第二十四話
カイルはジンが目覚めた嬉しさに駆られ休憩所に向かって全力で走り出した
ジン…レナも喜んでるだろうな…今日はみんなで宴だ!
と言うイイ考えの中…嫌な予感もチラついていた…
もし…もし自分の推測が間違っていたら?…
呪歌によって命を繋ぎ止めていたら…呪符で心臓の筋肉を強化していたお陰で生きていたとしたら…実は本能的なモノで呪符などに対抗していたとしたら…
だぁぁ!考えててもしゃぁねぇ!とにかくダッシュだ!
カイルは更に速度を上げ休憩所に着くや否や勢いを殺さず扉を思いっ切り開けた
が何かに当たり、中から鈍い音と共に『ぅごぁ!』と言う声が聞こえた
見るとカヤルが顔面を抑えながら暴れ狂っている
ゼノは机をバンバン叩きながらゲラゲラ笑っている
カイルは短く『わりぃ』と言うとカーテンを開けた
がしかしそこにはレナもジンも居なかった
カイルが呆気にとられているとまだ痛むのかカヤルが顔を抑えながら『ジンの調子が優れないからpriertの所に連れていったんです』と言ったカイルはそれを聞くや否やまたもや駆け出した
調子……か……
なんで悪い嫌な考えてしか浮かんで来ねぇんだよ!…
呪符で肉体を無理矢理強化して、呪歌で操作されてたんだ…調子悪くても仕方ないだろうが…
なんで最悪なパターンばっか頭ん中グルグル回りやがる!!
priertの詰め所に着いたカイルはレナとジンの居場所を聞き部屋に案内された
頼むから…頼むから最悪のパターンにならないでくれよ…
これ以上傷付いて堕ちてくレナを見たくねぇんだ…
みんなで笑っていたいんだ…
レナ達の居る部屋に着いたらしく隊員が立ち止まり険しい表情で『ここです…』と言った
ただ祈りながら扉を開いた…
部屋の中にはpriertの隊員は居なくジンとジンに後ろから抱き付いているレナだけだった
えっマズイマズイマズイ!超ド級に邪魔じゃん俺!
レナ達はどうやら気付いてないようなのでそろぉっと入ったカイルはそのままそろぉっと外に出ようとした
レナ『隊長………』
がしかしレナに呼び止められた
うっわぁ…バレてるよ…俺このままじゃお楽しみ邪魔する最低人間じゃないか!
気まずさを感じるカイルをよそにレナは相変わらずジンに抱きつきっぱなしだ
ん?…まてよ…なんでジンは話さない?…今思えば呼び止めたレナの声は震えてた…
カイルはここまで来てようやく事の重大さに気付いた
余計に声をかけにくい感じだが聞かない訳にはいかない…
カイルは勇気を振り絞りレナに話し掛けようとした
がレナは肩を震わせていた…
泣いてるよぉ…どうするよ?俺…
カイルが途方に暮れていると何かの音が耳に入ってきた
なんだ?…なんか息を強く短く何度も吸ったり吐いたりするような…
えぇい!んな事言ってる場合じゃねぇ!もうヤダよぉ…鬱になるかも…
また途方に暮れ、頭を抱え俯くカイルに今度は笑い声が聞こえてきた
ジン『すいませんね隊長、ドッキリです』
レナ『そんなのダメだよって言ったんだけどしんみりな雰囲気嫌だったから。騙してごめんなさいね隊長』
呆気にとられ硬直するカイルを見て再び二人が笑い出す
って事はここまで案内したpriertの隊員もグルか!
目覚めたジンの様子を知っていたシンやカヤルやゼノすらもグルだと言うのか!
カイルの怒りのオーラを感じ取った二人は急いでカイルをなだめた
カイルもジンの元気な表情を見て安心し、怒りは容易く治まった
少しするとシン達も来て雑談会が始まった
どうやらジンの筋肉は傷付きすぎて私生活には支障ないらしいがassassinとして…いや…軍人としては生きられないらしいが訓練校の先生にしてもらえるとの事だ
そう言えばpriertの詰め所初めて来たなぁ…カイルは雑談中にふと思った
おかしな事に帝宮は石製なのにpriertの詰め所だけは床から天井まで全て木製だった
後から聞いた話によると初代五大神官が木製の建物が好きらしく石の上に木を貼り付け木製もどきにしたとか…ついでに今は九代目だ
貼り付けられて永いはずだが手入れをきちんとしているため清潔感がある
微かに木の香りが漂いとても落ち着く
でも戦争中なんだよなぁ…
カイルは想いふけていた
シン『隊長?隊長!?』
あれ?なんの話してたっけなぁ…聞いてなかった…
シンはそれを察したのか『も〜隊長は貧乳派か微乳派か巨乳派か爆乳派どっちなんですか?って』と再度質問してくれた
はい??…
いや…いやいやいやいや
絶対コイツらといるから戦争中って事忘れるんだよなぁ
まっ楽しいからいいか!
カイル『勿論爆乳派だぁ!!!』
シン『俺はまな板派だぁぁぁ!!!!』
こうして六人はこの後一,二時間程度雑談を楽しみそれぞれ家に帰ったのだった




