第一章(11)
修正や全体の把握の為に更新が遅くなりました
感覚で書いていたのですが記憶に限界が・・・
♯11
◆新たな勢力と協力者◆
*アステリア王国は農業が主産業の小国であり農産物の主な
輸出先はエストラエル国であった。
本来はラオビサウ共和国からの輸入が主であったが戦争と
農産物の生産減少によりアステリア王国からの輸入量が
増えていた。
王宮ではこの事態に対しカヌート・アステリア国王と側近
である大公ルコント・メディシス、公爵シモン・シャール
が今後の対応について協議をしていた。
『王よ、戦争の影響でエストラエルへの輸出量が増えており
国内の需要に影響が出ております、このままでは民の生活
を圧迫しかねる状況ですが、どう対処いたしましょうか?』
『農産物の輸出についてはシモン公爵が統括しておったな?
正確な情報の報告は可能か?』
『現在の状況ですが、農産物の輸出量は全体の70%に達して
おり、戦争前の40%を大幅に超えておる状況であります。
通常の国内消費量は生産量の30%であり現状これ以上の
輸出は民の生活に影響が出るかと、現に不足を予期して買い
占めを行っている流通業者が幾つか確認しております』
『シモン公爵は買い占めている者を拘束、処罰し市場に戻す
ように、国民生活に支障無き様に。
しかし農産物の輸出は我が国の主産業ゆえ輸出が増える事は
喜ばしい事である、ルコント大公の意見を聞かせよ』
『そうですな、重要な輸出国であるエストラエルには状況を
説明し輸出量の上限を伝えるべきかと。
私が至急エストラエルに赴きこちらの意向を伝えてまいり
ます。
それにこの戦争についてどの様な考え方をしているのか
真意の確認もしてまいります。
何やら隣国のカストル帝国が不穏な動きを察知したゆえ』
*カストル帝国は工業が発展している国家であり特に武器の
輸出を主産業としている。
現皇帝はメッケル・カストル皇帝であり、戦争特需により
帝国の経済は侵攻開始前と比べると大幅に潤っていた。
多くの植民地を抱える帝国は支配に対する反感を抑える事に
なる好景気の状態は生活も豊かになり、安定した植民地の
支配に繋がっていた。
故に皇帝はこの戦争状態を自国から離れた他国領域で今後も
継続する事を望み策謀していた。
皇帝はアステリア王国に送りこんだ諜報員から帝国城で報告
を受けていた。
『皇帝陛下に諜報員からの調査報告をお伝えします。
アステリア王国のエストラエル国に対する農産物輸出量は
限界であり近々アステリア王国の特使がエストラエル国に
派遣される模様です、おそらく輸出制限の話かと。
アステリア王国も我が国同様に戦争特需となっており
この戦争を王宮内では我が帝国と同じく継続を望む声が
多いようです。
戦況についてはガッタス教国の介入により戦線は一進一退
ですが、長引く戦況にエストラエル国及びガッタス教国
内に戦争を疑問視する声が出てきております。
前線では我が帝国が開発した新兵器が使用された模様で
ラオビサウ共和国軍とガッタス教国支援軍に甚大な被害が
でました、その兵器の破壊力を問題視したエストラエル軍
が以降の使用を中止しております。
新兵器については破壊力、攻撃範囲など詳細なデータは
兵器開発部に提出済であります』
『アニル総司令官よ新兵器イクシオンハープの扱いは慎重に
扱う必要があるな、その威力では我が帝国の脅威になろう
今後は他国への輸出は禁止とする。
しかし通常兵器はラオビサウ共和国とエストラエル国の
両国へ輸出は継続する。
我が国が両国への兵器供給している事は極力知られぬよう
兵器の外観、供給ルートの偽装も両国に悟られぬこと。
ラオビサウ共和国の国内の情勢では戦争否定派は居らぬと
思うがエストラエル国とガッタス教国では戦争否定派が
居るようだな、勢力の拡大は我が国にとって好ましくない。
諜報員及び工作員に否定派の行動を妨害の指示を命令する。
