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アコースティック
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一方通行だ。ずっと、いつまでも、歩く。途中、横を共に歩くものがあらわれる。そのものは何だかよく分からないことを話しかけてくる。私は適当に相槌を打つか、にっこりと微笑みを返す。そのものは知らぬ間に去る。気づいた時には風が通り過ぎているだけで、あれは思い違いであったのだと気づく。もしくは思い込もうとする。ひとりでまた、歩く。思い出達はひとつの石となって心に蓄えられる。歩くたびに、カランコロンと胸の中で音がするのだ。カランコロン、カランコロン、カランコロン、カランコロン、カランコロン、カランコロン、カランコロン、カランコロン。その音は虚しい。その音は心の空虚を、私たちに教える。いつしか、その音が無いと、寂しいと感じるようになる。カランコロンと聴かせておくれ、私にその空っぽの音を聴かせておくれ。そうでないと私はまた自分の軽さという重みにやっつけられてしまう。だが心配は無駄だったことが分かる。そのときまで、音は心の中で鳴り続けた。
アコースティックギターの音が好きになった。




