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Delusion WORLD  作者: いがろ
Episode 2:Hierarchy
10/29

私は、気持ち悪いから。

地球侵略っ!アルネーニャさん【ちきゅうしんりゃくっ!あるねーにゃさん】

土曜深夜1:30にやっているアニメ。

ジャンルは地球侵略系どたばたラブコメディー。

ごく平凡な高校生ハルオと美少女宇宙人アルネの

恋愛模様を描く。


リア充【りあじゅう】

リアル(現実生活)が充実している人のこと。

恋人がいる人に対して使われやすい。





――十月十八日 AM 2:30


部屋の明かりは消え、豆球の仄かなオレンジ色と、デジタル時計の表示。

そして、PCのモニターの光。その程度の光に照らされながら、僕はPCに向かっていた。


「んん・・・っ」

気の抜けた声を上げて、ぐい、と背伸びをする。

先ほどからずっと同じ姿勢でPCを見ていた為か、身体中にだるさを感じて、椅子にもたれた。

キィイと、椅子が軋む音が聞こえる。


PCのモニターに映っているのは、春園が映るニカ生と、νちゃんねる。

別れ際に春園に「見ろ」と言われ、特に興味もなかったのだが、結局放送開始から

今の今まで見てしまっていた。

日が変わる前の、23時辺りから始まった春園のニカ生も、もうそろそろ終盤に差し掛かっているように見える。身近な人物がモニター側に映るというのは、どこか慣れない。そんな事を思っているとも知らずに、モニターの向こう側にいる春園は、赤いメガネにピンク色の衣装を身に纏い、いつものマイペースさで雑談を繰り広げていた。

「地球侵略っ!アルネーニャさん」というアニメの、主人公のコスチューム。

ざっくりと開いた背中や、ちらりと覗くへそ。その露出度の高い衣装から、

春園のスタイルの良さが強調されていて、モニター越しであるというのに時折視線の行き場に困る。


「はいはーい!ふあたんの相談コーナーですニャー」

まるで、どこかのラジオ番組かのようなノリの良さで企画を開始する春園。

その掛け声を合図とするかのように、画面には「ふあたん!ふあたん!」「待ってました!」「うおおおおおお」と言ったコメントが流れ始めた。

「えーと、この企画はみなさんのお悩みをズバっと解決しちゃうんだにゃ―。

さささ、リスナーさんはどんどんお悩みを言っちゃうニャー」

春園が画面に向かってにっこりと微笑み手を振るや否や、多くの長文が画面に所狭しと、流れ始めた。

「彼女と上手くいかない」だの「試験で悪い点数を取った」だのと、その内容は様々だ。


「うーん、じゃあ・・・この人にしちゃうかニャ~。えっと、『仲のいい異性に告白されました。OKをする勇気がありません。どうすればいいですか』かニャ。・・・ふむふむ。んー。とりあえずOK出しちゃえニャ。若い時は経験だニャ。というか、ここでそんな事書いてる時点でお主も、その相手が気になってるんだと思うニャー。リア充は末永く爆発するニャ。」

割と丁寧な回答を投げ返している。

恋愛相談なども多く、また割と的確と思えるような回答をするということでどうやら女性からの人気も高いらしい。そんな春園の生放送をじっと眺めていると、ふと心のどこかで悪戯心が芽生えた。

どうせ読まれないだろうと、冗談半分の気持ちで文字を打ち始めた。

そして、エンターキーを押すのと同時に、画面内に自分のコメントが流れ始めた。


「ふむふむ。えーっと・・・次は・・・『知り合いにテンションの高い人がいて困っています、どう対処すればいいですか』かにゃー。」

思わず声を上げた。

冗談半分で書いた内容を、まさか本当に読まれるなどとは思っても見なかった。


「んー、こんな皮肉屋な友達が、ふあにもいるニャー。」

まるでコメントを書き込んだ相手が僕であることを見透かしたような発言に

一瞬、心拍数が跳ね上がる。本当に、誰か分かってやっているんじゃないだろうか・・・?

冷や汗が額から流れたのが理解できた。


「・・・女の子には優しくすべきだニャー。そういう事言っちゃダメニャー。」

そう言いながら、春園はこちらに向かってウィンクした。

僕であることはバレていなかったのを知り、安堵の溜息をついた。

もしこんな所でコメント主が僕であることがバレていたなら、春園のことだ。

何をしでかすのか分かったものではない。

流石に、今の出来事で懲りた僕は、画面の向こうでコロコロと表情を変える春園を眺めるだけにした。

ぼーっと眺めていた時だった。PCから電子音が、小さく鳴った。

この音は、ツイッパーにメッセージが届いたことを知らせる通知音だ。

視線をニカ生からツイッパーに移す。

「新着メッセージ 1件」の表示へとマウスカーソルを持っていき、クリックした。


「mikomikoLove

@blue_sky0081 おい、ニュース見たかよ!すごいことになってんぞ!」


ニュース?