アステリア王国については引き続き諜報活動を継続、主に
輸出状況及び内部情報の収集を中心に』
『ナーディル公爵よ、この戦争を、他国の動向そして我が国の
今後について思うところはあるか?』
『陛下のお考えに私めも同意であります、人道的に考えれば
我が国を批判する国家もあるでしょう。
しかしながら帝国の安定した支配には帝国民の安寧が必要
であります、より良き支配が民を幸せに導くと。
ガッタス教国の存在しない神に祈りを捧げ、苦しみをや幸福
の意味を説く教理による精神支配、冷静に思考すれば苦しみ
を克服する為の自己暗示に存在しない神を利用してるにすぎ
ない。
どんな苦労も神に祈り精進すれば死後の楽園が約束される
など・・・・支配階級からすれば民の不満を抑える施策に
他ならない、我々には理解しがたいですな』
『公爵よガッタス教国は元々小国を取り込み国を大きくして
きた経緯があり異なる思想の民を纏める為に宗教という
制度を作ったのだ、そこから生まれた死をも恐れない従順な
聖騎士は脅威であろう。騎士以外の民も教会の指示で進んで
騎士となる、敵対する国にとりこれ程厄介な国は無いのでは
ないか?
おそらくガッタス教国はラオビサウ共和国を取り込もうと
考えておるだろう、そうなれば広大な国土と従順な兵士を
有する軍事国家となり得る。
それは我が国や他国にとっても良くはあるまい、理想的な
戦争の終結は野望を持つ宗教国家、利益を追求し国土の拡大
を目論む国家双方の弱体化と戦争で利益と言う恩恵を受けて
いる小国が国力を得る事で各国家間の力が均衡するのが世界
にとっての理想と考えておるよ。
この戦争は歪み始めた世界に必要なのだろうな・・・』
〜〜〜〜ガッタス教国のカフェにて(続き)〜〜~~
『ところで、ことらの意向に添う人物は見つかったかい?』
『佐竹さん、思っていたより難しいですよ・・・
調査していくと今回の戦争にはラオビサウ、ガッタス
エストラエル以外にも関わっている国家を確認しました。
それにまだ増えていく感じなんですよ・・・
確認なんですけど、各国に数名は必要ですよね?
ここまで規模が広がるとサポートする人材なり組織も
必要な感じですけど・・・』
『そうなるよな・・・矢面に立つ人間は各国家の人間とし
サポートには我が妻をってのはどうだろうか?
もちろん過度な干渉は無しで』
『私もその方が良いと思います、貴方との二人の時間を
もう少し堪能したかったですが・・・今の状況では
仕方ないですね・・・人選は如何いたしましょうか?』
『そうだな・・サリー、ナーマ、ティーナ、ラムを追加
しアイラを含む5人でいいかな、各国の人選はどこまで
進んでるの?』
『ラオビサウ、ガッタス、エストラエルの三カ国の人選は
済んでいます、他に間接的に関わりのあるアステリア王国
とカストル帝国については適任者を探しています。
内部調査からなので、もう少し時間が欲しいですね』
『引き続き人選はアイラに任せるよ、妻たちには僕から連絡
するね』
アステリアとカストルもか、戦火は拡大していくな・・・
この惑星には軍事力を持つ国家は現在15カ国、それ以外に
軍事力を持たない小国家は20カ国、惑星全体で見ると小国
家の総人口の方が3倍程多い。
戦火がこれ以上拡大した場合、兵士の確保に小国が利用される
懸念があるな、そうなれば世界大戦に発展するだろう。
この惑星は地球の20世紀後半程度の文明成熟度かな、魔法
があることで一部の強者による王国制が存在しているが、王の
資質に恵まれているのか国民の幸福度は高い王国が多い。
王国、教国、は生活に魔法を使う人々が多く共和国、帝国、
資本主義国には魔法を使う人が少なく機械科学文明的であり
地球と似た文明形態であり、内政が不安定になりやすい傾向に
あるようだ。
魔法は個人の能力で事象干渉する事であり、生活する事で必要
となる照明や室温管理などに電気などのエネルギーを必要と
しない。
