染める思いは
パパンに捧げる詩
それは愛でした
あなたが染めた糸で織り上げたマフラーは
とても暖かかったのです
それは優しさでした
あなたは自由研究のためにと
炎天下いつも一緒に野山を歩いてくれました
それは楽しみでした
新しい色を見つけたと
今回はいい出来だったと笑うあなたに
わたしの心も弾むようでした
それは探究心でした
身近な草花でどんな色に染まるのか
それは誰もが見向きもしないような
道ばたの雑草にまで及びました
それは詩想でした
あなたが送る季節の挨拶状には
美しい端切れとその草を読み込んだ発句
みんながあなたからの便りを心待ちにしていました
ああ――きっとそれは魔法だったのでしょう
あなたの手で生み出される
鮮やかな色たちが
けぶるような色たちが
夜のように沈んだ色たちが
わたしを魅了してやまない色たちが
年を経るごとに少しずつ褪せていく
そのことをわたしはとても
わたしはとても寂しく思うのです
あ、お年を召されて引退はしたけどパパンは元気です。ご安心ください。