痛みの度合い
『――今日未明、小学五年生の女の子が横断歩道を渡っている際に信号無視をしてきたトラックに撥ねられ……』
夕食時、居間にはアナウンサーの女の声がテレビから響く。
それは幼い少女の痛ましい死を報せるニュースだ。未来ある幼い少女がトラックに撥ねられ死亡した、と言うもの。
私は夕飯を口に運びながら「かわいそうに」と呟く。両親も同意するように頷いて相槌を打った。
「そうね、最近こんなニュースばっかりだわね」
「まだ小さい子なのに、かわいそうになあ」
私たちはそんな会話をしながら夕飯を終えた。
洗い物をして、お風呂に入って、学校の宿題をして、日付が変わる前に就寝。
その夜、私の家は火事になった。
原因は隣の家の住人による寝タバコ。それが火元となり、私の家は巻き込まれた。
私は助かったけれど、両親は深く寝入っていて逃げられなかった。焼死したのだ。
一週間後、私は両親の死のショックを拭い切れないまま登校した。
「あの子よ、この前の火事の被害者」
「親が二人とも亡くなったってやつ?」
そんな声が嫌でも聞こえてくる。
そして、その言葉は突然聞こえてきた。まるでそう言うのが当たり前のように。
「――かわいそうにね」
その言葉を聞いた途端、私は目の前が真っ赤になった。
お前らに何が分かる、実際に身内を失った訳じゃないお前らに。
当事者にしか、この痛みも悲しみも分からない。自分だけ助かったって、そんなの地獄だ。
叫びたくなって、暴れたくなって、でもやめた。
感情の向かう先が見つからなくて、私は深く項垂れるしか出来なかった。