生活する為の基本的な部分を魔法の力で行える事、最低限必要
なのは食材だけであり個人の生活能力は高い。
個人の生活満足度が高ければ他者と争う事も少なく、その事が
内政の安定に寄与しているのだろう。
小国家は王政であり国民は生活魔法程度は使える者が殆どで
あり攻撃魔法にも精通する者も多い、機械兵器と魔法攻撃が入
り乱れての戦争になれば、機械科学を中心にした国家の争いに
無関心であった魔法国家であっても、その破壊力の強大さに
危機感を抱き多くの国家が巻き込まれ世界戦争に発展する事に
なるだろう。
〜〜〜〜ラオビサウ共和国野戦病院(回想)〜〜~~
*殺伐とした野戦病院の一室に新兵器イクシオンハープ
から辛うじて生還したネム隊長が横たわっていた。
看護師として潜入しているナーマがネムの看護をしていた。
ネムはアイラが選んだ一人であり、サポートとしてナーマが
担当する事になった。
『ネムさん、お加減はどうですか?痛い所があれば言って
下さいね』
『ああ、大丈夫さ。こうして生きているのだから・・・
いつもありがとうな、感謝している』
俺はよくあの状況で生き残ったものだ、眼の前が真っ白に
なりその記憶しか覚えていない、次に目覚めた時に目にした
のは多くの同僚の遺体だけだった。
穴の中に横たわっていた俺が生き残った理由は不明だが
次に目覚めた時はこの病院だった、みんな不甲斐ない隊長で
すまない・・・そして俺だけが・・・・
『いいんですよ、看護は私の仕事ですから気にしないで下さい』
彼がアイラから知らされた候補の一人だ、選定理由は戦場
経験者で新兵器の被害者である事、本人は覚えていないようだが
新兵器から部下を庇い絶命寸前の所をアイラに救われた。
あの威力から身一つで何とかなるとは思えないですが、その行為
事態は好感がもてますわね。
では、どうしましょうか?
既に看護師として彼の前に現れているし、いきなり羽でも付けて
”天使です、貴方に天啓を与えます”ってのもね・・・
佐竹さんの考えは、この星の運命は、この星の人々が決める事。
なんですから、彼には自分の考えで行動してもらいませんと。
ラオビサウ共和国の元首は他国侵攻を躊躇い側近の意見で決め
たとか、見方によれば良さそうな元首ですけど、自国民が生活に
困窮している状況を何もせず放置し、自分の迷いを側近の意見で
他国侵攻を決断ですものね・・・協調性と言えば聞こえが良い
でしょうが、危機に直面した国の指導者としては貧弱すぎる気が
いたします。
その結果がガッタス教国に付け入る隙を与えてしまったのです。
彼の弱さの源は優しさ、育てられた環境でしょうね。
国が安定していた時期に生まれ忙しい父に代わり優しいだけの
母親に過保護に育てられてきた(過去記録映像を確認済み)。
元首に就いてからは共和国で勢力を増した側近の意見が国政に
強く反映していた状況が長く続いている。
ネムは軍人だし側近に対して対等に渡り合うには軍部を利用
した方が効果的でしょうね。
それにネムが生き残った事が<奇跡の生還者>って共和国民の
間で注目されてるし、軍部にも受けが良い、彼の育った環境も
裕福とは言えない家庭で過ごし幼少の頃より苦労して現在の職
を得た苦労人って感じが象徴的な存在として共和国民に受けが
よいかもしれませんし適任でしょう。
では軍部から始める事にしましょうか・・・・
〜〜〜〜エストラエル国 首都エリスン〜〜~~
*サリーは首都エスリンにある政治犯収容施設に
来ていた、目的はここに収監されている人物に面会を
する為だった。
名をダーキニー、女性政治活動団体エネアドのメンバー
である。
彼女が収監されたのはエストラエル国商業連合の利益を
目的としてラオビサウ共和国を追い込み侵攻を決定させる
様に画策した事実を突き止め公表しようとしたのだ。
しかし事前にその行動を察知した商業連合によって
政治家襲撃の主犯に仕立てられ収監されていたのである。