今の今まで、テレビはおろか部屋の電気すら必要最低限の環境の中で、PCに向かっていた僕が

そんなものを見ているわけもない。その文面から、どうやら何か面白いことでも起こっているらしい。

若干の期待を覚えつつ、リモコンの電源ボタンに手を伸ばした。

しばらくの間、真っ暗だったテレビ画面に映像が映し出される。

最初に目に入ったのは殆ど原型を留めていない黒いワゴン車と、「男性二人、ワゴン内で謎の変死か」というテロップだった。


「何だこれ・・・」

最初こそはテレビのニュースにかじりついていたものの、5分もすれば同じ情報がただただ繰り返されるようになっていた。情報不足だ。

痺れを切らした僕は、PCモニターに戻り、にゅーちゃんねる内でこの事件の話題関連を検索することにした。

やはり、にゅちゃん内でも話題になっているらしく、それらしいスレッドがいくつか立ち並んでいる。

僕はその一つをクリックした。

思った通り、様々な情報が行き交っていた。どれもこれも信頼するには頼りない憶測ばかりだが、

それでも、同じ事ばかり繰り返し続けるニュース番組を見るよりかは、幾らかは見応えがあった。



1 名前:名無しさん@ニュースの時間です 2016/10/18(木) 02:50:12

★交通事故か?それとも猟奇的殺人か?ボロボロになった車の中に男性死体二人

十八日深夜、鉄橋下付近にてボロボロになったワゴン車が発見された。

車内にはフロントガラスに顔面から突っ込んで大量出血で死亡していた。

周囲には肉片も散らばっていたという。

後部座席の鞄には男性が体中の骨を折られており、無理やりつめ込まれて死亡していたという。

死因は何度にもよる殴打と見ている。


35 名前:名無しさん@ニュースの時間です 2016/10/18(木) 02:53:12

これって女をレイプしまくってる奴らじゃないのか?

ゴミが死んでよかったなwww


36 名前:名無しさん@ニュースの時間です 2016/10/18(木) 02:53:52

こうして社会の屑が一人減りましたとさ

めでたしめでたし


37 名前:名無しさん@ニュースの時間です 2016/10/18(木) 02:54:17

え、顔?頭からじゃなくて顔から?

どうやったらそうなるんだ?


38 名前:名無しさん@ニュースの時間です 2016/10/18(木) 02:54:22

ニュースでさ、この1時間前に女の子とワゴンに入るの見たって証言してる

サラリーマンいなかったか?

なんかそのシーン削除されてね?どこにもないんやが


39 名前:名無しさん@ニュースの時間です 2016/10/18(木) 02:54:23

(地獄に)落ちろ!・・・落ちたな(確信


・・・

相変わらず、好き放題書かれている。

「ざまあみろ」という内容の書き込みや、憶測。果てはニュース自体に関係無いようなムダな雑談まで。

多種多様な内容が書き込まれている。

椅子に背を任せただらしない姿勢のままそれらを眺める。

コロコロと、手元にあるマウスのホイール部分をゆっくりと転がして、下へ下へと読み進めた。

そして、眺めている時に、ふと”彼”は現れた。



120 名前:元警察です◆Ch1sG2rn33 2016/10/18(木) 02:56:43

始まりましたね。


・・・

紛れも無く、昼間にここに「元警察ですが」というスレッドを立てたのと同じ名前のユーザーだった。

ハッと息を呑む。僕は画面に釘付けになった。


134 名前:名無しさん@ニュースの時間です 2016/10/18(木) 02:57:21

誰?


135 名前:元警察です◆Ch1sG2rn33 2016/10/18(木) 02:58:13

これはほんの序章に過ぎません。

悪夢のシナリオは、幕を開けたばかりです。


136 名前:名無しさん@ニュースの時間です 2016/10/18(木) 02:58:31

>>135

中二病キメェwww


137 名前:名無しさん@ニュースの時間です 2016/10/18(木) 02:58:51

おい!よってたかって>>135ちゃんをいじめるなよ!可哀想だろ!!


・・・

「元警察ですが」の書き込みはマトモに相手されていなかった。

基本匿名で書き込む「にゅちゃん」では、こういった名前をつけて書き込みをすると

批判やバカにする恰好の獲物となる。

だが、「元警察ですが」は、そんな書き込みを気にせぬ調子で続けた。


155 名前:元警察です◆Ch1sG2rn33 2016/10/18(木) 03:00:13

ここ日本の東京都内で、事件は再び起こるでしょう。

あなた達の恐怖を煽る最悪の事件。

ただし、恐怖してはいけない。屈してはいけない。

それが私達にできる防衛手段です。


事件は、再び起こります。今度は、もっと多くの血が流れる。

あなた達の脳を揺るがす、最悪のシナリオが。

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