第八話
レナを中心に先頭がカイル、右翼がカヤル、左翼にシンを置き国境を目指す…
幸い国境まで敵に遭う事なく来れた…
このままバカ正直に国境の砦を越えるのは愚か者がすることだ
カイル達は漆黒の闇の中…緊急時以外どの様な場合も使う事を許されていない秘密の抜け穴を使いシルディ帝国に向かった
この穴の存在を知っているのはassassinのメンバーとknightの各隊隊長とpriestの五大神官のみである
崩壊しない程度に補強された灯りのない漆黒の洞穴の内…
カイル【ここで敵に襲われれば疑わしき人物は…】
カイル達を見送ったナイル達だ…
これまでの事を考え、最悪のシナリオを作るとスパイは一人ではなくナイルの一番隊全員がスパイだ
基本的にassassinの任務内容は国王とメンバーしか知らない
ただナイル達の一番隊はカイル達を見送っている…
伝書鳩などはknightの各隊の隊長とpriestの五大神官とassassinのカイルしか持つことを許されていないからナイルは恐らくスパイだ
細心の注意を払いながら進み
遂に出口近くまで来た
ついでに洞窟の出入り口の前にはシルディ帝国側には大木がありイニア連合国には巨石がありカモフラージュされている
カイル【俺の最悪のシナリオ通りなら出た所にナイルの軍がいる…】
バカ正直に出ていく訳には行かない…
カイル【奥の手を出さなくてよかったよ】
カイルが皆に待てのサインを出す
カイルが手を合わせ地面に両手を置くと自分達にそっくりなモノが出てきた
レナ『今の…テクニックですよね?』
カイル『今まで内緒にしてたが…多少使えるんだ。ただ治癒テクニックのスキルはもってないんだ…悪いな…』
レナは首を横に振り笑顔を見せた
カイル【この表情に惚れたんだろ?…シンよ…護りたかったんだろ?…この笑顔を…願わくばずっと隣で見ていたかったんだろ?…この華を…お前も…色々あったもんな…レナは覚えてなかったけどな…】
いくぞ…カイルは呟き分身と5m程離れ移動を開始した
分身が洞窟を出たと同時に上から何人もの兵が切りかかった…
しかし分身なので刃は宙で弧を描き地面をえぐった
驚いたのもつかの間…
カイルにより横に一刀両断された
ナイル『流石はカイル…assassin…いや…シルディ帝国一の腕利き…容易く殺るのは無理か…』
カイルはやはり…と小さく呟いた
ナイルは構わず続けた
『しかし…assassinも堕ちたものだ…お主がassassinに入隊したばかりの頃、assassinの心は死人…とまで言われていたのに…今はどうだ?くだらぬ感情を剥き出しにして無意味、無価値な死を遂げる愚か者…護られる暗殺者に…愚かにも手のひらで動く隊長…クックックッ笑い話としか思えぬわ』
カイルは下を向き黙って聞いている
シンは慕っているカイルを、そして何より義を…仁を突き通し殉職したジンを馬鹿にされ激怒している
冷静なカヤルも苛立ちが顔に出ている…
レナは…自分の無力さに…ジンへの謝罪、罪悪感に耐えきれずに涙を流している…
ナイル『愚か者だな…感情を殺す事すら出来ぬとは…ジンが何故死んだか…それは…レナへの想いをつ』
何が起きたのか?
ナイルは宙を舞い…いや…一直線に宙を飛んだ、の方が正しい表現か…
スパイの者どもは…いや…シン達ですら何が起こったのか理解し難かった
カイルが殴り飛ばした?…いや…カイルは動いていないはず…
なら何故ナイルは宙を?…
ナイルは物凄い勢いで飛び、木に何回も当たるが勢いは留まらず折り倒しながら進み、何十本もの木を折り倒しやっと停止した
ナイルの鎧にはくっきり拳の後が残っていた…
殴り飛ばされた、と言うこと
一体誰に?…
カイル『ナイル…俺のことなら構わない…が…隊員の悪口は許さねぇ!!…シンが愚か者だぁ!?…愚か者は…テメェだろうが!!…クソ野郎!!!!…』
シン【こんなに…取り乱すなんて…】
どれくらい時間が経った?…
どう考えても一瞬だったはず…
50人はいただろう刺客は見るも無残なモノに変わり果てていた…
カイルはナイルの元へと歩いて行く…
恐怖に駆られナイルは逃亡を試みるが全身の骨が逝ってしまっている為身動き出来ない
ナイル『おおお落ち着け!こうしよう!お前達は全員死んだことにする!お前達は狙われなくなるだろう?どうだ!?だから命だけは…頼むよ…妻だって…子供だって居るんだ…』
カイル『感情を殺すんじゃなかったのかな?クックックッ心配するな…簡単には殺さないからさ。産まれたこと後悔させてやるよ…歴史上最も残酷な死刑でな…』
そういうとカイルはナイルの鎧の端を掴み歩き始めた…
シン達も急いで後を追った