勿論これは政治家の偽証であり、その時負った怪我も偽り
であった。
サリーは面会の手続きを終え、面会室でダーキニーを
待っていた。
しばらく待つと彼女は看守と共に面会室に入って来た。
『面会は30分だいいな』
それを言い終えると看守は来た扉から控室に戻って行った
『ダーキニーさん初めてお会いします、担当弁護士のサリー
と申します。
弁護の為、色々とお話を伺わせて下さい』
『サリーさん、よろしくお願いします、それでは何から話せば
良いでしょうか?』
『では、襲撃し、相手に怪我を負わせた事について話したい
事はありますか?』
『それは事実ではありません!あの時私は一人で買い物を
していただけなんです。
眼の前の男性が私の前で倒れて、助けようと手を差し伸べ
たのですが、男性の血だらけの手で握られたのです。
その血を見た回りの人々が騒ぎ出して・・・・
しばらくして警備の方が来て私は連行されたんです。
取り調べでも私の話は聞いてもらえなくて・・・』
『相手が怪我を負ったのは間違いありません、しかし貴方の
話が真実だとするならば社会的立場のある政治家が嘘の
証言をした事になります。
被害者は突然ナイフで刺されたと証言しています。
国家警備局は貴方が政治活動団体に所属している事に関係
していると疑っているようです。
何か心当たりはありますか?』
『・・・・それは・・・・』
『ダーキニーさん、このままでは殺人未遂・傷害罪で有罪
が確定してしまいます、冤罪を照明できる情報があれば
話していただけませんか?』
『私は政治活動団体で活動してますが、それだけで狙われる
事はあるのでしょうか?』
『最近はどんな活動をしていたのでしょうか?』
『この国の商業連合と政治家の関係性に関する情報を入手
しましたので、事実確認と公表準備をしていました』
『それは事件に巻き込まれる理由になるでしょう、その事
に疑問を感じませんでしたか?
貴方が一人でこの件を担当していたのでしょうか?』
彼女は利用されたのでしょうね、戦争に関して国家と
商業連合の内部情報が彼女のような末端の活動家に入手
できたのは不自然すぎる、今は分からないけど別の目的
がありそうね。
無実を証明して、この施設を出るのは難しそうね。
〜〜〜〜ガッタス教国 マロウ枢機卿邸宅〜〜~~
*マロウ枢機卿邸宅の敷地には教会の仕事とは別に
邸宅の管理や枢機卿の私的活動をサポートを行う為の
事務所が置かれている。
ここの責任者はマバー・グアイドである、彼の職務は
メイドや邸宅の維持管理が表向きの仕事と諜報活動を
行う裏の仕事である。
次期教皇候補の選出が動き始めてからは彼の仕事は
忙しくなっている。
ティーナは屋敷にメイドとして潜入していた目的は
ガッタス教国での協力者をマバーにと考えていたか
らだ、彼は教国の中枢人物に近い存在であり用心深く
行動力もありマロウ枢機卿と強い信頼関係を得ている。
教国でのマロウ枢機卿は教皇の補佐的存在で教会内
と教国の運営管理を取り仕切っている立場の人物で
ある。
ティーナは彼を通じてマロウ枢機卿の協力を得ようと
しているのだ。
今、マバーは深夜の酒場で彼の信頼する情報屋から
気になる情報を得ていた。
『頼んでいた情報について何か進展はあったのか?』
『まだ確証には至りませんがマロウ枢機卿の暗殺を
画策している人物がいるらしいです。
その人物に関しては教会関係者って事以外はまだ
分かっておりません』
『そうか・・・引き続き、その情報を探ってくれ』
*そう言いマバーは情報屋に大金貨1枚を渡した
やはりあの噂は本当だったのか・・・教会関係者
ではないかと疑っていたのだが・・・
急ぎ身辺警護の強化と犯人の特定を急ぐ必要があるな
今の教皇は教国民の意見を尊重する考えのお方だ。
そう考えると・・・・・・・・まさかな・・・・
『さてとメイドとして潜入はしたけど・・・
どうしよう・・・・これから。
部屋の掃除だけしててもな〜だめっしょ!
