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Open Your Eyes

作者: ハヤニイサン




 彼女は暗闇の中を歩いている。

 当て所なく。…いや、当てはあるのだ。

 ただ暗闇の所為で見えなくなっているだけ。

 だから彼女にしてみれば当て所なく歩く。


 目を瞑っているが如き暗闇の中を。光届かぬ洞窟が如き暗闇の中を。


 ただ只管にさ迷い歩く。偽りの光源を懐に然も大切に抱きながら。






***






 あぁ まただ。


 既読が付いてるのに返事がない。

 これならいっそのことブロックして締め出してくれてた方が、こっちも簡単に縁を切れるのに。


 そもそもリアルならこっちが声を掛けてもリプされるし、はばち(仲間はずれ)にもされない。


 だから厄介。


 縁を切る決定的な口実が存在しない。存在を許されない。

 本当にメンドクサイ。

 なんでこんな変な二重生活染みたことを平気で要求されるのだろうか?


 あぁ イライラする。


 ……違う。もうそんな事は感じない。だってもう諦めてる。リアルを。クソみたいな現実を。

 嘘ばっかり。上辺だけ化粧みたいに塗り固めて良さそうに見せてる。写メを加工するように外聞だけを整えてる。


 そっか。皆そんな変な事ばかり覚えてしまうから、周りにも強要させるのか。




 だから私はそんな事はしない。素の自分でいたい。

 だから私はリアルとは決別する。創作の世界に身を置く。




 web小説巡りをして、今度はweb漫画巡りをする。


 そんなことを平気で出来るのも既読が付いているのに返事がない所為、というのが皮肉な話だ。


 昔の私なら不幸と感じただろうけど、幸せな事にweb小説と出会い大好きな作品と沢山出会えた。

 だから私は今の境遇を嘆いたりしない。


 私に新たなる希望(・・)を齎してくれたのだから。




 学校周りの事をツラツラ思っていたけど、私の家庭環境もそこまで裕福ではない。

 といっても、片親なだけだ。

 所謂シングルマザーというヤツで、私が生まれてスグの頃に自称父親が姿を晦ましてから女手一つで育ててくれた。

 その点は感謝しているけど、最近は私と顔を合わせる度に愚痴を吐かれる。

 以前と違い、母は昼と夜のパートを掛け持ちするようになったから、顔を合わせる機会もそんなにないのだけれど。


 やれ 家計が苦しい。

 やれ 高校に行くならバイトしな。

 やれ アンタはオシャレに金をかけないのはいいけど、バイトでもして母さんを助けておくれ。

 だの。

 終いには


 もうちょっとアンタがしっかりしてくれてれば母さん、違う幸せも追いかけられたのに。


 という始末。

 数少ない母と͡娘とのここ最近の会話がこれ。


 モチロン、私がバイトをして家にお金を入れる選択肢もあるのだろう……

 しかしながら、私は最後の言葉を聞いた瞬間に閃いたのだ。




 私がいなくなってしまえばいいことに。




 そうすれば私も、家での座りの悪さや学校での嘘ばっかりな人間関係なんかにこれ以上悩む必要もなくなるのだから。


 そう思い至ってしまうと、晴々とした気持ちになって来た。

 何時以来だろうか?

 こんなにも清々しい気持ちになったのは。

 清々しい以上にワクワクした気分になる。

 居ても立っても居られない。

 ソワソワする。






「フフフッ」


 ヤバイ。

 一人きりで笑うなんてこれでは気持ち悪い人みたいじゃないか。

 だけど、多生(・・)に対する気持ちの高揚を抑え切れないからしょうがない。


 袖振り合うも多少(・・)の縁


 今回は良縁が少なかったということで、次は良縁が多く結べるように努力しようっと。




 あぁ もうあれやこれやとこれまでの事を思い返すのは止めてしまおう。

 もう ここ(・・)とはオサラバなのだから。

 一応 手紙(・・)にはソレらしいことを書いておいたけど、


 虐められたから というネガティブな事は書かないでおいた。


 まぁ 実際のところ虐めなんて受けてないしね。それに近いことはされてたんだけどさ。




 よぉし。

 何もこれで私の意識が途切れてしまうわけでもないだろうし。

 ただ単純にいまわ(・・・)の際を乗り越えるだけなのだから、躊躇わずに一歩を踏み出そう。


 新たなる希望をこの胸に抱いて




 さぁ 行こう!






***






 彼女は暗闇の中を歩いていた。


 当てが外れたかのように装って。


 だから彼女は間違った場所へと歩みを進めた。


 目を瞑った暗闇の中。光を全身に浴びながらも決して目を開けずに。


 ただ只管にさ迷い歩いた。偽りの光源を懐に然も大切に抱きながら。




 彼女は、決して進む事も後戻りする事も出来ない


 真の暗闇へ墜ちていった。






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