試案2
深緑の草原を土煙を上げて爆走してくる戦車が一台。その進路上に佇む少女が一人。神は黒のロングで、風に乗ってはためいている。どこからどう見ても、なんの変哲もない少女だが、少女が両手で抱えた鏡だけは、普通を絵に描いたような少女の中で強烈な異彩を放っていた。つくりは、古代の銅鏡と儀礼用の和鏡が融合したような雰囲気で、磨き上げられた鏡面と淵に施された金銀の細工が見る者の心を奪い去るようだった。
そんな少女に向かって、草原を爆走していた戦車が砲身を向ける。どうやら、彼女を砲撃するつもりのようだ。機械仕掛けの射手が少女に狙いを定め、引き金を引こうとしたその刹那。少女は抱えている鏡を、戦車に向ける。
独特の赤っぽい色合いを持つ鏡面に、戦車が映し出される。
そこから先に起きたことは、とても信じがたいことだった。
少女が鏡を戦車に向けた瞬間、緋色の宝石が一つ、少女の足元に転がり落ちてきた。同時に、今まで活発に動き回っていた戦車が、突如としてその動きを止めた。それを見た少女は鏡を降ろすと、足元の宝石を軽く蹴った。
パーンと、ガラスが砕けるような音がして、宝石は粉々になり、世界に散っていった。