何かアピールした方がいいかな・・・』
*何とか対象者との接触を試みようと思案していた
ティーナであった、窓の外には庭園がありマロウ枢機卿
の妻と子供が庭園に設置されているテーブルで寛いで
いた。
その時、庭園に警備兵の怒号が響き渡る。
『不審者だ!庭園に逃げたぞ、捕らえろ!』
『アリアン母様、向こうが騒がしいようですが・・・
大丈夫でしょうか?』
『カイテル、落ち着きなさい、狼狽えてはなりませんよ』
*カイテルが話終えると同時に花壇にある緑の仕切の陰
から男が飛び出しカイテルを羽交い締めにしナイフを
突きつけた。
『カイテル!何者ですか、馬鹿な事はおやめなさい』
『騒ぐな!こいつの命が大事ならな』
*駆けつけた警備兵がアリアン婦人の盾となり男を取り囲み
持ってる剣を賊に向けた。
『お前の逃げ道は無いぞ、動くな!』
『兵たち、前を開けなさい、私が話します。
何の目的で侵入したのですか?これ以上罪を重ねれば
命の保証はできませんよ。
人質を開放し抵抗せずに捕まりなさい』
『うるせぇ、この状況じゃ どの道ただじゃ済まねえさ
なら、こいつを道連れってのも悪くねえな!』
*男が手に持ったナイフに力を込めたと同時に一つの影が
婦人と警備兵の前を横切り手刀でナイフを叩き落とし
鳩尾に肘打ちを当てた。
『つ!ぐふ・・・』
*突然出てきたメイドの行動によりカイテルは怪我を負う
こともなく救出された、眼の前で起きた事態に婦人も
警備兵達も声も出ず呆然としていたが婦人だけは我に返り
メイドに問うのだった。
『メイドさん、良い働きでした。とてもメイドとは思えぬ
のですが、あなたは何者ですか?答えなさい』
あちゃ〜これは何と応えたら・・・・
たしか教国には教国兵士を訓練する部署があったわよね・・
女性兵士として訓練されてたけど、訓練中の負傷で辞めされ
られたって事に・・・どうかな………
直ぐに佐竹さんに連絡して精神干渉系の魔法で既成事実を
作り上げなくては・・・・
*婦人には訓練を受けた元兵士であった事実と辞めてから
生活の為にメイドになった事、傷はだいぶ癒えて多少の
戦闘行為は可能になっている事を伝えたのだった。
『よし!佐竹さんに連絡よ!』
『ティーナからの通信か、なんだろ?』
*内容に呆れた佐竹だったが、きちっとティーナからの
要望には応え既成事実に加担したのだった。
『ま、可愛いから仕方ないか』
*エストラエル国 首都エリスン治犯収容施設でサリーは
ダーキニーと面会し彼女は何者かに利用され犯罪者に仕立てれれた
事をサリーは確信した、政治絡みであり冤罪の証明は困難な状況
だと判断していた。
困ったわね・・・脱獄させるのは容易ですけれど、それでは今後の
活動に影響してしまったら・・・
政治絡みなら民衆を味方にする方法もありかしら。
政治家と商業連合の企みを証拠を含む情報を一気に広めてしまえば
彼女に対する同情を集める事が出来るかもしれないわね。
民意が彼女の味方になってくれれば釈放に繋げる事が出来るかも。
問題はどこから情報を流すかなんだけど、調査では商業連合内でも
この戦争には反対意見を持つ者が多いみたいなのよね。
とりわけ輸出業者は戦争の恩恵を受ける業者が少なく不満を抱く者が
多いみたいだし。
ちょっと調べてみましょうかね、もう少しだけ彼女には耐えていた
だきましょう。
*サリーは調査で浮上した強く戦争に不満を抱く人物と接触していた。
『ラトクリフさん、初めましてサリーと申します
