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不気味な四棒

作者: コルフーニャ

歩いた方向に三人の男が立ってがいた。

一人は目が無く、豚を一匹丸ごと飲み込めるくらいの大きさだ。裂けた口の口角を上げ、こちらを見て微笑んでいた。

もう一人は、目が三日月ミカゲツのような形をしており、目は下の方を向いて、口もは三日月のように上を向いている。

口からは怒っているように見えた。

そして最後の男は顔のパーツが何も無いのっぺらぼうだ。

喉が渇いている私からすればそんな事はどうでもよく、とにかく質問する事だけを考えてた。


「喉が渇いて死にそうなんです、水がある方角を教えてくれませんか」


すると、不気味な顔をした三人はそれぞれ、ばらばらに違う方角を指さした。

場所が食い違うという事は、この中の誰かが本当の答えを教えてくれているのではないか。

そう思い、私はのっぺらぼうの男を信用し、指さ方向へ向かって歩いた。


三キロほどの距離を歩いて、ようやく池へとたどり着いた。

やっとの水だと思だ。その水をゆっくりと両手ですくってみた、しかし、手の平に浮かんでいたのは、

とても飲める状態ではない濁んだ水だった。

私は水を全て捨て、急いで三人の男の元へと走った。

私の質問が悪かったのだろうか、今度はさっきとは違った言い方をしてみよう。


「綺麗なお水がある場所を教えてくれませんか」


三人の男は質問を聞くとすぐに、それぞれ違った方角へと人差し指で指さし、

さっき教えてもらった方角とは全く違った方へ向いていた。

戸惑った私は考えたあげく、目が三日月の男を信用し指を指している方向に歩いた。

数分が経った後、綺麗な水が流れている川が見えた。

今度こそ当たりだろう、手で掬い飲もうとした。

すると、ガサガサと横の方から不気味な音が聞こえてくる。その場所を見てみると大量の虫の死骸が川に浮き、

流れてきた。確かに綺麗な水ではあるが、都会育ちの私にとっては虫などという

気色が悪い物が浮いた水なんて飲めるはずが無い。


私は急いで三人の元に戻り、誰でも伝わるようにわかりやすく、さっき質問とは言い方を少し変えてみた。


「もう喉が渇いて本当に死にそうなんです…私みたいな都会育ちでも飲めるくらいの

新鮮で綺麗なお水がある場所を教えてはくれませんか」


すると、三人とも一瞬にして指をさした。

その方角はさっきまで、三人が指した方角とは異なっていた。

この三人は私を騙しているのではないか。

私が遠方まで長時間歩いているのを見て三人とも楽しんでいるのだろう。

私は怒りが頂点まで湧き、三人の顔を見てとてもうんざりした。

しかし、全ての方角を思い出してみると、今まで三人が指を指していない方角が

一つだけあった。それは私の真正面であり、彼ら三人の真反対の方角であった。


「あなた達三人が嘘つきなのはよくわかりました。だからそんな顔になり、こんな

訳の分からない場所で突っ立ているのですね。でも安心してください、今日この

私が嘘しかつけないあなた達を救ってあげます」


三人が立っている場所へと近づき、彼らの人差し指をじっくり見つめた。

私は左から順番に人差し指を右手で握りしめ、彼らが指してる

方向とは真逆に、指を思いっきりで折り曲げた。

彼らの指はゆらゆらと振り子みたく左右に揺れ、一人一人の指の方角を彼らが立っている方向とは

真逆の方向に、指を向けた。



「これであなた達は嘘つきではなくなりました。もしあなた達がこれ以上嘘をつかなければ

時期にあなた達の顔は元に戻るかもしれません」


三人を横ぎり、私はひたすら真っ直ぐへと歩いた。

喉が渇いてもうだめかと思いはしたが、歩いてすぐにとても大きい工場が立っていた。

入ってみたが、案の定ここにはペットボトルに入った二リットルの綺麗な水が、

大量に並んでいた。迷わずにペットボトルを取り、一滴も残らずいっぱいに入ったそれを

ごくりと飲み干した。ペットボトルを捨て、辺りを見回し、

誰もいないのを確認した後、外を出た。


少し変な味の水だったが味は今まで飲んだ水でも最高の味だった。

喉がまた渇かぬよう隣町へ向かい歩いた。すると、一歩目を踏んだ途端、かすかに体の中から沸騰する音が聞こえた。

二歩目を歩いた時には物凄い勢いで体内全体が沸騰するように熱く、体は地面へと勢いよく倒れた。

頭痛やめまいがし、顔も燃え尽きるように熱い。


喉が渇いた時より死にそうなくらいの苦痛だったが、何とか苦しみながらに耐えながら

三時間は経った。三時間が経った頃には

痛みも頭痛も完全に消え去っていた。

何が起こったかは知らないが異常を感じた彼は急いで体を起こす。すると、周りには、さっき水の場所を尋ねた

不気味な三人が、私を取り囲むように立っていた。

何故ここにいるのか聞きたかったが私の口は思い通りに動かない。

のっぺらぼうの男は私の動きに察したのか、ポケットから

手鏡を取り出し、私の顔に近づけてきた。

鏡に写っていたのは、真ん中に目ん玉一つ残った自分の容姿だった。

この三人組と全く変わらない容姿だ。

三人の男はこの工場にたどり着かないように、どこでもいいから別の方角

へと行くよう彼を誘導していたのだろう。

それを彼は…何とも哀れなり。




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