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First Novel  作者: GARAM
32/37

第二十九話

カイルは罠を解除すると急ぎ刹毅を救助した




刹毅は少し驚いた顔をしたがありがとう…と言うとすぐに呪文を唱え始めた




素直な真っ直ぐな子だ




前にも言ったが助かる!なんて見込みはほとんどない…




刹毅もわかっている、なのに頑張っている




俺は頑張る奴が好きだ




天才よりも秀才の方が好きだ




そして秀才よりも秀才を目指し頑張る奴が一番好きだ




こんな性格だからダメ元でも必死に白夜を助けようとする刹毅を助ける




サヤが俺を助けてくれたように…




小一時間程たっただろうか…




少しずつ呪文の効果が出始めたのか、それとも鬼として安定し始めてしまったのか…




苦しそうなうめき声を出さなくなった




その途端攻撃も止まり白夜はただ立ち尽くした




希望の光か…はたまた絶望の始まりか…この沈黙の終わりはそのどちらかだろう…




カイル達は警戒しながらもただその終わりを待った




今まで攻撃をかわすことに集中していて聴こえていなかったが刹毅の呪文はどうやら唄のようだ




カイルはその唄に聞き覚えがあった




いつどこで?、と言うのはわからない




だが確かに聞き覚えのある唄だった




そして何故か涙が溢れて来た




何故ないているのか…別になにも悲しい訳ではないはずなのに…




もしかしたら俺の喪われた記憶の中に答えがあるのか?…




カイルは五歳までの記憶がない




まぁ五歳と言うのも見た目で、なのだが




カイルが見つかったのは帝都近くの山の中だった




助けたのは勿論、父まぁ正しくは義父であるカルロスだ




カイルはカルロスに沢山の愛情を貰った




…だから過去を知ろう。なんて思った事は一度もなかった




だが今は無性に自らの過去が気になった




余談だがカルロスに実子はいない




カルロスの妻は子供を授かり妊娠八ヶ月目でカルロスを残し逝ってしまった…




カルロスはこれからの生涯愛情の全てを妻と子に与える。と言った言葉を守っていたらしい




ふと、唄が止まった…




何故唄をやめたんだ?




カイルはそう思い刹毅の方を見た




刹毅は唄を止めただ白夜を観ているようだ…



不思議に思い白夜を見ると白夜の顔も腕も脚も元に戻っていた




白夜は何かが起きた事は分かっているようで自分をキョロキョロと見回していた




やっぱダメ元でもやってみるもんだな…信じてやってみるもんなんだな…路は決してなくなったりはしないんだな…




カイルは白夜を見てそう思っていた




口元には自然と笑みがこぼれ、顔も優しくなっていた




義兄さん!!そう叫びながら刹毅は白夜の元へと駆けし抱き付いた




当の白夜は未だに状況が掴めず少し困った顔をした




家族の絆は凄いもんだ…決して切れない、、決して揺らぐ事すらない…




カイルからすればどう頑張っても治るはずがなかった




しかし、絆は揺らぐ事なく刹毅と白夜を繋ぎ止め刹毅の思い、言葉は絆を伝わり鬼に侵食されていた白夜に届き勇気づけた




そして白夜はそれに答え鬼を打ち負かした




それはなんて美しく素晴らしい事なのだろう…




カイル達は二人をただ暖かい目で、暖かい顔で見守っていた

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