私はフリーの新聞記者なのですが、此度の戦争につて著名な方々に
意見を聞いてまして、是非ラトクリフさんのご意見もいただきたく
取材に参りました、ご協力をお願いできますでしょうか?』
*ラオビサウ共和国への食料品輸出が彼の経営する商社での売上の
4割を占めていた。
戦争の原因である商業連合の企てを知る人物でもあった。
当初の予測では早期に勝利、終戦そして鉱物資源を商業連合が
優先的に低価格で入手する事になっていた。
サリーは初め彼を協力者にと考えていたが、政府の関係者に
近すぎる事から選択肢から外したのだった。
『何の取材なのですか? 私にも社会的な立場がありますので
貴方のご希望に沿えるお答えになるか約束は出来ませんが
よろしいかな?』
『はい、それで構いません。 それではお伺いします
ラオビサウ共和国との戦争はエストラエル国の予想に反して
長期化していますね、商業連合に属している立場とは思うの
ですが、御立場上いろいろな情報に触れていると考えます
その様な状況から見て、この戦争にどの様に思われるのか
個人的な意見をお聞かせ下さい』
『友好国と考えていたラオビサウ共和国から侵攻を受ました
我が国は防衛の為、交戦状態となったわけです。
国の対応は迅速で正しい判断だったと考えます。
戦争が長引いている原因はラオビサウ共和国にあるのでは
ないでしょうか?
あちらが軍を引けば我が国に侵攻の意思は無く、すぐに
停戦する旨の方針が国から出ているのです』
『それは私も存じ上げております、では質問を変えます。
なぜラオビサウ共和国は侵攻してきたとお考えですか?
個人的なお考えで構いませんのでお聞かせ下さい』
この記者、何者だ。戦争に関するの取材で私の所に来るとは
一般人には戦争に商業連合が関係している事は知られてない。
連合上層部だけが知る事だ、何か確証を掴んでいるのか?
どちらにしろ注意した方が良さそうだ。
『私は政府の関係者ではありませんので、貴方のご期待に沿う
お話はできないと思います、政治家や軍関係者に取材なされた
方がよろしいののでは?』
『そうですね、政治関係者にも取材はする予定でいます。
その他にも市民の方々、産業界の代表者など幅広く取材をと
考えています。
今回の取材の目的は戦争に対する意識の違いが年代、職業で
どの様に異なるのか検証したいのです。
単に反戦や戦争を擁護するものではありませんので、ご安心
ください』
『そうですか・・・では知り合いに政府関係者がおりますが
ご紹介いたしましょうか?』
やはり警戒されてるわね、でも紹介相手はこちらが欲しい
情報は持っていないでしょうね・・・・
でも、紹介してくれるなら受けてもいいかもね。
そろそろ切り上げた方が良さそう。
『ありがとうございます、今日はこのくらいで終わらせて
いただきます。
また取材の機会がありましたら、よろしくお願いします』
『そうですね、またお会いできるのを楽しみにしています』
何となくだけどラトクリフ、ダーキニーにも何となく
違和感を感じるわ・・・怪しいとかそんな感じじゃなくて
なんだろ?
ま、今はそんな事は後回しよね。
~~~~~~~教国マロウ枢機卿の邸宅~~~~~~~~~
*ティーナの真面目さと仕事の能力が認められアリアン婦人と
子供のカイテルの信用を得ていた。
『ティーナ、外出の用意を』
『畏まりました、奥様』
どこに行くのでしょうね、今日は外出の予定は無かったと
思ったけど・・・ちょっと気になるわね。
先日の襲撃について何か情報が出たのでしょうか?
