行きましょうか・・・
*襲撃者が計画の全てを打ち明けた事、それを証明する証拠を
持っている事、全てが明るみに出る前にティーナは襲撃者を
別の場所に移し証拠を確保する、この事をマロウ枢機卿に伝え
以後ティーナの指示に従う様になった。
〜〜〜〜〜〜教会本部内マロウ枢機卿執務室〜〜〜~~~
あのメイド、何者なのだ・・・
あ奴は暗殺を生業とする手練、依頼人を明かすなら自害を
選ぶはずだ、それにどうやって屋敷から運び出した?
だが証人を確保されては様子をみるしかあるまい。
目的が何かは分からぬ・・・
今の所要求も無い、それに急ぐ必要もなく機会十分にある・・・
メイドは放置しながら素性を探るとしよう。
『おい、誰か。トカラ枢機卿に話があると伝えてくれないか』
『畏まりました、お伝えして参ります』
*数分後
『マロウ枢機卿、何用ですか?』
『次期教皇選はどうなっておるか?』
『枢機卿の票は今の所、五分五分と見るべきでしょうか。
しかしながら選出には影響は無いのですがオブライ枢機卿は
国民からの人気も高く教皇や他の枢機卿も無視はできない状況
となっております、何か気になる事でも?』
『いや・・・良いのだ、呼び出してすまぬ』
『構いません、他に何も無ければ失礼します』
予想はしていたが・・・国民と教会の関係は一定の距離感が必要
なのだ、国民に人気だけの教皇では教会組織を纏め上げるは困難だ。
何も無い時代ならば良かろうが今は国家間の争いが始まっている。
国民受けが良いだけの教皇では才幹は不十分だ、トカラ枢機卿とて
十分とは言えぬが民意に流される事はなく教会組織としての決定を
優先し独断で判断はしない男だ。
こちらの計画に妨害がある状況では一先ず次期教皇選出の方を
優先して行動せねばなるまいて。
そもそも選出前に計画を実行したのは暗殺者の手配が思ったよりも
早く手配できたからで、本来は選出後に実行する予定だったからな。
どちらにしろメイドの出方次第‥‥‥‥‥
梅雨なのに夏のような陽気、電気代も値上がりエアコン
を使うのも支払いを考えると我慢してしまいます。
早くエネルギー事情が安定しますように!