追跡と盗聴をした方がいいかもね。
枢機卿は教皇の側近中の側近、彼を狙うにはリスクが高い
単純に考えれば時期教皇争いと考えられるけど
それでは襲撃に関与した人物の特定が容易で計画性が無さすぎ
よね、それとも推理し易い状況で陥れる?
どちらにしても調査が必要ね。
小型の位置追跡装置と盗聴器は外出用のペンダントに仕込済み
今日は体調不良という事で休ませていただき、追跡と盗聴に
専念しましょう。
*婦人を乗せた車は教会本部に到着し、一時間後に迎えに来る
よう運転手に指示し教会内に入っていった。
ティーナは教会近くまで車を移動しなければならなかった
盗聴は小型であった為、対象者の100m以内に接近しなければ
受信できないからだ。
ここは教会よね・・・でも今日はマロウ枢機卿は居ないと思った
けど、誰に会いに来たんでしょうね?
『ガスパル教皇様、お呼びと聞きましたが・・・』
『賊が侵入したと聞いてな、心配しておった。大事はなかったか?』
『教皇様、私も以前の私ではないのですよ、貴方様の庇護下にあった
頃の事は主人には知られておりません、教会の方々にも同様と
思われます。
庇護下といえど肉体的な関係を持ってしまった事が公になれば
教皇様も夫もスキャンダルでは済まされないでしょう』
『そうだな・・・わかっておるよ。
その事とは関係無いとは思うが、このような事態になった原因は
私にもあるのだろう、せめて謝罪がしたくてな。
其方も気づいておろう、今回の襲撃には時期教皇選出と無関係
ではない。
マロウ枢機卿は儂の側近であり、トカラ、オブライ二人の枢機卿
どちらに付くかで大勢に影響を与えるであろう。
だがな候補が二人であり襲撃は犯人を特定される可能性が高い。
それを考慮して考えると、選出に直接的な理由とは別に理由が
あるのではないかと・・・今の段階では断定はできんが。
今回の襲撃からそなた達を守った使用人がいたと聞いたが
どうなのだ?』
『はい、女性兵士として訓練を受けていた者が使用人におりまして
その者の機転により事なきを得ました。
今回の功績により雑用係から私の側仕えにいたしました』
『その使用人を側仕えにか・・・身元の確認はしたのだろうな?
今はどの様な事にも用心せねばな』
『調べたところ、両親は5年前に他界し兄弟はおりません、親類筋
にも不審な点はありませんでした。
お会いしている時間が長いと、良からぬ事を言う者も居りましょう
今は周囲に気を使う時かと・・・・これ以上のお話が無ければ
屋敷に戻りたく思います』
『そうだな、今後も身の回りに注意せよ』
『はい、失礼いたしました』
これは盗聴してて正解でしたね・・・疑われると思っていたけどね。
それよりも教皇との関係は予想外でしたわ、今回の計画には影響は
無いでしょうが私が疑われる状況となるのは好ましくないわ。
身内も含めた関係者に記憶操作を行っていた事は正解だったみたい。
でもマロウ枢機卿には少し同情しますわ、まさかと思いますが
お子様は教皇の子、なんてないわよね?
あの襲撃者の目的は次期教皇選出だけではないのかも・・・
でも、過去の教皇との性的関係も今回の襲撃に無関係とは言えない
かも、ちょっと調べてみようかしら。
~~~~~~~教国のとある教会~~~~~~~~~
襲撃は失敗に終わったか・・・妻は気づいていないと思ってる
ようだが、私は全てを知っている。
教皇の側近として長きに渡り仕えているのだ、安全上の理由で
過去の調査も行った。
我が妻の情報を知った時は事実を受け入れがたく怒りで体が震えた
ものだ。
妻との出会いは教皇の引き合わせだった、素性を詮索しない条件
だった事は疑問に思ったが、教国利益に関係する事と聞かされ
詮索は出来なかった。
交換条件として枢機卿の地位が約束され、私は受け入れたのだ。
教国の体制を新たにする目的で教皇が退位が決まり、私も側近の
立場から開放される。
それまで心の奥底に押し込めていた様々な感情、猜疑心、怒り、
憎しみ、などが湧き上がってくる。
宗教家としての自分より一人の男としての感情が今の自分を
支配しているようだ。
どの様な結果になろうとも後悔はしない、全てを精算した時は
自身にも罰を与えよう。
~~~〜〜〜〜〜〜アステリア王国、首都アスオン~~~~~~~~~
*ルーベンとの食事を終えラムは首都アスオンの拠点に戻っていた。
農作物管理組合ね~政府の外郭団体だし適任かもしれないですね
私、ナンパされたみたいだし・・・好意を持っているなら上手く
説明できれば、こちらの計画に乗ってくれるかもしれません。
どのように説明しましょうか・・・
観光に来たのは口実でラオビサウ共和国とエストラエル国の戦争
そして周辺国の動向を取材している政治ジャーナリストって設定
なんてどうかしら・・・
場合によっては思わせぶりな態度も必要でしょうね。
では明日またアステリアのカバーショに行きましょうか、ルーベン
に出会えたら行動開始ね。
『ラムさん!またお会いできましたね。
今日は何処を観光する予定なのですか? よろしければ
ご案内しますが』
『ルーベンスさん、お会いできて嬉しいわ、ご相談したい事が
あるのですが聞いて下さいますか?』
『それでは近くに私のよく行くカフェがあるのですが、個室もある
店なのでどうでしょうか?』
相談ってなんだろう?今回で二度目なのに、信頼されたのかな・・・
理由は分からないが嬉しいかな。
彼女は好みのタイプだし頼られる事で親密になれるならこれに
越したことはない。
でも力になれるだろうか・・・
『ラムさん、お話を聞かせてください。貴方の助けになれれば
良いのですが』
『ありがとうございます、実は・・・・・・・・・・・』
私は彼に事情を説明した。
作り話ではあるけど旅行でこの国に来たのではなく、戦争の取材
の為に来たエストラエル国のジャーナリストであること。
エストラエル国では侵攻を受けた原因は政府にあるのではないかと
噂されている事、他国はこの戦争とどの様に関わるのかを取材
している、アステリア王国は農産物をエストラエル国にしているが
戦争後の輸出量が大幅に増加している事について取材に来ていた。
『そうでしたか・・・それなら僕にも協力できるかもしれません、
仕事がら農産物の情報を知り得る立場にありますので』
『ご迷惑なのではありませんか?
貴方にとってメリットは何も無いと思うのですが・・・』
『そんな事はないです、私も戦争に加担する事を良くは思わない
自国の利益だけではないでしょうが、如何なる理由があるに
しても戦争の正当性とは関係ないのでは?
この争いは何故始まったのか、ラオビサウ共和国の侵攻に
エストラエル国の歪んだ思惑が関与していないのか?
そんな噂が我が国の上層部で囁かれています。
貴方に協力することで事の真相に迫れるのであれば・・・
真実を知る者として何か出来るのではと思うのです。
これが理由ですが、変でしょうか?』
『素敵なお考えだと思います。
やはり国を変えて行くのは国民だと思います、私達ジャーナリスト
に出来るのは取材により真実を明らかにし国民に知らせる事。
お互いに共通する目的があれば協力しても良いと思います。
では、何から初めましょうか?』
協力者が見つかったのは良かったわ、この国の上層部にも
知り合いがいるようだし、今回の計画に必要な人材が見つかる
かもしれないわね。
もう少し実行部隊としての人材が欲しいところだけど。
みんなは順調なのかな?そのうち連絡しなきゃね・・・
個別に行動を起こすより、ある程度は連携した方が良いだろうし
でもお互いに反目しないようにしないと逆効果になりかねない。
事前に為人などについて私達で確認する必要があるわね。
12話は各国の戦争拡大を回避する為の協力者が政治に
介入していく過程を書く予定です。
読んでいる方がいたら気長にお願いします。




